晩秋から真冬の車中泊は、「暖房」よりも「防寒」が重要!
スキーやスノーボード、あるいは登山や釣りなどを楽しんでいる人からすれば、冬の車中泊は夏よりはるかにやりやすい。暖かく眠る方策はいくつもある。秘訣は、寒さ対策の考え方を変えること。基本ポイントは、「暖房」ではなく「防寒」だ。
立ちはだかる「3つの壁」に対処する
「3つの壁」とは、「難敵」すなわち、「冷え込み」「凍結」「積雪」を意味するが、残念ながら、この3大難敵を一気に解決できる名案はない。
ゆえに、それぞれに対して個別の方法で対処していくわけだが、一番の難敵は安眠を妨げる「冷え込み」だ。
「冷え込み」は、雪国に限らず、日が落ちればどこでもすぐに襲ってくる。また正しい知識がなければ、いくら服を着込んだところで、寒さから解放されることはないだろう。
まずはその対策を万全にし、それから「凍結」「積雪」へと話のコマを進めていこう。ただし、その前に理解しておくべきことがある。
冬の車中泊の「3つの難敵」
①「冷え込み」対策→車と体を防寒する
②「凍結」対策→転倒によるケガを回避する
③「積雪」対策→夜間の雪中運転を回避する
キャンピングカーと一般乗用車(未改造車)では、対策方法が異なる
車中泊の冷え込み対策は、装備によって大きく異なる。わかりやすくいえば、FFヒーターを搭載するキャンピングカーは「暖房」、ミニバンなどの未改造車は「防寒」が基本になる。
FFヒーターとは
燃焼式の暖房器具だが、燃焼部が室内側から独立しており、排気ガスが車内に入る心配がない。車中泊でも安全といわれているのはそのためだ。燃料は車から流用するが、消費はひと晩で1ℓ程度とかなりの省エネ。ただしファンを駆動するため、サブバッテリーシステムが必要だ。
ちなみに未改造の一般乗用車が安易に「暖房」を求めても、外部電源がないかぎり、あまりよい結果は期待できない。初期投資が違う以上、当然だ。
だが、悲観する必要はまったくない。登山家はテントで雪山に向かい、防寒だけで氷点下の夜を切り抜けている。そんな彼らを支えているのは、確かなアウトドアの知識と、信頼できるメーカーのキャンピングギアだ。それを車で真似ればいい。
注意! 「積雪時のアイドリング」は、自殺行為
FFヒーターやサブバッテリーシステムがない車両の場合、厳冬期はどうしても車のエアコンを使いたくなると思うが、それはエコの観点だけでなく、自らの命を守る意味からも、控えるべき行為だ。
もし就寝中に雪が積もり、マフラーが埋もれてしまうと、排気ガスが車内に逆流して、一酸化炭素中毒に陥るおそれがある。
また吹雪の場合、全体が埋まらなくても車の背後から激しく吹きつけられれば、同様の危険を招くことがある。特に乾いた雪は、降りだすとみるみるうちに積もりはじめる。ここまでくるとかなり危険だ。
晩秋~冬の車中泊「3つの難敵」に有効なテクニック&グッズ
では具体的にどのような対策を行えばいいか紹介しよう。
冷え込み対策
【車の冷え込み対策】冷気は「車の窓」から侵入してくる
窓から伝わる冷気の冷たさは、夜、暗くなってからエンジンを切り、運転席に座ってみれば身に染みてわかる。ということは、すべての窓を内張りすれば、その冷気を遮断できるわけだ。
内張りに使う素材で身近なものは、割れ物の運搬などに利用されるエアパッキン、俗にいう「プチプチ」だ。中に封じ込まれた空気が、ここでは高い断熱効果を発揮してくれる。
またキャンプに使う「銀マット」を加工して使う人も多い。こちらのほうが窓に装着しやすく、見映えもいいという理由からだが、内張りには車内のプライベートな空間を外から隠すという効果もあり、「銀マット」はその点でも理にかなっているといえるだろう。
長く使うなら、既成品のマルチシェードが◎。一番ポピュラーで装着が簡単な内張りは、4種類の素材を組み合わせながら独自のキルティング加工を施している、アイズの「マルチシェード」だろう。
多少値は張るものの、DIYをする手間を考えれば、それに見合う価値は十分にある。国産車のほとんどの車両サイズに合わせてラインアップされているのもありがたい。
▼関連記事をチェック!▼
【体の冷え込み対策】速乾&起毛素材のウエアを「重ね着」する
ファッション業界では「重ね着」のことをレイヤーと呼ぶが、そのルーツが「オシャレな着こなし術」ではなく、「防寒」のための機能的な服装にあることをご存じだろうか。
アウトドアの世界では、昔からウールのような起毛素材と、ダウンが重宝されてきた。理由は、それらが空気を含みやすい素材であり、重ね着することによって、体温で温められた暖かい空気の層を身にまとうことができるからだ。
また最新の化繊を用いた速乾性のインナーは、湿気を放出することで体温が下がることを防いでくれる。このふたつの特性を理解して車中泊に臨めば、暖房がなくても、冷え込みに負けることは少ない。
▼関連記事をチェック!▼
凍結対策
滑って転ばないためのふたつの方策
車の凍結対策は、主に走行時の話になるので割愛する。車中泊で怖いのは、凍結して滑りやすくなった駐車場で、人が転んでケガをすること。高齢になると、骨折するおそれがある。
とりわけ危険なのは、夜間トイレに行こうとして、車から降りる瞬間だ。寝起きなので警戒心も弱く、路面の凍結に気づいていないことが多い。それを回避するには、まず坂の「しもて」のような、水が集まりやすく凍結しやすい場所を避けて、車を駐車することだ。
サービスエリアや道の駅では、トイレに近い坂の「かみて」が理想の位置。そこが空いていなければ、雪がない屋根のある通路に近い場所を探そう。
また念のため、簡易の滑り止めを持参しておけば、不意の降雪時にも重宝する。多少装着が面倒でも、滑って痛い思いをするよりはずっとマシだ。雪の降らない地域でも、インターネット通販を利用すれば入手できる。
上の写真はスニーカーやブーツに装着できる簡易の滑り止め。様々なタイプがあり、雪国では通勤・通学時によく使用されている。
積雪対策
動けるうちに移動するか、翌日の除雪を待つ
冬の旅にスタッドレスタイヤが欠かせないのは当然だが、大雪時に絶対回避すべきは、「夜間の雪中運転」であることはまちがいない。
夜間の雪中運転でスリップなどのトラブルが発生すると、結果的に車を放棄せざるをえなくなる。ならば、安全な場所を確保して、ひと晩動かさずにいるほうがずっといい。その場合、明るい時間帯の過ごし方が重要になる。
悪天候が予測される日は、早いうちに旅を中断し、まずは設備のそろった道の駅やサービスエリアに入って、気象と道路情報を整理し、「その夜をどこでどう越すかの判断」を下すといい。
もちろん、天候がますます悪くなりそうな場合は、以降の移動をあきらめ、その日はそこで車中泊をするというのも選択肢になる。
なお、もし雪道の運転や車中泊に自信がもてないときは、迷わず宿泊施設の利用に切り替えよう。大事なのは「武勇伝」でなく安全だ。危険が予測されるときほど決断が求められる。
また、都会人は降雪地帯に行くからスタッドレスタイヤがいると思いがちだが、現代はどこにいても雪のほうからやってくる時代だ。しかも目的地ではない場所で大雪に遭遇することもある。この季節はくれぐれも準備万端を心がけたい。
▼関連記事をチェック!▼
出典:全国車中泊コースガイド秋-冬
写真・文/カーネル編集部、稲垣朝則