梅雨から秋の時期に、もはや毎年のように天気予報が伝えるのは「大雨」への注意だ。それは「10年に一度の大型台風」であったり、「線状降水帯」であったり、「ゲリラ豪雨」であったりとさまざま。
しかし、車中泊でクルマ旅を楽しむわれわれにとって、旅先で……いやもはや日常で被災することを考えたうえで、準備や知識が必要になってくる。ここでは、そんな「雨」の災害について考えてみたい。
日常化する大雨の災害。その時、どう行動するか
車中泊専門誌『カーネル』の締め切り直前(2024年5月末)。線状降水帯の発生を伝えるニュースが、テレビやWEBサイトから舞い込んできた。
九州・鹿児島から東海地方へ、豪雨を発生させる線状降水帯が日本列島のあちらこちらで発生しているという。
そんなニュースを見ながら、この原稿を書いているのも、何か意味があるのかもしれない。
もはや毎年のように発生する「10年に一度の大型台風」。数年前まで聞いたことがなかった「線状降水帯」という言葉は、変換ミスをすることなく打ち込めるようになった。
少し前までは、大雨の大災害は「ゲリラ豪雨」とセットだった。それなのに、いまや1シーズンに何度も聞くほど日常化してきている。
災害というと、どうしても地震を思い出す人も多い。しかし、じつは豪雨による災害は、ここ数年で何度も起きている。気をつけるべきは地震だけではないのだ。
なかでも、2017年の九州北部豪雨、2018年の呼称・西日本豪雨、さらには2019年の令和元年東日本台風の被害は特に甚大であった。その被災時の状況は、まだまだ忘れられないほど衝撃的なもの。
なかでも注目してほしいのは、九州北部豪雨と西日本豪雨は7月に発生していること。つまり、これからの季節に同等の災害が起こる可能性は少なくない、ということだ。
地震と豪雨災害では、被災時の行動に大きな違いがある。それは避難するタイミングだ。
予測が難しい地震の避難行動は、あくまで被災後。揺れによる倒壊や津波であっても、地震後に起こるもの。避難行動はどうしても後手にまわることが多い。
しかし豪雨による災害は、いまや高性能なコンピューターや予報士による天気予報で、ある程度予測できるものになった。
もちろん、あくまで「予測」のため、完全な「予知」ではないものの、事前に避難行動が行えるのが豪雨災害だ。
以前、豪雨の予報が出た際に、その土地の皆さんに向けて、『カーネル』がSNSで避難を促したことがある。
そのとき、「車中泊だから、雨雲が近づいてきたらクルマで逃げればいい」と返信してきた人がいた。
もちろんこれも、立派な避難行動のひとつ。クルマ旅の予定を変えて、雨雲の外へ向かうというのは、決してまちがいではない。
ただし、問題なのはそのタイミングだ。判断が遅くなれば、運転中に身動きが取れなくなることも考えられる。
悪天候が予想できる場合は、できるだけ早く、まずは安全な地域に避難することをおすすめしたい。結果、それほど雨がひどくなかったとしても、それは「ラッキー」と思えばいい。
そして小まめな情報収集を行うこと。いまなら、スマホから避難指示速報なども受信できる。もはや「想定外」の豪雨は、「当たり前」という認識をもつようにしたい。
また、豪雨災害による車中泊避難についても、少し説明したい。まずは豪雨予報を聞いて、事前避難としての車中泊を行う場合。
クルマで安全な場所に避難し、雨やそれに伴った被害がある程度収まるまで、車中泊で過ごす。
まさに車中泊避難の準備や知識が役立つとき。「クルマに家族の誰が何人寝るか」を事前にシミュレーションしておき、そのための水や食料、マットや目隠しを準備しておく。
もう1パターンとしては、地震と同様に被災後に、車中泊避難を行う場合。こちらももちろん事前の準備や知識が重要ではある。
しかし、事前避難ができない場合、水害では体ひとつでの「垂直避難」が基本となる。これは、できるだけ高いビルやマンションなどの上層階へ移動する避難のこと。
この場合、水や土砂にクルマが浸かってしまい、活用できないことが多い。だからこそ、やはり事前避難を行う判断が重要なのだ。
そしてもう1点。現在の日本の夏はとにかく暑い。車中泊避難を行う場合、気温によってはエンジンをオンにして、エアコンを使用すること。
環境やマナーも大切だが、まずは目の前の命や体調のほうが大切。車中泊避難が厳しい気温のときは、そもそも無理をすることなく、エアコンのある避難所へ向かってほしい。
写真、文:大橋保之(カーネル編集部)
(カーネル2024年7月号vol.67)