メーカーのクルマでも、遊んでいる人が作ったクルマはおもしろいに決まっている! それはクルマを道具として見て、使うことを前提にしているから。
クルマのカスタムショップ「VAN-KEY」をスタートさせた阪本さんには、そんな言葉がピッタリと当てはまってしまう。
阪本 学さん プロフィール
子どものころの夢はおもちゃ屋さんになること。しかし、バイクの運転にのめり込んで、次なる目標はライダーに。そして、なぜかクルマの世界へ。ディーラー、キャンピングカービルダーを経て、「VAN-KEY」を立ち上げた。
バイクを載せられることが、クルマ作りの基本になっている阪本さん。愛車はホンダCT110。道が悪くても、グイグイと走れる機動力に惚れている。現在、オリジナルを残すかカスタムするかの攻防が激しさを増している。
理想のクルマを作る、満載のホビーとルーツ
「今後は事務所として使う予定ですが、みんなが集まってきてくれる場所にできれば」とガレージを紹介する阪本さん。
ようやく片付けが終わったガレージは、たくさんのキャンプ道具とおもちゃ、そして、クルマ関係のグッズであふれている。
これまでキャンピングカービルダーで、キャンピングカーの製造・販売に携わってきたが、2023年に独立。思い描いたクルマを作るために、「VAN-KEY」というクルマのショップをスタートさせた。まだ、クルマは完成していないが、ニューモデルの開発は着々と進んでいる。
阪本さんのイメージする理想のクルマに近いのは、ガレージの扉から少し見えていた、以前の職場で作ったボンゴブローニイ。
土足で乗り込めるフロアに、バイクも積み込めるスペースを確保。このバイクが載せられる広い土間のあるレイアウトが、こだわりポイントでもある。
そして、クルマに載せるのに最適なのが、通称ハンターカブ、ホンダ・CT110だ。若いときはもっぱらレーサーレプリカ派だったが、ハンターカブにまたがって、その楽しさに魅了されてしまった。
実際、フィールドにバイクを持ち込んで、林道などを走り抜け、理想とするキャンプスタイルを実践している。
キャンプでは何もない野営地のような場所によく出かけ、何もない世界を楽しんでいる阪本さん。そんなときこそ、クルマの機能性が問われることになる。
クルマではあるがアウトドアギアとして、しっかりと活躍してくれなければならない。快適な空間があるだけでは、阪本さんにとってはちょっと物足りないのだ。
いつでもキャンプへGO! 気軽に旅を味わえるのが最高!
ガレージの前に並ぶのは、ボンゴブローニイ、エブリイ、バネットの3台。エブリイは以前から乗っていて、たくさんのフィールドへ一緒に出かけた相棒。
オリーブカラーに塗装されたバネットは製作途中。気軽に乗れるキャンピングカーを目指して、まずはオールペイントを施した。家具のサイズを探りながら、いろいろなアイデアを考案中。これからの夢が詰まったクルマだ。
阪本さんにとって、これらのクルマ同様に家族の存在も大きい。みんなが集まってくると、辺りは一気ににぎやかな雰囲気になる。ガレージは笑顔であふれ、楽しい時間が過ぎゆく。
お気に入りのクルマ、そして奥さんヒサヨさん、長女クルハさん、長男ハルクくん、みんなが集まれるガレージ、すべてが大切な存在であり、バイタリティーあふれる阪本さんの原動力につながっている。
クルマで出かけるときは、家族と一緒に行動することが多い。野営地でファミリーキャンプをしたこともある。
近場であっても、車内でお湯を沸かして、ちょっとしたランチをとることもあった。クルマがあることで、家族との大切な時間がより充実したものになっている。
自分でクルマを作り、そして、好きな場所へ行く。そんな、自由な行動の原点は親譲りなのかもしれない。
じつは阪本さんの父親も、若いころにスバルサンバーで、放浪の旅をしていたという。それは、アルバムをひっくり返して、つい最近発見した驚きの事実であった。
クルマショップの屋号「VAN-KEY」は、そんな父親のクルマに記されていた文字からとったもの。こうして、父親の意思を引き継ぎ、クルマ、みんなが集まるガレージとともに新たなスタートが切られた。
思いが詰まった理想の形 ボンゴブローニイの広い室内
可動式の家具を移動することでベッドやリビングへ変化する室内レイアウト。最近はベッドレイアウトのままにしてお座敷スタイル。
セカンドシートを跳ね上げると、エントランス部分が広く使える。このスペースがあることで使いやすさが向上。
サイドウインドウに有孔ボードを取り付け、壁収納をしている。雑誌なども挟み込むことができる仕様だ。
ウインドウの上に板が張られ、その下にカーテンレールを取り付け。デコレーションライトが気分を盛り上げる。
いつでも使えるキッチンが大活躍。近場の駐車場であっても、お湯を沸かしたり、ちょっとした食事を作れるのが強み。
写真、文:渡辺圭史
初出:カーネル2023年5月号vol.60