「SHO'S(笑's)」といえば薄くたたんで持ち運びやすく、それでいて耐荷重抜群、おまけによく燃える焚き火台&薪ストーブで知られるキャンプギアブランドだ。
なかでもキャンプツーリングや徒歩キャンプで絶大な支持を得ているのが「B-6君」。
収納サイズは約181×122×H18mm。重量わずか約500gなのに耐荷重は圧倒の10kg。料理好きライダーが指名買いするのも納得の安定感だ。
そのほか、地面への熱の影響が少ないローインパクト設計であるなど、人気の理由は枚挙にいとまがない。
そんな国産・小型焚き火台メーカーの代名詞とも言えるSHO'Sが、2023年春、薄くたたんでもA3サイズ収納という迫力の焚き火台「EISAN」(2万5300円)を発売した。
なんと幅420mmで重量は約5kg。
長さ40cmの薪を切らずにすっぽり収まる炉、ズッシリとした重量感などSHO'Sらしくないコンセプトの焚き火台だ。
脚と側板を備えた底板(上写真左下)を開くと、背板と前板(ともに上写真左側)、五徳とロストル(ともに上写真右側)が入っている。
組み立て方は単純だ。底板の脚と側板を広げたら、前板と背板を、左右の側板に沿うようにスライドさせて取り付ける。
すると自然に周囲に小さな棚ができるので、その上にロストルを載せればいい。
調理をするなら五徳を載せて完成だ。
520mmとかなり幅広スペックとなっているが、これはグッと踏ん張っている脚の幅。炉自体は収納サイズと同じ420mmだ。
手間がかからずよく燃える!
さっそく薪をくべてみた。
前評判どおり、キャンプ場やホームセンターで手に入る長い薪がそのまま横向きに載せられる。奥行きも約300mmほどあるので、いろいろな薪の組み方にトライできる。
薪を横並びにしてじっくり暖を取るなんてことができるのもこの大きさがあればこそ。
火を入れると背板のロゴが炎で揺れる。ぼんやり眺めているだけで飽きない演出だ。
「EISAN」はサイズ的に家族や仲間と焚き火を囲むのに適したギア。前板は低くて炎が美しく見えるが、背板は高く鍋や鉄板を載せると炎が見えづらい。
あえて背板外側からロゴが読めるようになっているのは、背板側でも焚き火を積極的に楽しむための配慮なのかも。
ロストルは底板から浮いており、熱が地面に伝わりにくいと同時に空気の供給がスムーズに行われる。
焚き付けから薪へ、だんだん炎を育てるわけだが、その過程でさしてテクニックは必要ない。ざっくり焚き付けを盛り、それを囲むように薪を並べるだけで炎が大きくなるのはさすがだ。
寒い時期は熱をためにくそうだが、そこはサイズがカバー。ロストルに薪を並べてから焚き付けを盛ることでうまいこと熱をためるようになるだろう。
五徳の取り付け方は2通り。
クロス位置が背板側にあるので、どちらの使い方でも薪いじりに支障がない。
風よけと熱反射効果のある「専用リフレクター(風防)」で3面を囲ってみた。炉の高さがほぼ倍になるので、わずかながらも煙突効果が期待できるとか。
「専用リフレクター(風防)」には背側に角穴があり、角に向けた載せ方であれば五徳を使える。
ただ、五徳の交差部分が後方なので、鍋によっては「専用リフレクター(風防)」と干渉してうまく載らないかも。
もちろん「専用リフレクター(風防)」の上部に五徳を取り付けてもOK。保温や炙り料理によさそうだ。
五徳は2本付属されているが、別売五徳(2本セット2970円)を併用すれば上下2段で調理できる。
炉の熱を使って下段で調理+上段で保温するほか、ダッチオーブンの蓋に薪を置いて熱源の位置を変えて上下同時調理なんてこともOK。省スペースであれこれできるのが頼もしい。
躯体構造は国産初のフォールディング薪ストーブがベース
それにしても、ソロ焚き火台のパイオニアであるSHO'Sがなぜいま、大きな焚き火グリル「EISAN」を開発?
不思議に思っていたが、そのサイズ感と構造は、耐熱ガラスを採用した国産初のフォールディング薪ストーブの改良版「G-neo」がベース。
「B-6君」が0.6mm厚ステンレスなのに対し、「EISAN」は0.8mm厚ステンレス。高さがあるので安定性を確保するため脚にはペグを刺せるよう穴を設けているのも「G-neo」譲りだ。
「G-neo」はサイドからも炎が見えるように2面に耐熱ガラスを装備しているが、「EISAN」は代わりにレンガ壁状のスリットと深くえぐれた前板で表現している。
別売りの五徳と風防を利用して2段同時調理というのも、薪ストーブっぽいアイデアだ。
「B-6君」が大きくなった、というよりもフォールディング薪ストーブ「G-neo」が誰でも手軽に扱える焚き火台になったわけで、「EISAN」は“まさかのラインアップ”というよりは“正当な進化”。
使用時はファミリーキャンプ対応の迫力ボディだが、収納時の厚みは約23mm。ソロキャンパーが集って交流を図る“ソログル”が注目されているいま、最先端のソロ焚き火台といえそうだ。
【問】昭和プレス
大森弘恵 プロフィール
キャンプを中心としたアウトドアや旅の雑誌、ウェブメディアなどで活動するフリー編集者&ライター。キャンプの仕事に携わること約30年、ソロキャンプ歴は36年のおひつじ座 。
文:大森弘恵
写真:大森弘恵、SOTOBIRA編集部
撮影協力:オートキャンプ・フルーツ村