【概要】車中泊旅ボディメンテナンス術② 長時間ドライブ時に体に起こる変化と不調の解説、運転疲れの改善マッサージを紹介。

座りっぱなしの疲労を吹き飛ばそう!

週末や連休には少し足を延ばして遠方までドライブや車中泊旅へといきたいところだが、運転で疲れきってしまっては楽しみも半減。

そこで今回は、長時間ドライブ時に体に起こる変化と不調などとともに運転疲れの改善マッサージを解説していこう。年末年始の帰省などで長時間運転する人も要チェック!

教えてくれたのは……プライマリ メディカル サポート

体に不調を抱える人に施術を行っているコンディショニング・トレーニング施設。今回、アドバイスをくれたのは、同施設の岡崎倫江先生と金子雅明先生だ。彼らは、医学博士であり、筋肉と骨格の専門家、理学療法士(国家資格)でもある、“体の動きの”プロフェッショナルだ。

全身は疲労困憊……。「座る」ことは、体に悪い!?

「立つより座るほうが、体への負担は大きいんですよ」と、岡崎先生から驚きのコメントが。立つより楽に感じるのだから、座るほうが体への負担は少ないだろうと思ってしまいがちだが……。

ここで、座ること(座位)によるダメージを詳しく解説していこう。

座位になると、ほとんどの人は背中が丸まり、頭が自然と前に出てしまう。成人の頭の重さは4~6kgと想像以上に重く、その重い頭を支えるために使われるのが首・肩まわりや背中の筋肉。

そのため、長時間にわたり猫背で座ったままでいると、首・肩まわりや背中の筋肉が硬くなり、コリが悪化する。

また、腰まわりの筋肉も硬くなり、悪化すると背骨のS字カーブが崩れて、腰椎(腰の骨)が圧迫されて腰痛が発生するリスクが高まる。

さらに上半身が前に傾くことで横隔膜が圧迫されたり、胸まわりの筋肉が硬くなって呼吸がしづらい状態になることもある。

そのほか、血流が悪化して足がむくみやすくなるなど、下半身にも悪影響を与えかねない。

座位で起こりがちな負担

画像: 座位で起こりがちな負担

座りっぱなしの弊害は数えきれないほどある。上半身の重みで、全身の筋肉に負担がかかり、筋肉が硬くなり、血の流れが悪くなってしまうのだ。

太モモ裏が座面で圧迫され続けることにより下半身の血流も悪化して、むくみを引き起こす。

3時間超のノンストップ運転は要注意!

実は運転しているときの姿勢は、デスクワークで座っているときの姿勢よりも、体への負担が大きいという。

となれば知っておきたいのは、どのくらいの時間、運転し続けると体によくないのかということだ。 

目安になりそうなのが、下のグラフ。普段の座り姿勢の場合、1時間座ったケースを基準にして、体への危険度をグラフ化したものだ。このグラフを見ると、4時間を超えたときに体へダメージが大きくなり始めている。

普段の座り姿勢よりも運転時はダメージが大きいことを考えると、余裕をもって、どんなに長くても3時間ほど運転をしたら、いったんクルマから出て体を休め、軽く体を動かすなどしたほうがよさそうだ。

座りすぎと寿命の関係

画像: 引用 :「 座位行動」厚生労働省より作成

引用 :「 座位行動」厚生労働省より作成

運動習慣のあるなしにかかわらず、座位時間が長いと死亡する危険度が高いことが示されたグラフ。一番左の棒グラフ、1時間座っていた場合を1として、時間が延びるほどに、寿命が短くなる危険が増している。

上半身の重さがかかる腰・股関節まわりはダメージポイント

画像: 運転中の上半身の重さをダイレクトに受け止めるのは腰・股関節から太モモにかけて。運転中は動くことができないので、この周辺の血流は滞ったままとなってしまう。

運転中の上半身の重さをダイレクトに受け止めるのは腰・股関節から太モモにかけて。運転中は動くことができないので、この周辺の血流は滞ったままとなってしまう。

たとえ3時間に1回は休憩をとったとしても、長時間の運転は体にはダメージが残る。ダメージを最小限にして、疲労を蓄積しないためにも、運転中に負担がかかるポイントを把握することが重要となる。

長時間の運転で特にダメージを受けやすいのは、腰・股関節まわりから太モモ裏にかけて。

上半身の重みを支えなくてはならないうえ、運転中は動くことがほとんどないため、股関節まわりの筋肉が硬くなり、血流が悪くなりやすいからだ。

腰から股関節、太モモにかけては太い血管が多いため、血流が悪くなることで眠くなったり、疲労回復力が低下したりする。

また座位のところで解説したとおり、腰まわりの筋肉が硬くなることで腰痛が悪化するリスクも高くなる。

見落とし厳禁! 目の筋肉疲労

画像: 運転中は目を動かす筋肉が酷使されるため硬くなり、血流が滞りやすい。

運転中は目を動かす筋肉が酷使されるため硬くなり、血流が滞りやすい。

「長時間運転で疲れやすいのは腰・股関節のまわりだけではありません。目を動かす役目をもつ筋肉も、疲れやすいポイントです」とは岡崎先生。

目のまわりの筋肉は、高速道路では目線が固定されてあまり動かないため硬くなりやすく、疲れがたまりやすい。

逆に一般道では、目をあちこちに動かす機会が多いため、目の筋肉が使われすぎて疲労が蓄積する。 いずれの場合も、目の奥の痛み、視界がかすむ、ぼやけるといった状態が発生しやすくなる。

実践! 長時間運転の疲労回復マッサージ

ここで紹介するマッサージは目のまわり、太モモ裏と全部で5分もかからない程度。サービスエリアなどで休憩をとったときに行ってほしい。一度試してみれば、その効果を実感できるはずだ。

ドライブを楽しんだ土日の週明けや、レジャー明けの翌日に疲れを残さないためにも、やらない手はない!

マッサージ① 目のまわり
→1カ所5秒×1セット

目のまわり3カ所を、それぞれ5秒ずつもむだけで血流を改善させられるマッサージだ。

画像1: マッサージ① 目のまわり →1カ所5秒×1セット

眉毛の上端の骨が出っ張っているあたりに人差し指から小指までの4本の指を添えて、左右に小刻みに動かしながら右⇔左と移動させてもみほぐす。

画像2: マッサージ① 目のまわり →1カ所5秒×1セット

次に、眉毛から指2本分ほど上のあたりを、人差し指から薬指までの3本の指で円を描くようにほぐしていく。

画像3: マッサージ① 目のまわり →1カ所5秒×1セット

最後は目尻のあたりを薬指と小指の2本の指で、小さな円を描くようにマッサージする。

マッサージ② 太モモ裏
→1カ所15秒×2~3セット

次に、長時間ドライブで血流が悪くなりがちな、太モモ裏のマッサージを。太モモ裏を、脚の付け根に近いほうからヒザ裏に向けて、両手でがっしりとつかむようにもみほぐしていく。脚の付け根あたり、太モモ裏の真ん中あたり、ヒザ裏側のすぐ上あたりと、3カ所に分けて行うと効果的だ。

画像1: マッサージ② 太モモ裏 →1カ所15秒×2~3セット

上の写真のように手を構える。

画像2: マッサージ② 太モモ裏 →1カ所15秒×2~3セット

親指以外の4本指と親指で太モモをはさみ、脚の付け根あたり、太モモの真ん中あたり、ヒザ裏側のすぐ上あたりの3カ所を痛気持ちいい程度の強さでぐっとつかんで15秒キープ。これを2~3回繰り返す。

文:汽水丹治 
写真:宮田幸司 
監修:プライマリ メディカル サポート 
初出:カーネル2022年11月号vol.57

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