みんなの焚き火の仕方、キャンプ場側はどう感じてる?
キャンプ場の多くは「器具を使用すれば焚き火が可」。そんななか、栃木県那須郡にあるサンタヒルズは「すべてのテントサイトで直焚き火が可能」という今では希少なキャンプ場。
さらに宿泊施設においても、焚き火台が常備されているコテージがあり、また、他のほとんどのコテージでも、引火性のものがない地面であれば、焚き火台を持ち込んでの焚き火もOKという、焚き火好きに好評を得ているキャンプ場だ。
そんな焚き火がしやすい環境を整えているサンタヒルズ。オーナー・中村郁夫さんにあらためて、焚き火のルールとマナーについて聞いてみた。
教えてくれたのは……サンタヒルズの中村郁夫さん
2代目オーナーで愛称「スノーマン」。クリスマスをテーマにしたキャンプ場で、サンタクロースの家をイメージしたコテージやクリスマス雑貨店を併設しており、一年中クリスマス気分が味わえる。11〜12月はイルミネーションやクリスマスイベントを開催。
「やりっぱなし」は絶対NG! 必ず守ってほしい焚き火のこと
編集部(以下、編):焚き火の際のルールとマナーは、キャンパーのあいだで度々話題になりますが、中村さんはどのように考えていますか?
サンタヒルズ中村さん(以下、中村さん):分けて言うのであれば、ルールはキャンプ場側が守っていただきたいもの、マナーはお客様が自発的に考えて、行動するものではないでしょうか。
焚き火のルールとひと言で言っても、そのルールはキャンプ場によってさまざまです。けれど、絶対的な共通ルールがあります。それは「火事を起こさない」ということ。
豪快に火を使えるのがキャンプの魅力ですが、フィールドには燃えやすいものが多いですから。例えば乾燥した落ち葉や枯れ木のそばでは、焚き火台を使っていたとしても、焚き火から引火して、あっという間に延焼してしまう危険があります。
だから、こんな状態だと火が燃え広がるかも……ということを常に意識して焚き火を楽しんでほしいですね。これはルールでもあり、マナーでもあると思います。
編:焚き火後の原状復帰をルールにしているキャンプ場も多いですよね。サンタヒルズの場合は?
中村さん:原状復帰は、ルールとして明記されていなくても基本的に行ってほしい行動。「立つ鳥跡を濁さず」の精神で取り組んでもらいたいですね。
例えばサンタヒルズの直火サイトでは、炉で使うブロックを無料貸し出ししています。使用後はそれを戻し、サイトに残った灰や燃えカスなどを処理してきれいにするところまでやって、原状復帰となります。完全消火した状態であれば、灰捨て場に灰や炭などが捨てられます。
じつは、焚き火のルール違反としては、圧倒的に「やりっぱなし」が多いんです。とくに炭の放置が目立ちます。原状復帰も共通ルール。使用後はきちんと元どおりにしておきましょう。
編:原状復帰をしない人が多く、直火が禁止になったキャンプ場もあると聞いたことがあります。
中村さん:それを言うなら閉鎖したキャンプ場もありますよね。本当に深刻な問題です。管理的な観点だけで言えば、正直、直火は禁止にしたほうが楽だと思います。原状復帰しない人もいますし、延焼のリスクもある。
けれど直火には、言葉にできないような魅力というか、人をひきつける力があります。何千年も前から続く、その原始的な佇まいがそう思わせるのかもしれません。
私たちが直焚き火をOKにしているのは、そもそも自分たちが直焚き火大好き人間だから(笑)。この魅力をお客様にも感じてほしいと思っています。
編:では、実際にキャンプに行った際、どのようにすれば「いい焚き火」ができますか?
中村さん:焚き火のルールについては、念のため、予約時やチェックイン時にキャンプ場に確認するのがオススメです。表記されていない細かい決まりがあるかもしれません。そのほうが双方、より気持ちよく楽しめるはずです。
編:ありがとうございます。では最後に、読者に向けてアドバイスを!
中村さん:難しく考えてしまうかもしれませんが、ルールだけにとらわれず、「これをやっちゃうとお隣に迷惑かな?」「汚したままで帰ると、キャンプ場の人や次の人が大変かな?」というような気づかい、心づかいがあれば、問題は自然と解決されていくと思います。
そういう気持ちが、より豊かなアウトドアライフに繋がっていくと思いますよ!
【キャンプにおける焚き火のルール】
◇「火事を起こさない」焚き火をする
◇原状復帰は必須!
◇細かいルールはキャンプ場に確認
みんなが気持ちよくキャンプするために、覚えておきたい6つの焚き火マナー
楽しい焚き火をしたいなら、周囲への配慮をお忘れなく。「自分がその事態に直面したら」と考えて行動を。みんなが気持ちよくキャンプするための6つの提案を紹介。
①落ち葉など燃えやすいものは避けておく
カラフルな落ち葉のじゅうたんに映える焚き火の風景。雰囲気がよく感じるけれど、かなり注意が必要だ。
乾燥した落ち葉は引火すると燃え広がりやすく、延焼の危険大。落ち葉が多い場所では焚き火を控えるのがいいだろう。
区画サイトの場合は、焚き火台を中心に広い範囲で落ち葉を避けておく、また風向きによっては焚き火を控える。周囲を見渡して、しっかり判断しよう。
②火を大きくしすぎない
焚き火をしていると、薪をどんどんくべて炎を大きくしたくなる。けれど大きな炎は火の粉の量も増え、自分だけでなく、近隣サイトのテントやタープなどに穴をあけてしまうことも。さらには近くのものに燃え移ってしまう可能性も大だ。トラブルの原因にもなりやすい。
焚き火は、焚き火台などの器具からはみ出さず、自分が制御できる大きさで楽しむのがマナーだ。
③木の根元で焚き火をしない
とくに枯れ葉や枯れ枝のある木のそばで、焚き火をするのは避けよう。火が燃え移るなどの事態を防ぐのには当然のことだが、他にも理由はある。
これらの木だってキャンプ場の大切な資源だからだ。延焼してしまった木は、二度と元には戻らない。そんなことにならないようにキャンプ場へ配慮するのも、マナーのひとつだ。
④煙を近隣サイトに直撃させない
焚き火をしているのだから多少の煙は仕方ないけれど、あまりに大量の煙が自分のサイトに直撃したらどうだろう? 煙いし、目が痛くなるし、あまりいい気持ちはしないはず。
だから焚き火は風向きを考えて行うのがマナー。また薪の乾燥が不十分だと、火にくべたときに煙が大量に発生する。そんな薪があたったら、すぐに焚き火台のそばに置き、火の力で乾燥させよう。
⑤ゴミを燃やさない
焚き火だからといって、なんでも燃やしていいわけではない。なかにはキャンプ中に出たゴミを燃やす人もいるけれど、ものによっては黒い煙が大量に発生したり、悪臭が漂ったり、近隣サイトに迷惑がかかる。
また紙類のゴミを燃やすと灰が大量に発生し、風で散らばっていく。周囲のキャンパーが嫌な思いをしないよう、配慮が必要だ。
⑥就寝時間までに焚き火終いを
さて寝ようと思ったときに、タイミングよく焚き火が消えることはあまりない。できればすべてを燃やし尽くして終わるのが、焚き火のベストな終わり方。就寝時間までに焚き火終いができるよう、薪や炎の加減を調整しよう。
また、夜に薪を割る音はかなり響く。キャンプ場が設定した消灯時間までに焚き火を終わらせるのがマナーだ。
取材協力:サンタヒルズ
出典:GARVY2019年12月号(実業之日本社)