新車だからクルマに穴をあけたくなかった。丸ノコで木を切ったこともなかった。それでもN-VANならここまでできる! 初心者のためのDIY裏技まるっと公開!
初心者でもDIYしやすいクルマ、それがN-VAN
2018年の登場以来、車中泊界隈でいまだ根強い人気のホンダ・N-VAN。最大の特徴は、運転席以外の座席が床下に収納されるシートアレンジと、ユーティリティーナットを活用することにより、カスタムが可能な荷室だ。
その独特な車内空間は、「どうぞ、何でもやってください」と言わんばかりの包容力があり、乗る人のカスタマイズ欲をかき立てる。
ユーティリティーナットとは、N-VANの荷室に採用されている直径6mm(M6)のネジ穴だ。アイデア次第でさまざまなものを取り付けることができる。
ほかのクルマならボディに直接ビスを打ち込まなければいけないようなものでも、N-VANなら車体は無傷のまま、しっかりと固定することが可能。これがDIY初心者にとって、ハードルを下げてくれる大きな要因だ。
木材をカットしたり、塗装したりするような本格的なDIYはやったことがなかった筆者は、旅の最中、車内のどこに何があったら便利か毎晩シミュレーションしていた。
理想のレイアウトを実現するため、まず段ボールを使って実物大の模型を製作。自分の体とインテリアの位置のバランスを、細かく調整していった。
この「クルマの中で考える」のが重要で、簡単な図面は描いたものの、実際の採寸や作業はいわゆる「現物合わせ」で進めたため、理想と現実のギャップが早く埋まっていった。
これからN-VANを車中泊仕様にしたい人の、参考になれば幸いだ。ぜひ自分だけの居心地のいい空間を手に入れ、快適な旅を楽しんでほしい。N-VANの可能性は、無限だ。
なぜこんなに車中泊向きなのか? N‐VANにしかない3つのポイント
ほかの軽バンにはないN-VANだけの大きな特徴として、
①運転席以外のすべての座席が床下に収納できること。これにより約2m30cmのフラットな床が現れる。
②助手席側のセンターピラーがないこと。助手席ドアと後部スライドドアを開けると開放感あふれる空間が広がる。
③座席を収納した際の床の高さがほかの軽バンと比べ圧倒的に低く、そのため室内高が約1m30cmもあること。
軽貨物車としてのさまざまな工夫が、じつは車中泊にとっても大きなアドバンテージとなっている。
N‐VANは何もしなくても車中泊できる
いかにN-VANをDIYするかを語る前に、とても重要なことをひとつ。矛盾するようだがN-VANの本当のよさは、何もしなくても快適に車中泊できるところだ。
筆者が旅に出始めたときは、銀マットを敷いてエアマットと寝袋だけでスタートしたが、快適に車中泊することができていた。
ただ、アイデア次第でいくらでもカスタムできるポテンシャルの高さもあわせもっているクルマなのだ。
初心者必見! N-VANの車中泊仕様DIYのコツ
車内にモノを設置する前にまずは基礎となる床と天井から
車内に設置した材料を並べてみた状態。こうみると意外にパーツ数は少ない。ちなみに材料費は全部で6万円くらい。
天井の断熱
車内に何もないうちにやっておくべきことは、なんといっても断熱処理。その効果は絶大だが、初心者にはハードルが高く思われがち。
が、じつはルームランプを3個外すだけで内張りは簡単に取れる。完全に取り外さなくても作業はできるので、制振材を張り、断熱材を入れたらルームランプを戻して完成だ。
天板のギミック
天井の板はスギの羽目板を使用。中央部分をあえて開け、アイアンメッシュと布張り加工にしたのは、ルームランプを完全に埋めることなく使えるようにするため。もちろん軽量化も担っている。
天板の固定は後述のイレクターパイプを使うため、板の裏面にはジョイントパーツを取り付けている。このパーツの位置合わせはかなり難しかった。
側面パーツにはマリンランプを取り付けたが、中身は100均のLEDライトに交換してある。
イレクターでフレームを組む
クルマに穴を開けずに天板を固定するために、イレクターパイプでフレームを作成。
ユーティリティーナットとイレクターを接続できる専用パーツが市販されている。
フレームに天板をはめれば、いつでも脱着可能な天井が完成。フレームと天板のジョイントパーツの位置合わせが難しいが、やり直しがきくので試してみる価値はアリ。
床の養生
天井と同じく、断熱の要となる床面もしっかり養生しておきたい。クルマの床は意外に硬いので、筆者の場合は4層構造に。
傷や擦れ防止の布を敷き、10mmのアルミマットを2枚重ねる。一枚は裏返しにすると、両面から断熱できる。
サイズに合わせたカーペットを敷き、その上にほかのファブリックと統一感のあるデザインのラグを重ねた。
テールゲートとカーテン
テールゲートの化粧ボードを外し、ボード自体を型紙にしてウッドパネルを作成。せっかくなので断熱材も入れて元に戻した。
カーテンはレールとなる丸木をフック付きマグネットで固定。取り外しができるのも便利。
▼その②につづく▼
写真:rui、まるなな、逢坂聡
文:rui
初出:カーネル2024年9月号vol.68