「このポータブル電源ならこの家電」ではなくて「この家電を使いたいからこのポータブル電源」という選び方が基本
編:では少しサイクルから話を変えます。これから購入したいと思っている人にポータブル電源をすすめるなら、どんなモデルがいいですか? 例えば、週に1回、週末だけ車中泊に行く人だったら?
ポ:それは使い方によりますね。何に使うか。例えば、夏にポータブルエアコンを使う場合、電気を多く使うので容量は大きいほうがいい。冬だったら、電気毛布とかで乗りきれるので小さめのポタ電を持っていくとか、使い分けが必要かなと。
編:最初の一台を買うとしたら?
ポ:まずは500Wh~700Whくらいでいいと思います。でも、ドライヤーを使いたいとか電子レンジを使いたいということであれば、1500Wh以上あれば安心。
編:月に1回の車中泊旅で、その際は温浴施設を利用する人なら?
ポ:ポータブル電源ではなく、モバイルバッテリーでもいいのではないかと。スマホを少し使う程度なら10000mAhあれば十分。
編:いまの話のように、車中泊スタイルによって、選ぶポータブル電源をカテゴライズしたいと思っています。どうすればいいですか? ポータブル電源によって「使える家電はこれですよ」というのを提案するイメージなのですが……。
ポ:なかなか難しいですよね。逆に「どんな家電を使うか?」で、使用するポータブル電源を分けることはできます。
「あなたは何に電気を使いますか?」から問い始めるのがポータブル電源の選び方です。「ならば、あなたへのおすすめは、このポータブル電源ですよ」という提案はできます。最初はやはり「目的」からです。
編:では、いま注目を集めているのが、防災でのポータブル電源の活用です。ポータブル電源を使ったことがない一般家庭で、防災に使いたいという場合、訴求は変わるかと思います。そんな皆さんには、どんなモデルをすすめますか?
ポ:冷蔵庫とエアコンが切れることを考えて、とりあえず2000Whとソーラーをすすめます。
編:そうなると、ソーラーパネルとポータブル電源をセットで購入できるメーカーがおすすめですか?
ポ:ひとつの選択肢ではあるかと思います。それぞれメーカーによって、ポータブル電源の訴求ポイントは変わってきますからね。
編:やはり充電速度が速いほうが高性能なのですか?
ポ:使い方によって変わりますね。例えば、あるメーカーのモデルは1時間で80%まで充電できる。そこをストロングポイントにしていました。
でも、充電速度を早めれば早めるほど、バッテリーは早く劣化する。逆に充電時間は8時間かかるけれど、充電時は微弱な電流を流すだけなので、バッテリーは長持ちします。
編:現在のような高性能なポータブル電源が各メーカーから発売されていますが、いまあるポータブル電源なら、一定の性能はあると思っていいのでしょうか?
ポ:現在、生き残っているメーカーなら、それほど粗悪なものは多くありません。ただし、まだなかには残っていることもあります。
例えば、互換性のあるバッテリーで、サードパーティからも、いろいろ関連製品が出ているのですが、明記してある容量と実際の容量が違うことがいまでもあります。
5Ahと書いてあっても、実際は3Ahであったり。本当に5Ahにしようとすると、価格が跳ね上がる。フルパワーでは使えなかったりするようなケースもあります。
何Whと書いてあっても、実際の容量と異なることもまだ少なからずあると聞いています。
編:それはそもそも詐欺にならないのでしょうか?
ポ:電池の容量を偽っている可能性はある。ただそれはもう、消費者ではわからないことが多いです。そういったことも含めて、しっかりしたメーカーを選ぶ、ということが大切になってきます。
編:では、しっかりしたメーカーとは、どんなメーカーのことですか?
ポ:まず、日本であれば、国内に日本法人や正規代理店があること。製品の送り先が「JAPAN」であること。明記されている保証が受けられること。Eメールの問い合わせに返信がちゃんと来ること。
編:確かに! しっかりとした組織でないとできないですからね。
ポ:以前にあったのは、いつの間にか日本からいなくなるというパターン。不自然に安かったりすると要注意。突然連絡がつかなくなったり、会社がなくなっていることもある。
ポッと出のメーカーは慎重に。会社を調べるとか、不安なら問い合わせをしてみて、返信の速度や対応を確かめてみてください。
編:以前は家電でも多かったですよね。PCとかも。あと、最近多いのは、ホテルをリーズナブルに予約できる代行のネット会社とか。
ポ:輸入メーカーのポータブル電源が売れるようになって、一気に増えたように思います。そこはちゃんと、ユーザーに見極めてほしいですね。
編:では最後に、ポータブル電源は、車中泊にいったい何をもたらしたと思いますか?
ポ:車中泊であっても、「インフラとしての“コンセント”が近くにないと暮らせない」という生活スタイルを変えたと思っています。
「オフグリッド」という生活スタイルが、選択できるようになった。広い意味で、私もそれを目的に、ポータブル電源メーカーに勤めていましたから。
編:今後のポータブル電源の進化を、一緒に見ていきましょう!
聞き手:大橋保之(カーネル編集部)
初出:カーネル2024年7月号vol.67