全長9mにもなるフルサイズRVで、まさしくフューチャリスティックなデザインが目を引くトーイングトレーラー。
“トゥモロウ”をもじって「ロモトウ」と名づけられたこのRVメーカーは、ニュージーランドの新興メーカーだ。
2軸のアクスル(車軸)をもつCチャンネルフレームに直接メインキャビンが乗せられるベーシックモデルのC8。
そして、パティオスペースとなるU字型に大きく湾曲したフレームを台座とし、その上下空間に前述のC8が組み込まれた、フルスペックのT8という2モデルがラインアップされる。
なかでも注目したいのはT8で、トレーラーの停車状態からトランスフォームスイッチを押すだけで、メインキャビン部分が前方に約1mスライドしたあと、反時計回りに90度回転する変形機構を備えていること。
これにより、走行時には隠されていたU字型フレームの中の、パティオスペースが登場するギミックが仕込まれている。
欧米では住宅デザインでも、リビングルームからシームレスにパティオやヤードにつながる「インサイド・アウトサイド・デザイン」と呼ばれる空間を設けることが流行している。
まさに1台のRVで、そのコンセプトを簡単に実現してしまうのがロモトウT8だ。しかもその変形動作はすべてが電動でコントロールされ、わずか90秒と文字どおり瞬時といっていいもの。
オーナーは駐車場所を見つけて、スイッチをワンプッシュするだけでトランスフォームは完了する。
メインキャビンとなるC8部のデザインも、非常に未来的で秀逸だ。前方は水平方向に円弧を描くデザインで、この部分にはボックスシートデザインのリビングルームが配置される。
いっぽう、後端は垂直方向の円弧デザインとなり、こちらはラウンドしたシーリングが美しいメインベッドルームとなっている。
内外装含め、すべてがポリッシュされた真っ白な壁面と、明るいウッドフロアで構成され、こちらも洗練された現代的な建築デザインからインスパイアされていることがうかがい知れる。
元来ニュージーランドやオーストラリアのオセアニア諸国は、モダン建築が進んでいる地域でもあり、そのデザイン様式の高さがRVにも反映されているのであろう。
C8の中心部分にはキッチンやシャワールーム、トイレが設置されていて水回りを集約。大柄なオセアニアの人たちがデザインしたRVだけあって、その室内スペースは縦×横×高さとも十二分なスペースが広がっているのだ。
外寸も9mの全長、2.4mを超える全幅、高さも3.4mと規格外に大きいが、パティオを展開すると合計約30㎡ものスペースが手に入る。
このゴージャスなRVで旅をする満足感は計り知れないが、もちろんお値段も新築マンションが軽く買えてしまうほど立派なもの! ということも最後に付け加えておきたい。
※ロモトウT8のオプション満載最上級モデル「ULTIMATE」はNZD 475,000(SOTOBIRA編集部調べ)
romotow T8/C8の魅力を徹底解剖!
ラウンドシェイプしたウインドウがいかにも近未来的なデザインを作りあげる。全高は3.4mとなかなかのサイズだ。
図面上の90度回転している部分がメインキャビンで、廉価モデルであるC8はこの部分だけが走行用フレームに載せられたもの。
T8になると下部のパティオ部分がメインフレームとなり、大きなアウトドアリビングスペースが登場する。
オープンパティオのフロアは、ラウンドデザインの壁から天井へとつながるミッドセンチュリー・モダンスタイルを踏襲したもの。
キャビン最前列は、ボックスシート状にデザインされたリビングスペース。テーブルは下方にプッシュダウンできるので、ここもマットを敷けば就寝スペースに早変わり。
室内架装は統一されていて、品のあるフィニッシュ。RVの室内に廊下があるのはスペースに余裕がある証拠。
ベッドルームの左右には円形の窓が設置され、それぞれルーバー式でプライバシーが確保されるようになっている。また天井中心部に旅客機のようなシェルフが取り付けられているのも特徴的だ。
パティオスペースにはスクリーンドア(網戸)を取り付けることも可能。さらに最後端部はBBQグリルなどを置けるようにデザインされている。
塗装前の仮組み状態。金属や木材をフレームに使いながら、ボディ外板にはFRPを多用して軽量化につとめる。
メインキャビン部分組み込み直前のT8パティオ部。天井と床の切り取り部分は、キャビンがスライドするスペースだ。
走行時の重心を下げるためにCチャンネルのメインフレームは金属製だが、架装部分は軽量なFRPを使用する。
文:Yusuke Makino(カーネルUSAブランチ)
初出:カーネル2024年7月号vol.67