【概要】車中泊避難生活におけるエコノミークラス症候群の発症原因、症状、予防法などを解説。

車中泊専門誌『カーネル』本誌および別冊、さらにはWEBメディア『SOTOBIRA(ソトビラ)』においても、何度も紹介している「エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症/肺塞栓症)」の予防と対処法。

つまりそれだけ車中泊避難を行ううえで、最も重要な項目であることはまちがいない。そこで、これまでも紹介してきた基本を、改めて紹介したい。

不便な車中泊避難生活において、マイカーで、家族全員が足を伸ばして寝ることは難しいかもしれない。水を定期的に飲むことが、無理な時期があるかもしれない。

きっと、実際に被災地へ行かないとわからないことばかりだと思う。そんななかでも、まずはできることを行ってほしい。

少しでも動ける時間や場所があれば、こまめに足を動かす運動を。立った状態での踵の上げ下げや、ふくらはぎを意識したウオーキング、マッサージ、ストレッチ、足ジャンケンなど、できることはたくさんある。

また、どうしても車内の荷物がじゃまで、足を伸ばして寝られない場合もある。そういったときは、一部の荷物を外に出してクルマの下に置いたり寝るときだけラゲッジの荷物を、運転席に移し替えたりして、スペースをつくるようにしたい。その手間を面倒がらないように。

さらに車内の安眠スペースが一名分しかない場合もある。家族の人数を考えて、一日おきに交代して避難所を利用するなど工夫したい。

エコノミークラス症候群とは?

画像: 岡山の西日本豪雨のときの避難所。人によってはクルマよりも避難所のほうが、落ち着くということもある。だが、エコノミークラス症候群は避難所にいても発症するおそれがある。

岡山の西日本豪雨のときの避難所。人によってはクルマよりも避難所のほうが、落ち着くということもある。だが、エコノミークラス症候群は避難所にいても発症するおそれがある。

車中泊避難以外の避難所生活でも発症することがある

エコノミークラス症候群というのは、長時間同じ体勢で過ごしたあと、歩きはじめたときに、急に呼吸困難やショックを起こす病気だ。

具体的には、狭いイスに座ったまま足を下にした状態でいると、足の血液の流れが悪くなり、血管(静脈)の中に血液の塊(血栓)ができてしまうことがある。

この血栓が、歩行などをきっかけに足の血管から離れ、血液の流れに乗って肺に達し、肺の血管を詰まらせてしまうことが原因だといわれている。

健康な人にも発症するが、動脈硬化などの疾患を有する人や高齢者、糖尿病患者などは特に注意が必要。

さらに、エコノミークラス症候群というと、「車中泊」の病気だと思いがちだが、実際には避難所にいても発症することがある。原因は車中泊と同様なので、後述する予防法を行おう。

血栓ができやすくなる条件

血液の流れが滞る車中泊や雑魚寝などの避難所で体を動かさない
血液が固まりやすい水分摂取不足による脱水傾向
血管が傷ついてしまった被災時に負った足のケガや打撲
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発症する原因を知る

エコノミークラス症候群は、同じ姿勢で長時間過ごしたり、水分不足や運動不足で起こる

エコノミークラス症候群はなぜ発症するのか? 上記にもその原因の一部は書いたので繰り返しになるが、まずは姿勢の問題。同じ体勢で長時間過ごさないこと。膝を曲げたままイスに座り、足を下にして寝ないこと。

画像: この体勢のまま長時間過ごしたり、寝たりしないこと。

この体勢のまま長時間過ごしたり、寝たりしないこと。

さらに、運動不足や水分不足なども原因のひとつといわれている。被災すると、車中泊避難に限らず、どうしても気持ちはふさぎがちになる。同じ場所で動かないのは心身ともによくない。意識的に運動することを心がけたい。

こんな症状が出たら要注意

脚のむくみから、呼吸困難まで段階あり

エコノミークラス症候群は、呼吸困難が主な症状だ。急に立ち上がったときに呼吸が苦しくなる。そういった症状の場合は、すぐに医師に連絡を。自分自身においてもそうだが、周りにも気を配りたい。

血液の塊が小さい場合は、症状を感じない場合もあるという。初期段階では、下肢の赤み、腫れ・むくみ、だるさなどが挙げられる。一度できた血栓は、簡単には消えない。気になる病状が出たら、早めに医師に相談してほしい。

覚えておきたい予防法

意識して運動することを心がける。歩くだけでも違う!

何度も繰り返しになるが、重要なことなので再度書いておきたい。狭い車内に同じ体勢で長時間にわたって滞在することが多くなると、体内の血流が悪くなる。

画像: 足元に荷物などを重ねて、足を心臓と同じくらいの高さにして寝よう。

足元に荷物などを重ねて、足を心臓と同じくらいの高さにして寝よう。

特によくない姿勢は、足を下にして長時間寝ること。可能であれば、足を心臓と同じくらいの高さにして過ごすこと。そして同じ向きで寝ないこと。何度か体勢を変えることをおすすめする。

また、足の血液を心臓に循環させるために、とても重要な働きをする筋肉がふくらはぎにある。ふくらはぎは第二の心臓とも呼ばれているほど。

長時間同じ体勢で寝なければいけない状況の場合は、ふくらはぎの働きを助ける「サポートソックス」を着用することもおすすめしたい。

画像: 足をこまめにマッサージすることも予防策のひとつ。被災時だけでなく、日常でも運転が長時間続いたときは、面倒がらずに行いたい。

足をこまめにマッサージすることも予防策のひとつ。被災時だけでなく、日常でも運転が長時間続いたときは、面倒がらずに行いたい。

さらに、血液の循環をよくするために、日中に適度な運動を行うことも大切。ふくらはぎをマッサージすることも効果的だ。

狭い車内でもできる方法としては、靴を脱いで、足首の曲げ伸ばしを行ったり、足の指でじゃんけんを行ったりするといい。固まった筋肉をほぐすことで血流は改善するからだ。

車中泊が増えると、水分摂取が足りなくなることも多い。水分が不足すると、血液の中が脱水状態となり、血液が凝固しやすくなる。これもエコノミークラス症候群の原因となる。

夜間もこまめに水分補給ができるように、車内に水分を保管しておくこと。

トイレがないと、特に女性は水分摂取を制限しがち。そのため、簡易トイレを準備しておくことも、実はエコノミークラス症候群の予防につながっている。

予防のための注意点

1.姿勢&ウェア
・長時間同じ姿勢でいない
・足を高くして寝る
・サポートソックスの着用

2.運動&マッサージ
・数時間おきに歩く
・適度な体操や足まわりの運動
・ふくらはぎマッサージ

3.水分補給
・水やスポーツ飲料の補給(アルコールはNG)
・簡易トイレの準備(水分補給をがまんしないように)

文:大橋保之(カーネル編集部) 
出典:車中泊スタートブック(2023年1月6日発行)

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