【概要】運転にも支障が出る五十肩の原因の解説、肩への負担を軽くするハンドルの握り方、簡単にできる予防・改善マッサージ法などを紹介。コンディショニング・トレーニング施設・ プライマリ メディカル サポートが監修。

腕が上がらない。背中がかゆいけど、かゆいところまで手が届かない、鞄を持ち上げようとすると肩に激痛が走る……。五十肩は日常生活がままならないほどツラい。

今回はクルマの運転にも支障が出る五十肩の原因と簡単にできる予防法を解説する。

肩こりと五十肩の原因は違うため自己判断は危険!

画像1: 肩こりと五十肩の原因は違うため自己判断は危険!

運転中にハンドルを切る、ルームミラーを調整しようと腕を上げたら痛みが走る。

こんなとき、「肩こりがひどいからしかたないか」と、その痛みに対処することなく過ごしている人は多いはずだ。

しかし、その症状の原因は肩こりではなく、五十肩である可能性が高いのだ。そして、ある日突然クルマの運転もままならないほどの痛みに襲われることに……。

「もともと肩こりがひどい人は、痛みの原因が肩こりの悪化によるものだと自己判断してしまいがちです。しかし、それがただの肩こりではなく、五十肩ということも多いですね」とは岡崎先生。

じつは、医学的には、肩こりと五十肩の原因は異なる。肩こりの大きな原因は「筋肉の疲労」。いっぽうの五十肩の原因は筋肉まわりで起きている「炎症」だ。

もちろん痛みの質も違う。経験者ならわかるだろうが、五十肩の痛みは、刺すような「激痛」といってもいいほどの強烈な痛みを感じることが多いのが特徴だ。

肩こりと五十肩の違いは?

画像2: 肩こりと五十肩の原因は違うため自己判断は危険!

肩こりがひどくなると、ピシッと刺すような痛みを感じることもある。その痛みは、五十肩の激痛に比べれば、それほどではないが、その「境目」はわかりにくい。

そのため、自己判断でただの肩こりと放置しておくと五十肩を悪化させることになりかねない。

五十肩の原因は肩まわりのオイル切れ

五十肩とは、肩の関節にある筋肉や腱、じん帯などの軟部組織が加齢によって炎症を起こした状態のこと。

具体的には、加齢により骨と筋肉の間に位置して動きをなめらかにする潤滑油のような役割を果たす滑液包(かつえきほう)や、関節の動きをなめらかにする役割を果たす関節包(かんせつほう)の機能が低下して骨と骨との間にある筋肉や腱などが強くこすれ合ってしまうことで炎症が起き、痛みが発生するという仕組み。

クルマにたとえると、エンジンやミッションなどの可動部に潤滑オイルが回っていないようなものだ。

ここまで読むと、加齢が原因であれば五十肩は防ぎようがない疾患と思うかもしれないが、そんなことはない。

普段からストレッチをしたり、マッサージをして肩まわりの筋肉の硬さをとって関節の動きをよくしておけば筋肉や腱の摩擦を最小限にでき、炎症の発生を抑制できる。

その結果、五十肩の発症を防ぐことができるのだ。

五十肩の原因は摩擦による炎症

画像: 五十肩の原因は肩まわりのオイル切れ

腕を上げ下げしたり、回すときに骨と骨との間にある筋肉や腱はこすれ合うが、動きがなめらかに保てていれば問題は発生しない。

しかし、滑液包や関節包の機能が衰えると過剰な摩擦が生じて炎症が起きてしまう。

ハンドルの握り方に要注意!

画像: これらの握り方は五十肩を誘発し、悪化させるリスク大。

これらの握り方は五十肩を誘発し、悪化させるリスク大。

ハンドルの握り方に問題があると肩には大きな負担がかかり、五十肩の発症リスクが高まる。特に上の写真のような握り方をしている人は要注意だ。

ひとつは、腕を突っ張るようにして両手でハンドルの上部を握るスタイル。もうひとつがハンドルの上の部分に片手だけを乗せるようにして握るスタイル。

こういった握り方がクセになると、肩から首すじに近い部分に余計な力が加わり続け、肩の炎症を誘発してしまう。

ハンドルは両手で、9時15分や10時10分あたりの位置で握ると肩への負担を軽くできる。

また、ハンドル位置が高すぎたり低すぎたりすると肩への負担が大きくなるため、運転前にはハンドル位置をしっかり調整しよう。

痛む部位だけでは効果薄! 肩まわりの筋肉全体をほぐす

五十肩に限らず、体全体についていえるのだが、筋肉をほぐすとき、「硬いところ、痛みがあるところだけをほぐしても意味がない」ということは知っておいてほしい。

体には多くの筋肉があり、それぞれが連携して動いている。だからこそ、硬くなった筋肉だけをほぐしても、そのまわりの筋肉をほぐさなければ効果が激減してしまうのだ。

五十肩の対策マッサージで注目するべきは、肩のまわりの筋肉である「鎖骨の下の筋肉」や、胸を覆う大きな筋肉である「大胸筋」。

これらの肩と連携する筋肉をマッサージして硬さをとることが必要となる。

画像: 痛む部位だけでは効果薄! 肩まわりの筋肉全体をほぐす

写真の鎖骨の下のある、三日月形の囲みの部分は鎖骨下筋(さこつかきん)。胸を覆う大胸筋(円の囲み)のほか、肩の動きに関連が深い「大胸筋鎖骨部(だいきょうきんさこつぶ)」(三角の囲み)なども、五十肩対策マッサージのターゲット。

肩がスッキリ、軽くなる! 五十肩予防・改善セルフマッサージ

ここからは、五十肩にすでに悩まされている人にも、予備軍の人にもおすすめのマッサージを解説する。

運転の前後や合間はもちろん、通勤中やデスクワーク中にも簡単にできるマッサージなので定期的に行ってほしい。

鎖骨下筋マッサージ

画像1: 左右各15秒。

左右各15秒。

鎖骨の下にある鎖骨下筋をゆるめるマッサージ。鎖骨下筋は小さいが肩の動きに関連しているため、柔軟性を保つことは重要だ。

鎖骨の下に中指と薬指を置き、小刻みに上下に動かしながら鎖骨の両端を往復するように鎖骨に沿って少しずつ動かしていく。

鎖骨の下にあるため、指を鎖骨の下に押し入れる感じで行うとうまくもみほぐせる。痛気持ちいいくらいの強さでもんでいこう。

大胸筋鎖骨部マッサージ

画像2: 左右各15秒。

左右各15秒。

次にポイントとなる大胸筋と、大胸筋につながる大胸筋鎖骨部の筋肉をほぐす。

鎖骨の首の付け根に人差し指から薬指までの3本の指を鎖骨の下に差し込むように立てる。

鎖骨に沿って首から肩方向に動かしながらもみほぐし、肩の付け根まで動かしたら、真下へ乳首より少し上くらいまでもみほぐし、弧を描くようにして鎖骨の首の付け根部分までもみほぐしていく。

肩と鎖骨の間は特に硬くなりやすい部位なので、しっかりほぐして柔軟性を確保しておきたい。

教えてくれたのは…プライマリ メディカル サポート

体に不調を抱える人に施術を行っているコンディショニング・トレーニング施設。今回、アドバイスをくれたのは、同施設の岡崎倫江先生と金子雅明先生だ。

彼らは、医学博士であり、筋肉と骨格の専門家、理学療法士(国家資格)でもある、“体の動きの”プロフェッショナルだ。

監修:プライマリ メディカル サポート 
写真:宮田幸司 
文:汽水丹治 
初出:カーネル2023年7月号vol.61

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