テキサスには主要都市がいくつかあり、それらはすべて州内の東寄りに集中している。そのひとつオースティンからの旅も、魅力あふれるものだった。
前号でも紹介したとおり、全米の住みたい街ランキングの上位に入るオースティンは、アメリカ大陸の東西を結ぶ「I-10フリーウェイ」(アメリカ本土の太平洋~大西洋を横断する高速道路)からは、北側に少し外れた場所。
美しい自然と品の良い住宅街が混在するこの街を歩いて、その人気の秘密が少しわかった気がした。
オースティンをあとにして、州道71号を使って南下、再びI-10フリーウェイで東に向かう。次の大きな街はヒューストンだ。
NASAのスペースセンターなどがあり、昔からロケットの管制などが行われてきた場所だから、皆さんも名前を聞いたことがあるだろう。
ここはI-10フリーウェイの東西のほぼ真ん中に位置する街で、エネルギー関連を中心に各種産業も栄えている。
洗練された都会ヒューストンは、オーガニック製品を扱うマーケットなども充実していて便利さが際立つ。
こういうときは、この先の旅を考えてちょっと気の利いた食料品も買い込んでおくのがいつものスタイル。そのため、クーラーボックスはドリンク用と分けて2個常備している。
また僕たちのロードトリップでは、毎日の宿泊先は移動中に探し、プライスを抑えるために大都市を少し外すのが常だけど、たまには都会にステイするのもよしと考え、ヒューストンでは街中のホテルを選んだ。
翌朝、まっすぐ南下し、メキシコ湾沿いに東西50kmもの長さがある細長いガルベストン・アイランドにちょこっと寄り道。
この周辺は海沿いのストリートをロングドライブで楽しむのもいい。さらに島の東の端から対岸までは、橋ではなくフェリーが用意されているので、それを利用する。
ローカルの人たちに交じって、20分弱のメキシコ湾クルーズを楽しむのも悪くないものだ。
カウボーイの町テキサスを出発しアメリカ南部の文化に触れる
この記事以降で紹介するルートはマップ上の赤いライン。この行程だけを駆け足で移動しても軽く1週間はかかっちゃう。
こうして見ると、アメリカ南東部の海岸にはたくさんの州がひしめき合っていることがわかるし、フロリダからはバハマやキューバがこんなに近い!
一瞬ワシントンDCか! と思ってしまうほどそっくりな四角い池とタワーがあるのはハーマンパーク。
野外音楽ホールや、植物園、子どもが乗れる蒸気機関車など、さまざまなアトラクションが園内に広がる。ヒューストン市民にとって重要なパブリックスペースだ。
ガルベストン・アイランドのヒストリック・プレジャー・ピア。
海の上に何百メートルも張り出す巨大な桟橋を建設して、その上にアミューズメントパークを造っちゃうんだから、アメリカ人は遊びの天才だ!
ガルベストン・アイランドから対岸のボリビアまでは、このフェリーで。約4kmの距離を18分で渡りきる。
フェリーはクルマ70台と500人の人を載せられる、けっこう大きなサイズだ。
スペースセンター・ヒューストンは、ジョンソン宇宙センターの見学やアポロ計画のサターンVロケットなど、アメリカのスペーステクノロジーのすべてがわかる興味深いミュージアム。ヒューストンに行くなら必見!
ホテルのブレックファーストでは、自分でワッフルを焼くこともできるのだが、地元愛が強いテキサスでは州の形に焼き上がるワッフルメーカーも用意されている。朝からテキサス・ローカル気分がアガる!
【CHECK!】ビーバーロゴのバッキーズはTEXASトリッパーの強い味方
数年前からアメリカ中南部に来たときに気になっていたロゴがあった。サークルの中にかわいいビーバーの顔が描かれたロゴで、BUC-EE’S(バッキーズ)という名前。
何だろうと立ち寄ったら、テキサスを中心に現在58ロケーションで展開する大きなショップを併設した巨大なGS(ガスステーション)で、特にI-10を走っているとたくさん見かける。
そこに一度立ち寄ってしまうと他のGSには行けないほど、内容が充実しているのだ。
とにかく巨大なその敷地にはガソリンポンプの数は少なくとも80基、多い場所だと120も備えるのだから半端じゃない。
もちろんEVチャージャーも豊富に設置されている。テスラのお膝元だけあり、スーパーチャージーを20基程度備える店舗も。
バッキーズは自らこの店舗をコンビニエンスストアと呼んでおり、店内の商品ラインアップの充実度はさすがのひと言。
ロードトリップに必要なものは何でもそろうし、かわいいバッキーズのロゴがふんだんにあしらわれたパーカーやTシャツ、水着まで用意されているから、テキサス住民にはバッキーズファンが急増中!
もちろんテキサスの郷土料理ともいえるBBQやバーガーなどのホットフードも充実していて、そのクオリティもなかなか。
なかでもすばらしいのが頻繁に清掃が行われ、常に清潔にキープされたレストルーム。そして、女性用も列ができないほど数は十分なのだ。
今日も多くのロードトリッパーで、バッキーズはにぎわっている。
写真、文:Yusuke Makino, June(カーネルUSAブランチ)
取材協力:ミシシッピ・リバー・カントリー
http://mrcusa.jp
初出:カーネル2023年7月号vol.61