「AirTag(エアタグ)」というアップルの紛失防止タグをご存じだろうか? 1個4980円、4個1万6980円で販売されており、iPhoneなどから位置情報をリアルタイムで追跡できる。
筆者は、2年前の発売時から1個をクルマに搭載して使っている。
もちろんクルマを頻繁に紛失するワケではないが、アポに遅れそうになって、見つかったコインパーキングにクルマを突っ込んで向かったようなときに、帰路に「あれ? クルマはどこに止めたっけ?」というようなことはある。
そんなときでも慌てずアップルの『探す』アプリを開けば、クルマの位置を確認できる。
仕組み上、立体駐車場などでは階数がわからないし、GPSもつかみづらいので利用は難しいが、広い高速道路のパーキングや、ディズニーランドのような平置きの広い駐車場では、便利に使うことができる。
アップルは『探す』というアプリにGPSを使って探す機能を集約しており、『人を探す』では登録した家族や友人を、『デバイスを探す』では所有して登録してあるMacやiPhoneなどのアップルデバイスを探すことができ、『持ち物を探す』では、登録したAirTagなどの位置情報を探すことができる。
まず、AirTagの仕組みを解説しておこう。じつはAirTag自体には人工衛星のGPS信号をキャッチする能力はない。
そんなことをしたら電力消費が大きくなり、すぐに電池がなくなってしまう。現状、AirTagはボタン電池で1年以上使用できる。
これほどわずかな電力で運用できるのは、AirTagがBluetoothという(マウスやイヤフォンなどの連携に使われる)微弱な電波のみで動作するからだ。
Bluetoothは一般に10mぐらいしか電波が届かない(仕様や、状況により異なる)。しかし、AirTagはそれを使って身近にあるiPhoneやMacなどを通じて、自らの位置情報を所有者に伝えることができるのだ。
もちろん、その通信は暗号化されており、経由したiPhoneの所有者も気づかないし、誰のiPhoneを経由したのかも知らされない。
また、通信量は位置情報データなどほんの微細なものなので、通信料に影響を与えるほどではない。
しかし、日本中、世界中にiPhoneのユーザーはいるので、それを経由して位置情報を常に探知できるというわけだ。
また、そもそも、自分のiPhoneが離れるときに、そのAirTagの位置情報を記録しているので、その時点で初期の位置は把握されている。
ストーキングなどに使われる危険があるので、自分が所有していないAirTagが自分と一緒に移動しているときには通知が来る。
なお、アップルは生物(ペットや子どもなど)に付けることを推奨していない。また、盗難対策としての利用もおすすめしない。
盗まれたものを取り返そうと行動するのは、時に危険なので、警察に任せよう。
電波の通りやすい場所に入れておこう
アポ先に急いでいるときに、あわてて止めた駐車場の位置がわからなくなることはないだろうか? AirTagを入れておけば心配ない。
グローブボックスの中に入れると電波が通りにくい。筆者はDeffのシリコーン素材ポケット型ケースでダッシュボード上に設置。
安価なEufy Security SmartTrackもおすすめ
AirTag互換のユーフィーセキュリティスマートトラック。タグ状のリンクは2990円、カード(バッテリー交換不可)は3990円。
AirTagもユーフィーセキュリティスマートトラックリンクもCR2032を使って、約1年の電池寿命。ただし、実際にはもっと持ちそう。
ユーフィーよりAirTagが優れているのは、U1チップによる超広帯域と『正確な場所を見つける』機能に対応し、室内でも探せる点。
貴重品やスーツケースにも入れておくといい
筆者は自分のクルマのほか、貴重品ポーチや、バッグ、スーツケース、財布などにAirTagや同互換品を入れている。非常に便利だ。
AirTagを飛行機の預け入れスーツケースに入れてみた。預け入れた自分のスーツケースがどこにあるのか、だいたいわかるので、安心できる。
もし、自分のではないAirTagが自分と一緒に移動していたら、通知が来る。ストーカーなどを防ぐためだ。ただしAndroidではわからない。
よく驚かれるが、筆者は家族とお互いに位置情報を共有しているので、お互いに家族がどこにいるのか常に把握できる。待ち合わせにも便利。
村上タクタ
WEBメディア『ThunderVolt』編集長。デジタル機器、特にiPhoneなどのスマホやタブレット、Macに詳しく、アップルがUSの新製品発表会に招待する数少ない日本人メディアのひとり。本誌編集長の元同僚だったりする。
写真、文:村上タクタ
初出:カーネル2023年7月号vol.61