何もない場所であってもアウトドアギアがあれば安心だ。それはレジャーばかりでなく、防災を考えたときも同じ。そのことに気づき、行動をスタートさせたのはCAMMOC合同代表の三沢真実さんだった。アウトドアギアを活かした新しい防災スタイルが見えてくる。
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「楽しいキャンプ」を防災にも役立てたい
アウトドアギアを使った防災を提唱する三沢真実さんは、「キャンプのある暮らし」をコンセプトにしたクリエイターズユニット「CAMMOC(キャンモック)」の共同代表でもある。
子どもの頃はガールスカウトに所属していたが、その後しばらくはアウトドアから離れていた時期もあった。そして、アウトドアの再開で、ライフスタイルが大きく変わっていったという。
そんな三沢さんが広めようとしているのが「SDGs防災キャンプ」。
以前は自身も防災意識は低く、非常時用の持ち出し袋を準備する程度だった。けれど昨今増えている自然災害を目の当たりにし、そして自分の地域にも危険が近づいてきたこともあり、行動を起こしたという。
「まずは、ライフラインがストップしたことを想定して、道具をそろえるところから始めました。
すると、いつも使っているキャンプ道具である程度、命をつなぐ生活ができそうであること。さらに消耗品などはあと何がどれぐらい必要かをスムーズにイメージすることができたんです。
その時にキャンプと防災の親和性を感じて、みんなに知ってほしいと思うようになりました」。
キャンプ道具が防災対策に活用できることに気がついた三沢さんだったが、行動を始めると、徐々に違和感を覚えるようになってきた。
それは、「防災」という言葉から導かれるイメージの違和感。防災と聞くと、日常から切り離された過酷な印象が強く、何をしたらいいか分からなかったのだ。
「私がこれまでキャンプをしながら集めたかわいい道具や覚えた知識は、楽しみながらそろえ、自然と身に付いていったものだったからです」。
そこで、「防災ってどうしたらいいか分からない」という人でも、キャンプを楽しみながら防災力が身に付く方法を探し始めるようになったという。
キャンモックではそんな思いを伝えるために、まずはフリーペーパーを発行した。そこには、これまでの防災イメージとは異なった、新しいアプローチが示され、ママ目線ともいえる内容がたくさん提案されている。
フリーペーパーで掲げられているのは「SDGs防災キャンプ」という言葉。
キャンモックが、「ファッショナブル」「エンジョイナブル」「サスティナブル」の3つを基本とした防災スタイルを表現するために作った造語だった。
この3つの言葉を説明すると、
・キャンプ道具をまじえた日常的に使いたいくなる防災アイテム選び=ファッショナブル。
・楽しみながらそろえたキャンプなどの遊び道具や知識を防災に活かすこと=エンジョイナブル。
・サスティナブルは、使わない日が来ないことを願って、そろえた防災用品を使用期限が過ぎたら捨てて買い換えるようなロスを減らし、普段から使い慣れているキャンプ道具を防災にも活用して無駄なく備えること。
しかし、キャンプ道具は防災用品ではない。防災用品をキャンプ用品だけで賄おうとするのではなく、キャンプをすることで防災に役立つことがたくさんあるということを知ってほしいというのが、三沢さんの思いだ。
その最初の一歩として、まずはキャンプを楽しんでほしいという。
「キャンプに行って、ライフラインなしで過ごすと、生きる知恵と自信がだんだんと身に付いてきます。そうしているうちに、生き延びるために必要な物や量を知ることができるのです。
こうした経験は、不安な気持ちから何かを買い集め続けることを回避できるだけでなく、余裕があるものは分け合うこともできるようになるのです」。
それは物質的なことだけでなく、人と人のつながりも生むという。
「そうすることで、自分自身だけではなく大切な人も守ることができるようになるのです。このように助け合うことができる循環を生み出すことがサスティナブルであり、SDGs防災キャンプの目指すところなのです」。
キャンモックでは今後もさまざまな活動を通して、SDGs防災キャンプの活動を行なっていくそうだ。
イベントなどで、その体験を提供して、子どもたちやいろいろな世代の人が防災に関心をもってほしい、と願っている。
三沢真実プロフィール
CAMMOC(キャンモック)共同代表。防災士。一児の母、 ひとりのクリエイターとして、息子との日々を愛おしみながら好きを仕事に活動中。「SDGs 防災キャンプ~キャンプをしながら無理なく無駄なく楽しく防災~」を提唱し、防災キャンプ講座や執筆、オリジナル商品開発などに力を入れる。
写真:渡辺圭史、中里慎一郎
文:渡辺圭史
協力:CAMMOC
初出:GARVY2022年10月号