【概要】運転と肩こりの関係、肩こり対策ストレッチを紹介。コンディショニング・トレーニング施設・ プライマリ メディカル サポートが監修。

日本人が抱える体の悩みのなかで上位にあがるのが肩こり。特に、運転中のひどい肩こりに悩まされている人は多いはずだ。

そこで今回は、運転と肩こりの関係と、肩こり改善効果抜群の対策ストレッチを解説していこう。

首や肩はボウリングの球を支えているようなもの!?

ひどい肩こりに悩まされている人の多くは、肩の筋肉だけではなく、首まわりの筋肉も硬くなっていることが多い。

肩や首まわりの筋肉は重い頭を支える役割をもっている。成人の頭の重さは約4~6kg。つまり、ボウリングの球を常に支えているようなものなのだ。

ボウリングの球!? そう言われると、いかに首や肩が酷使される部位であるかが理解できると思う。

そのため、立っていても座っていても、肩や首まわりの筋肉には想像以上に大きな負担がかかり続けている。

肩や首まわりの筋肉が解放されるのは寝た姿勢のときのみ。こういった仕組みから、肩こりに悩まされることは宿命と言っても過言ではないのだ。

特に運転で座り続けるなど、長時間にわたり同じ姿勢のままでいると負担はさらに大きくなり、筋肉はどんどん硬くなってしまう。

筋肉が硬くなると血流が悪くなり、さらに筋肉が硬くなるという悪循環を生み出すことに……。

その状態を放置しておくと悪化の一途をたどり、五十肩など、日常生活に支障が出るほどの症状に悩まされることになる。

画像: 首や肩はボウリングの球を支えているようなもの!?

どうして肩こりになるのか?

運転中は同じ姿勢で肩や首まわりの筋肉で頭を支え続けなくてはならない。さらに、肩にぶら下がるように付いている腕の重さも肩や首まわりの筋肉に負担をかける。

また、運転中は体の動きが小さいため、血行が悪くなって筋肉がより硬くなりやすくなる。

左右バランスの崩れが肩こりの元凶

金子先生いわく「基本的に体の左右、または前後のバランスが崩れている姿勢は、肩こりを誘発しやすいですね」。

特に、左右どちらかに体重をかけてしまうような左右のバランスが崩れた状態の運転姿勢が、肩こりの発生原因になるということだ。

左右アンバランスな姿勢でいると、人間は無意識に体をまっすぐに戻そうとする。

下のイラストのような姿勢の場合、傾いた頭をまっすぐにしようとハンドルを持っている側の首や肩まわりの筋肉が常に緊張している状態になり、硬くなる。その結果、肩こりが発生するのだ。

画像: 左右バランスの崩れが肩こりの元凶

NG運転ポジション

イラストのような姿勢で運転をすると、右のわき腹から背中にかけての筋肉が常に緊張して硬くなる。

するとそれにつながる周辺の筋肉も影響されて、肩こりにつながってしまう。さらに腰痛に見舞われることも。

背すじを伸ばす意識づけを

運転中にもっとも首や肩に負担がかかるのは、頭を前に突き出して、ハンドルを体にぐっと近づけるようにヒジを曲げる姿勢だ。

頭が前に出てしまうと肩・首まわりから背中にかけての筋肉には、さらなる負担がかかってしまう。 

ちなみに、背もたれに背中をつけて運転をしていれば背すじは伸びて、頭は前に出ないと思うかもしれない。

しかし実は、普段から背中が丸まっている、いわゆる猫背の人は背もたれに背中をつけていても、いつの間にか背中が丸まった状態になっていることが多い。

長時間にわたり運転をする場合は、30分に一回くらいの頻度でグッと背すじを伸ばすだけでも肩こりを予防することができる。

画像: 背すじを伸ばす意識づけを

背中を丸めて運転してない?

背中を丸めた姿勢になると頭の動きは不安定となり、首と肩まわりの筋肉には大きな負担がかかる。背中が丸まっていないかを定期的にチェックしよう。

肩こり改善ポイントは肩甲骨まわりと前鋸筋

岡崎先生によると、「肩・首まわり、肩甲骨まわりのほかに、わき腹から背中にかけての筋肉である前鋸筋(ぜんきょきん)(写真丸印のあたり)をほぐす」のが肩こり改善には効果的だという。

前鋸筋は、腕を回すような動きのときに働く筋肉。硬くなった肩・首まわりの筋肉の影響で、肩甲骨まわりの筋肉も硬くなる。

それにともない、肩甲骨と肋骨をつないでいる前鋸筋も硬くなる。肩甲骨まわりの筋肉と前鋸筋が硬くなれば腕も回しにくくなり、肩こりを悪化させてしまうことも。

こういった仕組みから、肩こりを改善するには、肩・首まわりだけをほぐすのだけではなく、周辺の筋肉も柔らかくして血流をアップする必要があるのだ。

画像: 肩こり改善ポイントは肩甲骨まわりと前鋸筋

前鋸筋は肋骨(ろっこつ)から肩甲骨につながる筋肉で肩甲骨の動きや、腕の動きに関係が深い。そのため肩こりへの影響が大きい筋肉といえる。

実践! 肩こり改善ストレッチ&マッサージ

ここで肩・首まわり、肩甲骨まわり、前鋸筋の硬さをやわらげるメニューを紹介。ストレッチとマッサージを合わせて行うことで高い肩こり改善効果が期待できる。

ストレッチ:肩~肩甲骨まわりを大きく動かす(5~10回)

肩から肩甲骨まわりの筋肉を、一気にほぐせるストレッチ。運転の合間や運転後に行うのがおすすめ。写真ではただの腕回しのように見えるかもしれないが、いくつかあるポイントを押さえたうえでトライしてみてほしい。

画像: ストレッチ:肩~肩甲骨まわりを大きく動かす(5~10回)

❶頭が真上に引っ張られているイメージで、背すじを伸ばして立ち、顔の前で腕を合わせる。手のひらは顔側に向ける。両ヒジがぴたりとくっついていることがポイント。この姿勢をつくると、ふたつの肩甲骨の間を開くことができるからだ。

❷次に手のひらを上に向けたまま、胸を大きく開くように意識しながら腕をゆっくり下ろしていく。この動きで、ふたつの肩甲骨の間が、今度は狭まっていく。

❸最後は体の横に両腕をつけて終了。呼吸は自然に。①~③を繰り返す。

マッサージ:前鋸筋をもみほぐす(5~10回)

画像: 脇の下の下あたりから背中にかけてのあたりをほぐす。小さな円を描くようにしてマッサージをしていく。

脇の下の下あたりから背中にかけてのあたりをほぐす。小さな円を描くようにしてマッサージをしていく。

わきの下の背中側にある前鋸筋をもみほぐすマッサージ。前鋸筋の正確な場所にこだわらずに、「だいたいこのあたり」と見当をつけてほぐせば問題ない。

ほぐす位置を、少しずつ変えながらやっているうちに、「あ、ここ気持ちいい……」という位置が見つかれば、そこを重点的にもみほぐしたい。

教えてくれたのは…プライマリ メディカル サポート

体に不調を抱える人に施術を行っているコンディショニング・トレーニング施設。今回、アドバイスをくれたのは、同施設の岡崎倫江先生と金子雅明先生だ。彼らは、医学博士であり、筋肉と骨格の専門家、理学療法士(国家資格)でもある、“体の動きの”プロフェッショナルだ。

文:汽水丹治 
写真:宮田幸司 
監修:プライマリ メディカル サポート 
初出:カーネル2023年3月号vol.59

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