理想的なアウトドア生活を楽しむために、山や土地を購入する人たちが注目を集めている。
そんななかで、さらに歩を進めて、理想的なキャンプを「楽しんでもらう」ために、自分たちでキャンプ場をつくり運営を行う「キャンパー」たちも増えてきている。
キャンプを楽しむ側から、楽しませる側へ。今回は、そんなキャンプ場運営に挑戦している猛者に話を聞いた。
旅好きな若者が運営するミニマムなキャンプ場
埼玉県は小川町。東京からクルマに乗って1時間半で着く近さと、ゴルフ場やハイキングコースなど、豊富な自然がある場所で知られている。
町内を走る東武東上線の小川町駅から2.5㎞の距離に、今回取材したキャンプ場がある。
「みんなが気軽に集まり、しっぽりと過ごせるキャンプ場を目指しています」。オガワプラムガーデンのオーナー・青沢タカユキさんのお言葉。
![画像: 「地に足のついた運営を心掛けています。キャンプ場で働いた経験がなくても十分できます」と笑顔の青沢さん。サイト数は増やしても、静かで落ち着いた施設にしたいそう。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/a05ffcceae146894f601bd8b478554baa7f005b4.jpg)
「地に足のついた運営を心掛けています。キャンプ場で働いた経験がなくても十分できます」と笑顔の青沢さん。サイト数は増やしても、静かで落ち着いた施設にしたいそう。
静岡県出身で大学時代は京都で過ごし、その後は冒険家として定期的に世界を巡っていた。そのなかで、日本で気軽に人が集まれる場を作りたいと思い、キャンプ場が浮かんだそうだ。
「2019年に、土地を買ってゼロからキャンプ場をつくろうと思い、都心から近い千葉で探しました。が、お金を借りようとしていた金融機関からOKが出なかったんです。お金はもちろん、実績もないからだと。そこで挫折しかけました」。
その後、移住イベントに偶然行ったところ、「キャンプ場をやってみては?」と協力的な地主さんと出会う。
「この地主さんは材木家具屋のオーナーであり、小川町では顔が広い方で、農地転用の手続きから資材の調達まで幅広くサポートしてくれました。周辺の方へのあいさつ回りもスムーズで、この方がいなければ、いまはなかったと言っても過言ではありませんね」。
途中でコロナ禍が起きたものの、運にも恵まれ、2021年1月にグランドオープンを果たす。価格はひとり1泊3000円で、中学生以下は半額、未就学児は無料。サイト数は6サイトだが、将来的には隣の土地まで拡張して10サイトまで広げたいとのこと。
取材の最後に、青沢さんにキャンプ場をオープンして感じたことを聞いてみた。
「お金を用意して買うのではなく、間借りやDIYで運営する方法があるのを学びました。固定概念にとらわれず、行動と人とのつながり、そして信念があればきっと開業できると思います」。
オガワプラムガーデンの魅力
住宅が近いのにとても静か
![画像: 住宅が近いのにとても静か](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/f5b2366fea5d539bd0f6ebad7c2a09310d10a20f_xlarge.jpg)
キャンプ場から橋を渡るとすぐに住宅地があるが、日中も夜もそこまで光と音は気にならないとのこと。
「リピーターの方からは、キャンプ場の中には街灯がなく、音もほぼないので、快眠できたと好評いただいています」。
間隔を広くとったゆったりサイト
![画像: 間隔を広くとったゆったりサイト](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/275e081c8fffc8a1240fa97cad431856801078b6_xlarge.jpg)
駐車場の数が限られているため、施設の広さのわりにはサイト数は6サイトと少ない。
「ファミリーの宿泊はほぼなく、ソロ、デュオなどの少人数での利用者が多いため、ゆったり使えるという点でちょうどいいと思います」。
どのサイトからも炊事場とトイレが近い
![画像: どのサイトからも炊事場とトイレが近い](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/81686775bba133d9166e65c7b91f1c7c8209ae49_xlarge.jpg)
トイレは女性専用が1棟、共用が1棟あり、炊事場はひとつのみ。見渡せるほどの敷地のため、トイレ、炊事場ともにどこからでもすぐに利用できる。「フリーサイトなので、皆さん好きな場所で過ごしています」。
青沢タカユキさんに聞いたキャンプ場づくりQ&A
【Q1】土地はどうやって見つけた?
【A】地主さんと知り合い、所有地を使うことになりました。
![画像: オープン前のサイトの状態。草が伸び、2日かけて刈った。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/7f883fcb90b5319a02b5ce98f49e24bc3ac325a7_xlarge.jpg)
オープン前のサイトの状態。草が伸び、2日かけて刈った。
キャンプ場を始めるには、とにかく土地が必要。青沢さんは、小川町の地主さんと知り合い、しばらく使われていなかったプラム果樹園を活用している。「今でもプラムの実がなるので、実がなったらお客様に配っています」。
![画像1: 【Q1】土地はどうやって見つけた?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/c289c0279693ef20c95574ca13f48eebd4be0e61_xlarge.jpg)
管理棟は、使われていない小屋を借り、整えて2022年に完成。外装の塗装や看板は自ら手がけた。橋を渡ってサイトへ行くため、荷物が多い人は隣の台車を使って向かう。
![画像2: 【Q1】土地はどうやって見つけた?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/070ed3575b2577fae3639acbdb30a34f28c3ff9b.jpg)
月に2回ほど行う草刈り。草が育つ夏は週に一度は行う。
【Q2】水、電気はどう解決した?
【A】水はジャグで、トイレはバイオトイレを採用しました。
なんと、電気、ガス、水道は利用しないため、ランニングコストはゼロ! 「トイレと炊事場の明かりは、バッテリー式のLED ライトを置いています。充電はソーラーパネルとポータブル電源でまかなっています。ガスは必要なく、水は近くの沢から汲み、朝イチにジャグに入れています」。
![画像1: 【Q2】水、電気はどう解決した?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/8d965b8c5b998bd82679d391a0492ae30ff55de8_xlarge.jpg)
友人にも手伝ってもらいDIYした炊事場。サイト数が少ないため、30リットルのジャグで水は十分まかなえる。近くのホームセンターで購入。
![画像2: 【Q2】水、電気はどう解決した?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/e4906ca361343cbf3480bcc1df2a9989de593a7c_xlarge.jpg)
管理棟では薪が購入でき、焚き火台のレンタルも行っている。「奥には自分が旅したときの道具を置いています。たまに利用者さんが気づいて質問されます」。
【Q3】一番大変だったことは?
【A】ゼロからトイレを製作することでしたね。
トイレは町内で活動する建築専攻の大学院生が製作。木材は地主さんから提供してもらい、ほかの材料は自分たちで用意した。
「つくり方はWEB サイトに載っているものを参考にしました。デザインは学生さんにお任せ。自分も手伝い、スタートから完成まで1カ月かかりました。バイオトイレは業者が汲み上げる必要がなく、半年に1回、自分たちで汲み上げ、畑の肥料にしています」。
![画像1: 【Q3】一番大変だったことは?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/817ef572ecdb1e3d14b5e8093ea82f1fd5c48b32_xlarge.jpg)
①学生3人と青沢さんと手分けして穴掘り。
![画像2: 【Q3】一番大変だったことは?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/ce2bf99786cba688a17653235f41ab46b36f0944_xlarge.jpg)
②コンクリート塀、骨組みを組んで土台が完成。
![画像3: 【Q3】一番大変だったことは?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/aff74da77acf92165713003ab394c00a36914717.jpg)
③人が通れるように、メジャーで細かくスペースをチェック。
![画像4: 【Q3】一番大変だったことは?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/ae2a251740572c0f472cf681f9bc2ea957592ac4.jpg)
④使った紙はゴミ箱へ、排便後はおがくずを入れる。
![画像5: 【Q3】一番大変だったことは?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/2080ddc64db70b98ab13d15a1441187760280d34_xlarge.jpg)
⑤完成した共用トイレ。建物の奥は壁をなくし、自然がじかに見られる。
![画像6: 【Q3】一番大変だったことは?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/ed8c3ad3414de4d9d6e9d4f8953ec8dc46e9b6db_xlarge.jpg)
⑥こちらは女性専用のトイレ。
【Q4】ほかのキャンプ場との違いは?
【A】都心から近い、農家さんの食材が買える、です!
「人気のキャンプ場はひと里離れた場所が多いので、準備、移動、気合いが必要で、疲れる人も多いと思います。我々の施設は都心から近いうえ、隣りには自然があるので気軽に利用できるのがいいと思います」と青沢さん。
管理棟から橋を渡ってすぐの場所に、地元の農家さんが定期的に農作物を置いて販売している。新鮮で旬な野菜が並び、おいしいと好評だそうだ。
![画像1: 【Q4】ほかのキャンプ場との違いは?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/2ea58236da48fd6b364ddbcd4a4a1bd7735faddb.jpg)
この日はカボスとサツマイモを販売。1袋100円で、隣の料金箱に入れればOK。「朝イチに並ぶので、朝食で利用してもらいたいです」。
![画像2: 【Q4】ほかのキャンプ場との違いは?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/e5397a7bbcd29e9c787cf5630661c72ee58263f2_xlarge.jpg)
直火サイトは2カ所。丸太のスツールを置き、早い者勝ちで利用できる。
![画像3: 【Q4】ほかのキャンプ場との違いは?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783346/rc/2023/01/09/f774f799d52dbbedb32fa7a468655a0aecf5a0f4.jpg)
管理棟の右上に飾られた世界地図。「夏季は休業して、毎年海外へ旅をします」。