火おこしから片付けまで、初めて自分で体験!
山歩きや車中泊をメインにアウトドアを楽しんできた本誌編集部員・オオハシ。そのため、焚き火は経験が少なく、たまにキャンプに行っても焚き火は人任せ。そんなオオハシが今回、男50を前にして初めて自ら焚き火を体験してみることに。
でもさすがにひとりは大変……。ということで、オオハシの面倒を見てもらうべく、急遽同行をお願いした先輩編集者のHさん。キャンプ経験ウン十年というキャリアをもち、今回も焚き火台と薪以外は、ほぼすべて準備してくれていた。Hさん、ありがとう!
Hさんの指導のもと、初めて自分で焚き火の流れを経験したオオハシ。自分でやったからこそ、その魅力はわかるというもの。しかし、さらなる疑問も湧いてきた……。ということで、いまさら聞けない焚き火の素朴な疑問をあえて聞いてみた!
「そもそもなんですが、焚き火の魅力って何?」
先輩編集者Hさん(以下、H):焚き火があると暖かいし、特に何もしなくても時間がつぶせるよね。子どもでも、ゲームとかなくても、ひたすら焚き火を燃やし続ける子もいるからね。
オオハシ(以下、オ):今回やってみて、ちょっと自分がレベルアップした感じはしました。
H:適当にやってもワイルドな気持ちになれるし、火がついたら「やってやったぜ」という気分になれる。あと、焚き火料理は、薪に火をつけるのに手間がかかっている分、無意識のうちに、よりおいしく感じているよね、きっと。
オ:意外に簡単に焚き火ができた印象なのですが……。
H:いやいや、まだまだ。焚き火は奥が深く、スタイルの幅も広い。ライターや着火剤を使わずに、修行のように焚き火を追求する人もいる。だんだん経験を重ねると、「寒い時はこうする」とか「こうやったら安定した焚き火ができる」とか、経験を重ねることで自分流が生まれてくるから。
オ:なにかひとつでも自分流のスタイルがあれば、語りたくなる人は多いですよね。だから焚き火好きは、いろいろと話してくれる人が多いのですか?
H:それはわからない(笑)。でも、軽く話を聞いただけで、「あくまで僕流なんだけど」と焚き火の説明をしてくれる人は、とても多いのは事実だよ。
オ:いま人気のヒロシさんも、焚き火好きですよね。
H:そう。ヒロシさんの著書『ヒロシのソロキャンプ』(学研プラス)でも書かれているけれど、太古の昔、洞窟で暮らしていた時代の話が出てくる。そこまで妄想力をかきたてるのも、焚き火の魅力なのかもね。
「なぜいま、こんなに焚き火ブームになっている?」
オ:昔からキャンプには焚き火がつきものだったと思うのですが、なぜ近年、こんなに焚き火がブームになっているのでしょうか?
H:海辺で焚き火することが多い寒川ハジメさん(UPIアドバイザー)は砂に突き刺しても詰まらないように、火吹き棒はなるべく太い穴。逆に、長野修平さんは、山での焚き火で火吹き棒を地面に突き刺さないから、直径はなるべく細く……。というように、キャンプ自体もそうだけれど、自分流のスタイルを一般キャンパーもSNSで発信できるようになった。それが、特にソロの人たちから支持されている、ということはあるよね。SNS、すごい!
オ:さきほど話に出てきた「自分流」ですね。焚き火は特に自由にできる。
H:ソロの人たちは、それぞれに焚き火台を持っていて、それぞれが自分の流儀で「オレ流焚き火」として、俺のこだわりを表現できるのがいいのかも。たとえば同じ焚き火台でも薪の組み方はそれぞれ微妙に違う。それと、焚き火って料理にも使えるし、見ているだけで落ち着く、という人も多いよね。
オ:今後もこのブームは続く?
H:まだ続くと思う。ただ、90年代のキャンプでは花火が問題になった。今度は焚き火が問題にならないといいよなー、と思ってしまう。
「なぜ直火NGのキャンプ場とOKのキャンプ場がある?」
オ:地球に与える影響は、どこの場所でも同じに思えるのですが、なぜ直火がNGとOKのキャンプ場がある?
H:直火の後片づけをちゃんとしない人が多いこと。それが最も大きな理由。ゴミを燃やして、その燃え残りを放置している人が多い。次に泊まる人が、その様子を見てしまうと、やっぱり気分が悪い。真っ黒になった石を汚いという人も多いよね。つまり、ほかのキャンパーのことを考えて「直火は禁止」にしているキャンプ場が多いと思うよ。
オ:え、環境問題ではないんですか?
H:もちろん、それもある。というか90年代のキャンプブームのときは、環境問題も最高潮だった。東南アジアの焼き畑問題の報道もあって、直火をすれば地面の微生物が死滅する! といわれるようになったことも一因。
いまでも直火を許可しているキャンプ場であっても、直火の写真を掲載すると「直火なんかして!」とお叱りを受けるし。
オ:環境問題とともに、マナー問題が「直火禁止」を加速させたんですか?
H:直火跡を埋めるのはいいけれど、危険なゴミを埋める人もいたみたい。それに、どんなに注意していても火災の危険はゼロにはならない。焚き火台と違って小さな火種に気づかずに帰宅してしまうこともあるので、キャンプ場としては、そういった事故回避もあるんじゃないかなぁ。
「焚き火をもっと楽しむには、どうしたらいい?」
オ:雑誌やSNS、YouTubeで、焚き火情報をもっと集めたほうがいいですか?
H:いろいろなメディアで紹介されているハウツーがあるけれど、それぞれ超ベーシックなものが多い。今号のガルヴィは、応用できるノウハウや情報が多く掲載されているのは確か。でも、気温や薪の状態とか、環境次第で全然火がつかないこともある。だから、記事を参考にしつつ、やっぱり実践が一番でしょ!
オ:いろいろキャンプに行って、焚き火を楽しむことが重要!?
H:そう。うまいことできたなーって思ったときの状況をうっすら覚えておく。うまくできないときは「きっとあれが違うから」といいわけを考えて、それを覚えていればいい。次の焚き火でうまくいけば「ほらね」って威張ればいい(笑)。生活の一部ではなくて、しょせん遊びだからね。
「焚き火でビギナーが注意することは?」
オ:今回、焚き火を体験した感想。何もこだわらなければ、意外に簡単にできたなぁという印象です。特別な注意点とかはありますか?
H:ケガに気をつけて、キャンプ場のルールを守ればいい。風が強くなったら消火する、燃料缶やライター、乾電池を投げ入れない……。常識的なことばかりかな。焚き火に近すぎる場所にものを置かないとかも。
あと焚き火台の組み立てはしっかりとね。組み立てがあまいと、ちょっと動かそうとしただけで、大変なことになるので。
オ:「焚き火に強い」といわれている素材もたくさんありますよね?
H:かつてアラミド繊維が熱に強いっていわれていたこともある。けれども、「このジャケットは燃えないんだぜ」と、ライターを袖に近づけて、新品のフライトジャケットを炭化させた少年が、各地にいた。
つまり、難燃素材のウエアやファニチャーも、すぐに燃え広がらないだけで焦げる。コットンのテントだって、焚き火に強いのは確かだけれど、燃えるときは燃える。だから、やはり基本は注意すること。慢心しないで、常に気をつけましょう!
オ:ありがとうございました!
出典:GARVY 2019年12月号
編集制作:カーネル株式会社