DIYや快適アイデアで、クルマ旅を楽しむ「車中泊の達人」を紹介する企画。今回は本格的なログハウス技法を取り入れ、機能的でおしゃれな内外装に仕上げた軽トラキャンパーを紹介。オリジナリティあふれるこだわりの一台は必見です! 車中泊専門誌『カーネル』掲載の記事からピックアップしています。

ログハウスの建築手法を取り入れた自作軽トラキャンパーの匠

画像: ログハウスの建築手法を取り入れた自作軽トラキャンパーの匠

車中泊の達人 木内 良さん

ログハウスビルダー。秋田に工房を構え、木工細工など、幅広い活動をしている。軽トラキャンパーに本格的なログハウスの技法を取り入れ、オリジナリティのあるモデルを製作。2018年TVチャンピオンの「軽トラ王」を獲得。

愛車:三菱 ミニキャブ トラック

画像1: 愛車:三菱 ミニキャブ トラック

約2×1.4mの荷台に載せられたログキャビン。荷台後方のアオリ板を開いた状態で積載し、しっかりと固定されている。運転席上部のスペースにキャビンを張り出さないボクシーなスタイル。リアにコンビネーションランプを増設している。

軽トラックの荷台にピタリと収まるログキャビン。シンプルでありながら、どこかかわらしさが漂う佇まいだ。グリーンにペイントされたウッドウォールに白い屋根。そのまま、森のなかに建てられているかのような完成度の高さが目を引く。

その姿は本物のログハウスのようだが、それもそのはず、このトラキャン(トラックキャンパー)は、ログハウスビルダーとして活躍してきたオーナー・木内良さんによって製作されたもの。しかも、テレビ番組の企画で1週間という限られた時間内で、1からつくりあげられたという。

画像2: 愛車:三菱 ミニキャブ トラック

製作時間は制限されていたが、プロとしての譲れないポイントがあった。それは安全性と実用性、そして木へのこだわりだ。木材はスギで統一され、室内は心地よい木の香りに包み込まれている。そして、キャビン構造はログハウスと同じつくり。

45㎜厚のスギの壁板を積み上げ、特製の屋根材を載せている。スギ板の厚みで断熱効果も高く、適度に湿度がコントロールされることで快適空間が生まれる。もちろん、屋根とフロアには断熱材のスタイロフォームが張られ、熱を遮断している。
 
安全性では軽トラの最大積載量350kgを超えることがないように、材料を選び、加工することで軽量化を実現。加工には精密な木材のカットができるNCルーターを使っているので、自身の思いどおりの形をつくり出せるという強みもある。

ログハウスと同じ組み方を採用することで、キャビン自体の剛性も強化。風などで軀体が崩れることはないという。見た目だけでなく、その性能も高品質なのだ。
 
次の車両アイデアもいろいろと考えているという木内さん。みんなが驚くようなクルマをつくりたいと意気込む。きっと、こだわりがたくさん盛り込まれた1台ができるだろう。

外観 グリーンが美しいタイニースタイル

画像: 外観 グリーンが美しいタイニースタイル

テレビ番組では期間1週間と製作費200,000円という条件下で製作。そのため、あまり手を加えられなかったが、収録後、バージョンアップして現在の姿に変化を遂げた。

大きく変えたのは、無垢の木材だった外壁にグリーンの塗装を施したこと。そのままの状態でもよかったが、雨の影響などを考えて、塗装を決めたという。

ログハウスらしい組み方が見えていた角部分にカバーを取り付け、全体的にフォルムが締まった印象になった。ログのスタイルが強調され、美しいグリーンのなかでアクセントとなっている。

サイドに取り付けられた窓はアルミサッシを採用しているが、色違いの木枠をとりつけ、かわいらしさを演出している。

地上高660㎜のエントランス空間

画像: 地上高660㎜のエントランス空間

リアにエントランスを構えるオーソドックスなスタイルだが、そのデザインはログキャビンテイストがあふれている。

衛星アンテナが設置され、その横にはソーラーパネルで充電するエントランス用のポーチライトまで装備。ドア枠はアルミ製の規格製品をオーダーサイズでつくり、木製のパネルをはめ込んだオリジナルアイテム。

寒さ対策のためにFFヒーターを追加

画像1: 寒さ対策のためにFFヒーターを追加
画像2: 寒さ対策のためにFFヒーターを追加

マイナスの外気温でも快適に過ごすために、車用のFFヒーターを設置している。ヒーターユニットはシンク下に設置。

載せ降ろしするキャビンだけに、マフラーの位置に悩んだが、リアサイドに設置し、ガードを取り付けた。吸気はマフラーから少し上に設置し、雨の浸入を防ぐために、一般建材の換気口のふたでカバーしている。

職人らしさを 感じる細部のつくり

画像1: 職人らしさを 感じる細部のつくり
画像2: 職人らしさを 感じる細部のつくり
画像3: 職人らしさを 感じる細部のつくり

ひとつひとつが、ていねいにつくりこまれた外観のディテール。上からエントランスへ上がるデッキ、換気扇の外側カバー、ポーチライト&BSアンテナ。

画像4: 職人らしさを 感じる細部のつくり

ドアに取り付けられた六角形の小窓。窓ガラスは、古いガラスを使ってレトロ感を出している。

内装 シンプルな空間に使いやすさを追求

画像: 全長2,000mmを確保した室内はスギで統一。窓はひとつだが、大きく開口できるので明るい。カウンターテーブルは板をつなぎ合わせている。

全長2,000mmを確保した室内はスギで統一。窓はひとつだが、大きく開口できるので明るい。カウンターテーブルは板をつなぎ合わせている。

室内は床から天井まで木材で覆われ、スギの木目がテキスタイルとしても美しさを放つ。カウンターとベッド、吊り下げ棚だけを設置したレイアウト。十分な収納スペースがあるので、シンプルであっても使いやすいキャビン構成になっている。

床下と天井裏には、断熱材のスタイロフォームが敷き詰められている。側壁には断熱材が入っていないが、木材本来の機能で断熱効果は高い。ディテールの加工や仕上げ、すき間のない組み上げなど、「さすがプロ」といえる完成度が目を引く。

収納スペースと安全を確保

画像1: 収納スペースと安全を確保
画像2: 収納スペースと安全を確保

収納スペースは吊り下げ棚部分とベッド下にある。さっと手を伸ばして取り出したいアイテムは吊り下げ棚に。食材や寝具など、保管しておくものはベッド下に収納している。ベッド下のスペースは深さがあり、見た目以上に広い。

画像3: 収納スペースと安全を確保

玄関脇には消火器と一酸化炭素センサーを設置。室内で火を使うこともあるので、準備しておきたいアイテムだ。

アイデア満載のキッチン

画像1: アイデア満載のキッチン

シンプルにまとめられているキッチンまわり。コンロはカセットガスタイプで、使用しないときはカンターの下に収納できるようになっている。コンロの上部には住宅用の換気扇も装着。

画像2: アイデア満載のキッチン

水まわりは水タンクとキッチンボウルを加工した自作シンクを設置。

電気とテレビは絶対に必要なアイテム!

画像1: 電気とテレビは絶対に必要なアイテム!
画像2: 電気とテレビは絶対に必要なアイテム!

車中泊でも快適性を求めた木内さん。この「のんびり」と過ごせる時間が心地いい。

テレビは必須アイテムで、フィルムアンテナを置いているだけだが、意外ときれいに映るという。

画像3: 電気とテレビは絶対に必要なアイテム!
画像4: 電気とテレビは絶対に必要なアイテム!

車を替えても使える大容量のポータブル電源(写真上)。下の写真はFFヒーターのコントローラー。コンパクトだが、暑いぐらいのパワーで、真冬でも快適。

車中泊の夜は、ポカポカの室内で郷土料理を作る!

画像: 車中泊の夜は、ポカポカの室内で郷土料理を作る!

取材時の夜は冷え込み、FFヒーターを点火。すぐに室内は暖かくなり、上着を脱がなければならないほどだった。

地元・秋田県の郷土料理、きりたんぽを調理することになり、カウンターに食材を広げ、手際よく作業していく木内さん。必要なモノを棚から取り出しながら、スペースを有効に活用。使い慣れた感じが伝わってくる。

ベッドとカウンターは同じ長さ。ベッドがベンチシートのように利用できる高さで、そのサイズ感はプロの仕事を意識させる。

暖かさがあふれる軽トラキャビン

画像1: 暖かさがあふれる軽トラキャビン
画像2: 暖かさがあふれる軽トラキャビン

キャビンからあふれる明かりと、デッキ部分を照らすポーチライトが軽トラの影を薄めて、山小屋のような雰囲気を醸し出している。外気温が氷点下であっても、FFヒーターで暖められた室内では、おいしい料理を食べてながらくつろげる。その充足感を得られるのはオーナーだけの特権だ。

写真・文:渡辺圭史
出典:カーネル vol.43 2019秋号

 

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