アリとおかあさん、ついに日本一周の旅へ出発!
感染症が猛威を奮うこの時勢のなか、リモートワークの推奨もあり、在宅でお仕事ができるようになった方も多いことでしょう。
生活スタイルに合わせて時間を有効に使うことができる在宅ワークは、外出の難しい状況ではもちろん、子育て中のママなどにとっては、とてもありがたいことと、前向きに考えることが大切かも。
アリが産まれた2013年から自営業に転向した“おかあさん”こと私は、産まれたてホヤホヤのアリを抱え、仕事をし続けてきた。
本来、決まった時間に出勤する必要のない働き方は、可能性を広げるありがたいカタチ。けれど、気持ちの切り替えが苦手な私にとっては、ダラダラと仕事を続ける非効率の温床のような毎日でもあった。
アリには、おかあさんが振り向いてくれないことへのストレスが溜まり、おかあさんには、アリに向き合えない自分への嫌悪感と、仕事がはかどらないことへのストレスが溜まり続けていった。
もう限界かも……そう思った2018年夏(アリは4歳になったばかり)。おかあさんは思いきって、親子ふたりで日本一周の旅に出ることにした(思いきり過ぎ? 笑)
なぜ日本一周なのか?
どんなに子どもが喜んだとしても、自分自身が心から楽しめることじゃないと、脳内仕事モードをストップすることができず、上の空になってしまうおかあさん。
脳内モードを切り替えるためには近所の公園じゃ足りないし、例えば自分はまったく興味のないヒーローショーなんかに連れていくことは、選択肢に挙げることもできないキャパの狭いおかあさん。
「アリもおかあさんも楽しい真ん中」
そう考えたときに出た答えはひとつ。それはやっぱり「キャンプ」だった。アリがどれだけキャンプが好きかは正直わからないけど、キャンプならふたりで楽しい時間を作りあげることができると思えた。
1日行くだけだってリフレッシュできるけど、もっとワクワクしたくて、もっとふたりの思い出を作りたくて、それなら……日本一周しちゃう? という想いが浮上してしまったのだ(笑)。
一気に日本一周するほどの休みを取ることはできないから、可能な期間を決めて、断続的に全都道府県の走破を目指してみる。
目的は「アリとおかあさんの時間を楽しむ」こと。
ふたりで力を合わせてコマを進めるゲーム感覚で、「無理して完璧を目指さない! 無理だと思ったらやめる!」というスローガンを掲げて。
1回目の日本一周旅は3週間。11地域へ!
さてさてずいぶんと前置きが長くなってしまったけれど、今回は日本一周旅1回目での車中泊のお話。1回目の日本一周旅は2018年8月。約3週間かけて11の地域をめぐる。
めぐった地域
埼玉県~栃木県~福島県~宮城県~岩手県~青森県~北海道~秋田県~山形県~新潟県~群馬県
多いときで年間40泊近くキャンプをする私たち。仕事で1週間ぐらいの連泊をすることもあるから、3週間の今回の旅に対してもとくに心配ごとはなく、荷物も大して吟味せず、いつものものをポンポーンと積み込む。どのルートを走り、いつどこに泊まるかなどもほぼ決めずに出発した。
この旅の移動手段は、愛車の軽バン「エブリイさん」。宿泊方法は、基本的には「キャンプ」。でも、「旅程のなかでキャンプよりも都合がいい場合は『車中泊』も取り入れたい」。そんな感じでザックリとイメージ(でたでた……笑)。
その結果、当然のように不自由なこと、苦労したことはたくさんあった。
そして車中泊にフォーカスすると、この3週間の旅のなかで車中泊をしたのは1回だけ。それは、毎日キャンプしたかったから? いえいえ、またしても準備が安易で、車中泊がしたくてもできなかったから(涙)。車中泊経験は過去2回。冬の車中泊を経て、この旅で3回目となる。
日本一周旅の途中で
2018年8月某日。アリとおかあさんは青森県にいた。次はカーフェリーに乗って、北海道へ渡ろうとしていただが、ここでも詰めが甘く……。
北海道に渡る(つもりだった)前日、フェリーの予約を取ろうとしたら、数日先まで予約がいっぱいだということを知った……あちゃあ……。
細かな旅程は決めていないが、数日間、青森に留まっていてはさすがにその後が厳しい。キャンセル待ちもできるということで、一か八かで港へ向かう。と、その日の夜の便に空きが出たとのことで、なんと予定よりも1日早く、フェリーに乗ることができてしまった♪
日付をまたいだ深夜に北海道の苫小牧に到着。仮眠をとりながら早朝に帯広まで行くことを目指した。なぜかというとこの日、帯広で花火大会があるので、花火の見える公園近くの駐車場に車を止めたかったから。
無事に到着したその駐車場は、前日から車中泊をしていたのだろうか、シェードを張った車やキャンピングカーも数台止まっていた。
するとそこへ、ひと目で車中泊仕様とわかるようなカスタム軽自動車がエブリイさんの2台隣に駐車。その車から出てたきたおじさまとなんとなく目が合い、お互いにあいさつ。そして少しおしゃべり。私は青森から深夜のフェリーで北海道へ渡り、朝に帯広に着いたこと、それからこれまでの旅の話などもした。
会社を定年退職したあと気ままに車中泊を楽しんでいるというそのおじさまは、北海道のおすすめ車中泊スポットや、温泉などをたくさん教えてくださり、とても参考になった(実際その後、そのおすすめの場所にも行ってみた)。
友だちの両親がキャンピングカーで旅をしているのだが、車中泊地でほかの車中泊者と仲よくなることがある、なんて話も聞いていたので、あ〜こういう感じか〜と車中泊ならではの楽しみを味わった感じがして、ちょっとうれしくもなった。
しかし、おじさまとそんな話を続けているうちに、なんだかおかしいことに気がついた。
……?
どうやら花火大会は今日ではなく明日のようだ! おじさまと別れ、そそくさと花火大会の日程を調べると……やっぱり花火大会は明日だった……。
なんてこったー‼ 思いがけず青森からフェリーに1日早く乗れたので、そこで日付がズレたこと、頭から抜け落ちていた……。
それにしても、あのおじさまとお話できて本当によかった。そうじゃなかったら、きっとだいぶあとまで気づくことはなかっただろう(夕方まで人が少なくても初めての場所なので、こんなものなのかな……と思ってしまったに違いない)。
そうとなったら開き直って、今日を楽しもう(笑)。
駐車場にまだ余裕があったので、エブリイさんをそのままそこに止めさせてもらい、バスで帯広市内へ向かってみた。街中ではお祭りをやっていたので露店で遊び、それから先ほどのおじさまに教えてもらった駅前の温泉へ行き、思いがけず楽しい時間になった。
そして夕方、エブリイさんの待つ駐車場に戻ると車はだいぶ増えていて、車中泊の準備をしている車も多かった。
狭い! 暑い! 車中泊の課題に直面⁉
それではアリとおかあさんもいざ車中泊! と準備を始めるも……。まず、アイズの優秀シェードを積み忘れていたのだ。でもこのことは来る途中に気がついていたので、さっき街に出たときに、洗濯バサミを購入したのだ。持参していた大きなブルーシートを洗濯バサミで吊り下げて、目隠しにしてセーフ⁉
このシェード忘れは、お話にならないおかあさんの凡ミス。しかしここから新たな2つの課題が、今回立ちはだかった(よく考えれば当然だったけど)。
課題① 狭い!
わが家のエブリイさんは、惚れ惚れするほどの積載量! とはいえ軽自動車である。テント、タープ、クーラーボックス、焚き火道具、ラック、イス、テーブル、キャリーワゴンなどのキャンプ道具に加えて、食材や着替え、アリの遊び道具など、車の荷室は荷物でいっぱいだ。
こんな状況なのに、なんとか車中泊できるんじゃない? って思っていたおかあさん……。ゴメンなさい、なんとかなるハズなかったよ(涙)。
そこでまず、雨の予報はないけれど、万が一濡れても大丈夫な木製テーブルやラックをルーフキャリアの上に載せてみる。
それでも依然として車内は荷物でいっぱいだが、必死に車内の壁沿いに荷物を積み上げ、なんとかふたりが横になれるスペースを確保! とにかく夜中に荷崩れしないことを願いながら、このフォーメーションで眠ることにした。
課題② 暑い!
今回の旅は2018年8月。記録的猛暑の夏のことである。
しかし、外ではハイエナのように蚊が飛びまわり、窓を少しでも開けて寝たら大変なことに……。ピタリと窓を閉めきった車内で、修行のような暑さに耐えて過ごす一晩となった。
旅はやっぱり、めぐり合わせでできている
(vol.2 2度目の車中泊は雪の中「めぐり合わせの魔法」もぜひお読みください)
劣悪環境のエブリイさんで眠り、無事に朝を迎えたアリとおかあさん。今日はいよいよ花火大会当日。公園に移動して、シートを敷いて準備は万端。
そしてこの日、自転車で東京から北海道まで旅をしてきた友だちのhiroと合流することになった! 同じ時期に北海道を旅するなら、どこかで会えたらいいね♪ と話していて、とくに約束はしていなかったのだけど、こんなスペシャルなタイミングで会うことができるなんて! 一緒に花火を見ようと、北海道に住むhiroの友人もきてくれたので、うれしさ倍増!
花火が始まるまでご飯を食べたりのんびりしていたら、心地よい空気の流れるその顔ぶれに、旅の緊張や疲れもすっかり癒された。
そんな私たちのシートのお隣は、かわいい姉妹がいるファミリー。どんなきっかけで話をしたかなんて忘れてしまったけど、それぐらい自然に大人も子どもも、あっというまに仲よくなった。
それから、私たちはもうずっと前からここで会うことを約束していたかのように、みんなで並んで花火を見た。
お隣ファミリーもhiroの友だちも近隣地域の方。花火が終わると、みんなはそれぞれの帰路に着く。
旅する私たちが苦手な別れのこのとき。だけど、また北海道に来たら連絡してね! また遊ぼうね! と繋がり合う喜びでなんだか心は高揚してる。これは花火の余韻のおかげかな。
あかりを灯していた人たちが次々帰るとあたりはもう真っ暗で、みんなの顔もぼやけぎみ。アリは楽しい気持ちのままで夢のなかへと入っていった。
この日からhiroの自転車をエブリイさんに積んで、しばし3人で北海道を旅することに。花火大会のあと、hiroがテント泊できる少し先のキャンプ場を目指して私たちは出発した。
それからhiroとは6日間、一緒に旅を楽しんで、それからまた私たちはそれぞれの旅を続けた。
親戚の家に泊めてもらったり、乗せたヒッチハイカーと一緒にキャンプしたり、キャンプ場では隣のサイトのママと、子どもたちが寝静まったあとに焚き火の前で語り合ったり、たくさんの人と貴重な時間を共有した。
ここにひと言で書くなんて不可能なほど。ほんとうにたくさん。
この旅に出る目的は「アリとおかあさんの時間を楽しむ」ことだったけれど、楽しい時間はいつも誰かとともに訪れた。家でふたりでモヤモヤしていたら、知ることのなかった感動を出会いのなかで教えてもらった。
初めての親子ふたりの長期旅は反省点もたくさんで、なかでも一番苦労したのは「移動時間の過ごし方」だった。4歳になったばかりのアリは、まだ「長い会話を楽しむ」ということが難しかった。
ドラえもんの登場人物になりきって話したり、しりとりをしたり、歌を歌ったり。それでも毎日毎日何時間も車に乗り続けていたら、飽き飽きしてしまう。
けれどアリが移動時間を楽しむための策は考えていなかったので、後半は「もう車に乗りたくない」と言うようになってしまった(だから車の中でアリと一緒に遊んでくれたヒッチハイカーたちや、hiroの存在は本当にありがたかった)
ひとりじゃ作れない、ふたりでも力不足。日本中、世界中の人々と繋がり合うことで生まれる豊かさを、旅が私に教えてくれた。
すっかり旅の虜になったおかあさんは「行き詰まった時には割りきって休んだほうが未来への栄養になる!」と勝手な持論を振りかざし、その後も旅を続けている。
今はお出かけもできない時勢が続くので、おかあさんは逆に割りきって今のうちにデスクワークに打ち込めちゃう。「雨の日は“仕事がはかどる日和”である!」。
この雨が晴れたら世界は旅日和、繋がりあってみんなで元気を広げよう!
車中泊考察。今回の“よく考えれば当然だった”課題と改善策
その① 狭さ対策
※軽バンでも以下の場合はそれほど悩むことはありません
・車中泊するのが1名である
・キャンプ道具がそんなに多くない
・2列目シートは使用しない→荷室をしっかりカスタムして、ベッドとその下の収納スペースがある
わが家は、
・子どもといえども寝袋ふたつ分のスペースは必須
・キャンプ道具もある程度持っていきたい
・旅の途中、車に3人以上乗ることもあるので2列目シートは出せるようにしておきたい。
●対策1
テントなどの大きな荷物以外は、ルーフキャリアの上に載せることを前提として、複数のボックスに分けて管理。移動中は荷室に入れておいてOK。車中泊での就寝時にそのままルーフキャリアに載せる。(重くなるとルーフに載せるのが大変なので、重さの比重を考えて収納)
●対策2
就寝時は荷室に収まるサイズのローコットを使う。ポールなど細長いものはローコットの下に収納する。
●対策3
ルーフキャリアの上に置けない&ローコットの下にも入らないもの(例えばクーラーボックスなど)は、助手席に置くようにする。そのため助手席のスペースにあったサイズのものを使用する。
その② 暑さ対策
●対策1
窓に網戸を装着する(車種にピッタリ対応するもの、どんな窓にも使える簡易的なものなど、いろいろなタイプのものが販売されている。自作している人も!)
●対策2
モバイルバッテリーとサーキュレーターを使って、車内の空気を換気する。
●対策3
断熱材を入れる(これはカスタムが必要。軽バンには断熱材が入っておらず、夏の熱や冬の寒さの影響をダイレクトに受けてしまいまうため、とても効果的)
詳しくは、次回以降の連載で写真付きで解説していきます。
次回はいよいよ、エブリイさんをカスタムするお話です。お楽しみに!
連載「アリとおかあさんの車旅」vol.1とvol.2は下記から!
著者プロフィール 三沢真実(みさわまみ)
クリエーターズユニットCAMMOC(キャンモック)にて「キャンプのある暮らし」をテーマに、情報発信、キャンプコーディネート、イベント企画、などを⾏うクリエイティブデザイナー。現在6歳の息⼦と2⼈で⽇本⼀周車中泊&キャンプ旅の途中。
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