【概要】夏の車中泊に役立つグッズと基本的な知識を紹介。

夏は暑い! 特に最近の夏はよりいっそう暑さが増している。クルマで寝る車中泊にとって、とても過酷なシーズンであることはまちがいない。

では、夏をあきらめる? せっかく長い期間休みが取れるチャンスなのに?

そんな悩める車中泊トラベラーの皆さん! いま一度、夏に役立つアイテムと車中泊で暑さをしのぐための基本的な知識を復習しよう!

■STEP1

網戸

人気ブランドからDIYまで夏の車中泊には必須アイテム

車中泊の暑さ対策で、多くの人が持っているのがクルマ用の網戸。車内のこもった熱を外に出し、外から空気を入れて循環させるだけで、車内の体感温度は大きく変わるからだ。

最近では、汎用性の高い量販品も数多く販売されており、DIYで製作する人も多数。しかし、おすすめはやはり、アイズ・ウィンドーバグネットといった車両専用アイテム。取り付け精度の高さが大きなポイントだ。

【ポイント】
・窓を開けても虫が入ってこない
・1カ所だけではなく数カ所で使用したい
・サーキュレーターや扇風機との併用が効果大

ドア固定アイテム

リアゲートがある車種ならぜひとも装着したい

リアゲートなどに装着して、扉を半開き(もしくは任意の位置)にできるアイテム。外の空気を車内に取り入れる際に威力を発揮する。できれば、上で紹介している網戸と併用すると虫などに困ることも少ない。

こちらも網戸同様に、汎用性の高い量販品やDIYのオリジナルまで、使用する人によってさまざまだが、しっかりしたメーカーの専用品なら、段階ごとに開きを調節できるなどの機能がある。

【ポイント】
・リアゲートが開いているだけで意外に風は通る
・不安定なものだとドアに挟まったりして危険
・市販品の精度や機能の高さは、使ってみてわかる

シェード

日中の駐車時に装着して日差しを遮る

夏対策とともに車中泊の必須アイテムともいえるシェード。目隠しがあるだけで、安心して寝られるので必ず常備しておきたい。

しかし夏においては、夜の睡眠時に装着する場合よりも、日中の駐車時に装着して日差しをさえぎり、車内温度の上昇を防ぐ用途で使いたい。となると、やはり断熱効果の高い市販品がおすすめ。

銀マットでDIYするなら、暑さ5mm以上ないと、ただの目隠しになってしまう。「安かろう、悪かろう」にならないように注意。

【ポイント】
・日中に装着して夜は網戸に変更
・断熱効果の高い市販品がベスト
・DIYなら厚さ5mm以上の銀マット

日陰と土の地面

駐車場選びも重要! 炎天下ではクルマがヤバい

駐車位置は車中泊する夜はもちろんのこと、日中も重要。炎天下で熱々になった車内は、夜になっても熱が逃げにくい。できるだけ屋根のある場所や木陰を選ぶこと。

地面はアスファルトやコンクリートよりも、土や芝生などのほうが反射熱の影響を受けづらい。夏にキャンプ場が好まれるのは、これが理由のひとつ。

さらに、最近ではクルマ用の「日傘」のような大型のパラソルやタープもある。使用する場所は限定されるが効果はある。一度探してみて!

【ポイント】
・夜だけでなく昼の駐車位置も重要
・オートキャンプ場を選ぶ
・アイテムを使って日陰をつくる

■STEP2

扇風機&サーキュレーター

ぜひとも購入しておきたい夏アイテムのエース

夏アイテムとして最初に購入するなら、扇風機やサーキュレーターがおすすめ。バッテリー内蔵モデルもあり、使う場所を選ばないのもいい。網戸などと併用すれば、「風の通り道」をつくることができ、車内での体感温度を下げられる。

扇風機とサーキュレーターは似ているが、少しだけ用途が異なる。扇風機は体に直接あてるが、サーキュレーターは空気を拡散させるもの。さらに、体に装着する空調服やネッククーラーも効果はあるが、睡眠時に使用可能かは要確認。

【ポイント】
・数千円くらいで購入しやすい
・スタンド式やクリップ式などがある
・「風の通り道」をつくるなら必須

ベンチレーター

車外の空気を車内に流し、空気を入れ替える換気扇

キャンピングカーならば、標準装備として装着されていることが多いベンチレーター。特に屋根の上部に配置されているクルマは、車内上段に溜まった熱い空気を外に出してくれるので効果が大きい。 

一般車の車中泊の場合は、PC用の小型ファンや扇風機をカスタムして、窓に埋め込む自作換気扇をDIYしている人も多い。注意点は回転の向き。車外→車内という向きのほうが涼しく感じるという。

【ポイント】
・キャンピングカーなら標準装備
・車外→車内の向きが重要
・DIYでもあったほうがいい

冷感シーツ&ウエア

季節ものなので、いまが購入チャンス

実際に体を冷却するというよりは、使用時の気持ちよさが快眠へと誘ってくれる冷感アイテム。シーツやウエアなどが販売されているが、シーズナルアイテムなので、「いま」が買いどき。

マットレスの上や体にかける就寝アイテムから、下着などのウエア類、さらには首に巻く小物まで、「ひんやり」アイテムはますます増加中だ。

冷えすぎたりすることはないが、逆にいえばその効果は限られる。本当に「暑い」ときは「最初だけ」の体感となる。

【ポイント】
・あくまで「体感」アイテム
・リーズナブルに効果が得られる
・抜本的な暑さ対策にはならない

標高を上げる

もはや教科書に載りそうな(!?)夏対策

何度、車中泊雑誌『カーネル』誌面で紹介したことだろう。標高を上げれば気温は下がる! 100m高度を上げれば、0.6℃気温は下がるといわれている。

なので、標高1000mならば約6℃気温が低くなる。ただし山岳地帯は悪天候も多い。さらに、目的地の近くに標高の高い地域がない場合もある。旅の計画が重要だ。

【ポイント】
・100m上がれば0.6℃下がる
・近くに標高の高い場所がないこともある

北海道or北東北に行く

北への旅はテッパンの夏対策

暑さ対策として「北へ向かう」という項目も、何度『カーネル』誌面で紹介したことか。夏のクルマ旅で北海道の人気が高いのは、その風土の魅力とともに涼しいから。

ただし、最近の北海道および北東北は気温が高いことも多い。網戸などは準備しておくとベターだろう。

【ポイント】
・本来は北へ行けば涼しい
・最近は暑いことも多くなった

■STEP3

ポータブルクーラー&ポータブルエアコン

毎年新しくなる現代車中泊の革命

バッテリーの進化とともに、最も注目されている夏アイテムはポータブルクーラー&エアコンだ。

以前のように、ある一定の条件下でしか涼しくなかったモデルとは異なり、かなりのパワーで車内を冷やしてくれるものが増えた。

ポータブルクーラー&エアコンなら、空調の配管工事などは必要なく、車体への穴あけ加工も基本は行わない。

とはいえ、ある程度のダクト処理は必要になってくる。今後の改善ポイントは、価格と大きさ、そして重量だろう。

【ポイント】
・かなり強力に冷えるモデルが増えた
・空調用の配管作業は必要なし
・まだまだ高価で、重くて大きい

車載用エアコン&家庭用エアコン

キャンピングカーなら夏に強い!

ここまでの暑さ対策を意味のないものにすることができるのが、家庭用エアコンなどを積んでいるキャンピングカーだ。ボタンひとつで自宅同様の涼しさを得ることができる。

家庭用でなくても、近年増加中の車載エアコンも性能が格段に向上しており、十分車内を冷やしてくれる製品が増えた。

これらは、エアコン自体の性能アップももちろんだが、接続されるバッテリーシステムの向上もその要因。電源サイトでなくても、稼働できるようになったのも大きい。

【ポイント】
・装着できるクルマが限られる
・配管などプロへの依頼が必須
・まだまだ高価

断熱加工をボディに施す

内張りを外す必要あり! でも効果も大きい

キャンピングカーならば、購入時にすでに断熱効果の高いパネルや断熱材が使用されていることが多い。しかし一般車での車中泊の場合、ボディに何も施されていないのが基本。

どれだけ工夫したテクニックやアイテムを使用しても、その「外側」が熱を伝えてしまうのだから、どうしても効果は少なくなる。

そんな場合、最後の手段として断熱材を入れることも可能。ただし内張りを外すなどの作業があるので、プロショップなどにお願いすることが基本となる。

【ポイント】
・キャンピングカーは処理済み
・一般車での車中泊に有効
・作業は基本プロショップに

EXTRA

HEV or BEVでクルマのエアコンを使用する

電気自動車ならアイドリングは関係ない

世界的に増えてきている電気自動車(BEV)。エアコンを使用する際、BEVならアイドリングは関係ないので、クルマのエアコンを使用することができる。これなら、確かに強力に冷やしてくれる。

ただし、走行用のバッテリーを使用するので、充電スポットの位置によっては、その後の動きが一部制限されることもある。ハイブリッドであるHEVのほうが、その点、安心して使用できるが、バッテリーの容量は小さい。

【ポイント】
・電気自動車を購入する必要がある
・充電スポットの位置を把握
・充電時間をスケジュールに組み込む

車中泊をあきらめる、という選択肢も

どんなに完ぺきな準備をしても、どんなすばらしいアイテムを使っても、暑いときは暑い!

車中泊は万能ではない。そんなときはすっぱり車中泊をあきらめてホテルなどに泊まろう。無理は禁物だ。熱中症になって体調をくずしたり、命が危険にさらされては本末転倒。決断は早めに!

文:大橋保之(カーネル編集部)
初出:カーネル2024年7月号vol.67