【概要】日産・アリアの試乗レポート。プロパイロット2.0やe-4ORCE(電動駆動4輪制御技術)の性能、居住性などについてレビュー。

上位モデルだと車両本体で800万円近いクルマなので、車中泊用の選択肢として考えられる人は限られるかもしれないが、冷暖房を使えること、オプションで電源を得られることに加え、走行性能の高さなど、興味深い点は多い。

安楽な運転支援と走破力、居住性も最高。唯一の欠点は?

キムタクが「やっちゃえ日産!」と、カッコよく乗りこなす、日産・アリア。このアリア、じつはけっこう車中泊旅に向いたクルマなのだ。

ご存じのように、大容量のバッテリーを積む大型EVは、エンジンを始動しなくても(そもそもエンジンは搭載していないが)エアコンを使えるので車中泊向き。今回実際に検証したワケではないが、本誌ライターの鈴木ケンイチさんの検証によると、6月の夜に7時間エアコンを使って約一割の消費だったそうだ。

冬のヒーターの方が消費は激しいはずだが、少なくとも夏の夜が快適になるのはすばらしい。EVの美点だ(外気温、設定温度によって変動は大きいそうだ)。もちろん、航続距離の問題もあるので、充電設備の位置確認は必須になるが。要望があれば広報車を借りて、検証してみたい。

後席を前に倒した状態での荷室長は1901mmなので、男性でものびのびと寝ることができる。ただし、床下にバッテリーを搭載している都合だと思うのだが、けっこう床の位置は高いので、荷室内の天井が低く、シートを倒した状態では、頭が天井に着いてしまうのはちょっと残念なポイントだ。 

また、USB-A/Cポートはあるが、AC電源は取れない。もし、AC電源が取れれば、潤沢なバッテリーを使って、照明や調理に活用できて便利だと思う。しかし、現在のところ、充電ポートからV2L規格の機材を使って、電力を取り出すしか方法はない。

V2L規格の機材は安くはないので、逆に標準装備にするとコスト増になるから省かれているのかもしれない。将来、車中泊を前提としたEVが登場したら、かなり便利なものになると思うのだが。

クルマとしてのアリアはかなりハイパフォーマンスで、魅力的な存在だ。高出力バージョンのB9 e-4ORCEは、なんと最高出力394馬力。EVの特性として、0発進のトルクがすさまじいので、たいていのスポーツカーを置き去りにするほどのパワーを見せる。

かといって、扱いにくいわけではない。車体の姿勢制御も含めて4輪のトラクション、ブレーキコントロールを行うe-4ORCEのおかげで、氷の上でさえホイールスピンすることなく着実にトラクションを路面に伝える。

女神湖の氷上試乗でGT-RやフェアレディZを含む、多くの日産車に乗ったが、一番安心して走れたのはアリアだった(ただし、電子制御は優れているが車重があるので、それを踏まえた扱い方は必要)。

さらに運転支援(世間で自動運転といわれているシステムだが、日産の公称ではこう表現する)のプロパイロット2.0を搭載。高速道路のルートに従ってハンドルを切り、道路状況に合わせて加減速をしながら、ほぼ自動的に走る(現状、ドライバーは前を見て、いつでもハンドルを握れる状態である必要はある)。

諏訪湖から東京に帰るときに使ってみたが、ほぼハンドル操作をせず(握る必要があることは多い)、アクセルもブレーキも踏まずに八王子インターまでは帰ることができた。運転の疲れは非常に少なくて済む。

プロパイロット2.0の安楽さ、e-4ORCEによる走行性能の高さに加えて、車中泊においてはEVならではの冷暖房、電源供給など可能性が高く、ユニークなクルマだ。

氷上でさえ、滑らず走るe-4ORCEの走破力

4輪のスリップ量を検知しながらトラクションコントロールを行うだけでなく、姿勢制御のために駆動力配分を行うe-4ORCEが特徴。

日産アリアの性能をチェック!

最大640km(公称)という十分な航続距離

ボンネットの中には、当然のことながらエンジンはなくて、コンバーターなどが搭載される。重いバッテリーは床下に搭載されており、車重は1960~2230kgとかなり重い。

航続距離はおよそ400~500kmが実測値。多くの人の1日の走行距離は十分に賄えるが、宿泊を含むロングドライブとなると途中の充電も考慮しなければならない。

プロパイロット2.0で、運転疲れは激減

すぐにハンドル操作できるようにしている必要はあるが、諏訪湖から八王子までほとんど、ハンドル、アクセル、ブレーキの操作をしなかった。

最初のうちはクルマに任せるのが不安で余計に疲れるが、慣れてクルマを信頼できるようになると、長距離ドライブも楽になる。運転の疲れは大きく削減することができる。

前が空くと設定した速度まで自動で加速。前走車がいると減速し速度を合わせて追尾する。ステアリング操作もコーナーの曲率に合わせて、自動的に行われるのには驚く。

HUDが装備されており、正面を見ながら速度などを確認できる。ステアリングマークがブルーになっていると手を離すことができる。写真の表示だとボタンで車線変更も可能。

メインメーターもカーナビも、横長の大きなディスプレイを利用する。運転支援とナビゲーションは、密接に関わっている。地図上に急なコーナーがあれば自動的に減速も行う。