【概要】車中泊専門誌『カーネル』のUSAブランチによるアメリカ大陸横断1万2000kmロードトリップレポート第15弾・最終回。

赤い景色に囲まれ自然の宝庫アリゾナ

今回の大陸横断ロードトリップ。立ち寄りたい場所がたくさんあり過ぎてなかなか家路につけないが、カリフォルニアに隣接するアリゾナ州まで戻ってくると、そこそこホームが近くなってきた感覚になる。

I-40を西に向かっていると、なんと周りには積雪のあと。気温が高く暑いイメージのアリゾナだが、標高が高い山中は降雪も少なくない。

西海岸まではまだ優に1000kmもあるのだが、全行程で1万2000kmも走っているのだから、残り1000kmはなんでもないというふうに感じ、自分の基準が狂ってきているのもおもしろい。

クレーターのサイズは直径1.2km、隕石の衝突時には210mの深さになったと推測されているけど、その後5万年の間に土が蓄積し、現在の深さは165mとなっているそうだ。年間降水量が著しく少ないため、世界で最も保存状態がよいクレーターとなっている。

クレーターの中央に隕石を発掘調査していたときの建物がある。展示されているこの隕石はレプリカだそうだ。

アリゾナに入ったら最後のステイはパワースポットといわれているセドナでと思っていたが、直前にメテオ・クレーターがあることを思い出し久々に立ち寄ってみた。ここは5万年前に隕石が落ちてできた、巨大なクレーター。隕石に関するさまざまな資料も展示されていて、それを見ているだけでもロマンがあり楽しい場所だ。

赤い岩と元気よく茂った植物、澄んだ空気や水がセドナのイメージ。

続いては予定通りI-40のフラッグスタッフから少し南にはずれてセドナに移動。自分たちにとってはパワースポットというより、純粋に空気が澄んでいて気持ちのいい場所、そして赤い岩の中に造られたすてきな建造物がある大好きな街という存在だ。

セドナはたしかに生命の息吹やエナジーを感じるパワースポットなのかもしれない。

でもこの場所が気持ちいい、ということがパワースポットなのかな? と少し考えながらも岩山の中のお気に入りルートをトレイルして楽しんだ。

赤い岩と同化するように建てられたすてきなデザインの教会チャペル・オブ・ホーリークロス。観光で訪れる人も多いが、実際に参拝することもできる。建築デザインはかの有名なフランク・ロイド・ライトの弟子マーガレット・スタウド。背面の駐車場からつながるアプローチも美しい。

化石の森国立公園と呼ばれるペトリファイド・フォレスト・ナショナルパーク。

ロングドライブに欠かせないのが、ウインドウ・ウォッシャー。制限速度(約120km/h)で走っても、窓の汚れがひどいので、かなり頻繁にウォッシャーを使うことになる。どこのガスステーションでも売っているので途中で買い足している。今回の旅では2ガロンを使用。

Check! お気に入りのスナックはガスステーションで

日本では道の駅や高速道路のパーキングエリアの充実が進んでいるけど、アメリカではガスステーションでいろいろなものが手に入る。もちろんスナック系も充実していて、いわゆるチップス系もいいけど、ドライブ時にはクラッカー類がおすすめ。

なかでもクラッカーにクリームチーズやピーナッツバターを組み合わせたものや、ハムやチーズが組み合わされているものがパックになって売られている。もちろんガスステーションではなく事前に大きいスーパーなどで買い出しをすれば、いろんなバリエーションをそろえておける。

大陸横断トリップもいよいよ終盤 カリフォルニアに入れば、ゴールまで450km!

3週間以上にわたりアメリカ大陸を放浪した今回のトランス・アメリカン。のべ18回州境を越え、自分たちのクルマで大陸の反対側まで走った記憶はとても楽しい思い出。

仕事の都合でなかなか実現できることではないけど、周りの協力でこのスーパーロングバケーションを実現できたことに感謝! もちろん毎日楽しい時間を共有し、そして支えてくれたパートナーにも大大感謝だ。

フリーウエイ上に設置されたチェックポイント。ここでは農作物の不法持ち込みをチェックしているが、テキサスなどのメキシコと国境を接する州では、不法移民の取締などが目的とされる場所も多い。

そんなことを考えながらアリゾナからI-40を走ってカリフォルニアに再突入。今回いろんな州に行ったけど、農作物の輸送に関してカリフォルニアには法律的に規制があり、州に入った場所にチェックポイント(検問)がある。1台ずつ停止させられて農作物を持っていないか? と尋ねられるだけだけど、交通量の多いときにはこの検問で渋滞が発生してしまうのでちょっと厄介な存在だ。

最終日はスタート地点と同じサンタモニカ・ピアを目指したいが夕刻までに間に合うか? なんて考えているのに、せっかくだからI-40から少し外れて写真映えするルート66上の有名なポイントに立ち寄った。

ルート66のさまざまな景色のなかでも、特に有名なROY’S Motel&Café。アメリカのモ ータリゼーションの発展と共に栄えた街アンボイに建つ。

ROY’Sの正面にあるUSPS(アメリカの郵便局)オフィス。スッキリしたたたずまいのかわいい建物で、星条旗が映える。

ロイズは古くから栄えたカフェ&モーテルで、時代感のあるサインが青空に映える! 現在は休業中だが新しいオーナーが購入し、復活の予定があるらしい。

I-40からI-15に乗り継いで南下し、最後は西に向かうI-10に入り一路サンタモニカを目指す。ロサンゼルスに近づくにつれ、おなじみの毎日繰り返される大渋滞。でもなんだかこの渋滞も数週間ぶりだと懐かしく感じてしまうのだから、人間とは勝手なものだ。

地元ロサンゼルスを代表する観光スポット、サンタモニカ。なんとか滑り込みで日没に間に合った。

マジックアワーと呼ばれるサンセットタイムの美しさは格別だ。

夕闇が迫るなか、サンタモニカ・ピアに到着した。最高のサンセットを楽しめるマジックアワーを満喫できるウエストコーストの魅力にも改めて気付かされた旅のゴールとなった。

道路さえつながっていればどこにでも旅ができるロードトリップ。1万2000kmという馬鹿げた距離を走って帰ってきたばかりなのに、もう次の旅を計画している。ロードトリップの魅力は尽きないなーと考えつつ、来年の夏に備え、すでにアラスカまでのルートを検索中だ。〈完〉

※記事中で紹介しているルートや場所は、事前に安全を確認し行動しています。慣れない場所でのトリップは治安面を含めた安全をしっかりご確認のうえ、計画行動することをおすすめします。

写真、文:Yusuke Makino, June(カーネルUSAブランチ) 
取材協力:ミシシッピ・リバー・カントリー、カリフォルニア観光局 
初出:カーネル2023年11月号vol.63