【概要】焚き火台の下に敷いて使用する「スパッタシート」について解説。基礎知識、使い方、種類、製品について、スパッタシートを製造・販売している老舗メーカー・吉野に取材。

熱を伝えないシートではなく、伝わる時間を遅らせるシート

いまや焚き火の必需品ともいえるのが、焚き火台の下に敷く「焚き火シート」。サイトの地面を保護するために、使用必須としているキャンプ場も多い。

その焚き火シートのひとつとして使用されているのが「スパッタシート」という製品。

本来は火花受けとして開発されている工業用の耐炎シートだが、今では焚き火で地面を焼かないための「焚き火シート」として浸透している。

「溶接工として働いているキャンパーさんが、スパッタシートを焚き火に流用して、SNSで紹介したのが『焚き火シート』の始まりのようです」

そう話してくれたのは、スパッタシートを製造・販売している老舗メーカー・吉野の千原拓也さんだ。

スパッタシートはもともと工業用の火花受けとして開発されている耐炎シート。

「確かにスパッタシートは、溶接火花を直接受けられる『耐炎性』に優れたシートです。しかし、シート下の物を焦がさないようにするには、『断熱性』という別の性能も必要になります。断熱性とは、熱の伝達を遅らせる性能です」

スパッタシートに燃えた薪が落ちた場合、耐炎性があるので芝生などに火が燃え移る「引火」はない。

しかし、燃えた薪がシートの上に放置された場合、直接炎が触れなくても、芝生などが発火点を超えれば「発火」するという。

「シート下が青々とした芝生か、乾いた枯れ葉か? さらに落ちた薪の温度やシートの厚みによっても、焦げるまでの時間は変わります。また、落ちた薪だけでなく、焚き火からはあらゆる方向に輻射熱が出ますので、焚き火台直下も熱くなります。これも焦げの原因。輻射熱が地面に直接当たらないようにすることも焦げ防止になります」

また熱や炎に強いスパッタシートでも、使い続けると劣化するという。

「シリカ繊維を含めたガラス繊維製の焚き火シートは、使用前は柔らかい。しかし、熱を受けると硬くなる性質があります。使用後にたたんで持ち帰る際、硬くなった個所を繰り返し折りたたむと、裂けや破れにつながります」

このようにスパッタシートは、敷いていればなんでもOKで、永久に使用できるものではないことを知っておこう。

そして、地面に熱を伝えにくい高さのある焚き火台を使い、火のついた炭や薪が落ちたらすぐに拾う。そうすることで、地面の焦げ、ひいては火災を防ぐことができる。

スパッタシートの種類と特徴

①耐炎繊維 織物シート

アクリル繊維を酸化させて製造する繊維。ガラス繊維を使っていないので、チクチクとした皮膚刺激がないのが特徴。
瞬間耐熱温度:約1300℃/連続耐熱温度:約230℃

②耐炎繊維 フェルトシート

織らずに繊維を絡めて製造されている厚みがあるフェルト(不織布)シート。フワッとした軽くて柔らかい風合いが特徴。
瞬間耐熱温度:約1300℃/連続耐熱温度:約230℃

③シリカ繊維 織物シート

ガラス繊維を精製して二酸化ケイ素(シリカ)の純度を上げた、耐熱性に優れた繊維。人によっては皮膚に刺激を感じる。
瞬間耐熱温度:約1800℃/連続耐熱温度:約1100℃

④ガラス繊維 織物シート

ガラスファイバーを織り込んで作る、薄くて軽く、柔らかいシート。人によってはチクチクとした皮膚刺激を感じることがある。
瞬間耐熱温度:約800℃/連続耐熱温度:約550℃

教えてくれたのは……耐炎製品メーカー・吉野

耐炎繊維を使ったさまざまな製品を製造・販売している昭和24年創業の老舗メーカー。その経験と技術力を活かして、近年は焚き火用シートも製造・販売している。ベテランキャンパーのあいだでは好評を博している。

・吉野 焚き火台用保護シート

スパッタシート製造の技術を注ぎ込んで開発した焚き火シート。シリコンコーティングした薄手のガラス繊維で、断熱材となる厚手のガラス繊維を挟み込んだ3層構造が特徴。耐熱性・耐火性・断熱性に優れ、コーティングにより皮膚に刺激がなく、撥水性もあり手入れしやすい。

参考価格/700×920mm:6600円、920×920mm:7260円

※記事の内容は2021年5月当時のものになります

文:牛島義之 
出典:出典:GARVY2021年6月号