【概要】車中泊専門誌『カーネル』のUSAブランチによるアメリカ大陸横断1万2000kmロードトリップレポート第12弾。テネシー州メンフィスからロサンゼルスまでの帰路でテキサスまでの行程を紹介。

テネシー州メンフィスから地元ロサンゼルスまで、寄り道をしながら3600kmの行程。テネシー、アーカンソー、テキサス、ニューメキシコ、アリゾナ、カリフォルニアの6つの州を移動した。

2023年の2月から3月にかけて、1カ月弱の行程で楽しんだアメリカ大陸横断の旅。

前回までのレポートでは南カリフォルニアから、東端の目的地フロリダ州キーウエストで折り返した後、アメリカ東海岸の街の魅力を紹介した。

今回以降のレポートは前回の最後の宿泊地テネシー州メンフィスから出発し、我々の地元であるロサンゼルスまでの行程を紹介しよう。

前回レポートしたとおりアメリカンミュージックの聖地のひとつでもあるメンフィスだが、ほかにも歴史的な名所がたくさん。

ロレイン・ホテル。MLKの暗殺事件という暗い歴史もあるが、彼の強い意思とソウルが根付いた人種差別に反対する重要な意思の表れともなっている。

なかでも68年にマーティン・ルーサー・キングJr.が暗殺されたロレイン・ホテルは、皮肉なことに街で最も著名な観光スポットとなっている。

このホテルは映画『グリーンブック』で知る人も多いであろう、黒人向けガイドブックに掲載されていたホテルでもあり、黒人実業家であるウォルター・ベイリーが切り盛りし繁栄していた場所でもあった。

アメリカに住んでいても地元は西海岸のカリフォルニアなので、ミシシッピ・リバーという文字を見ると、かなり遠くまで走って来たと実感する。

そんな黒人文化がブルースなどの音楽とともに発展し、キング・オブ・ロックンロールと称えられたエルビス・プレスリーが誕生した街を離れ西に向かう。

テネシーとアーカンソーの州境の橋はとても美しく、ランドマークのひとつでもある。

メンフィスのすぐ西を流れるミシシッピ・リバーを渡れば、お隣のアーカンソー州に入る。延々とフィールドが続く景色を見ていると、アメリカが農業大国であることを実感する。

アーカンソー中心の街リトルロックの市庁舎ビルディング。古い建築物でホワイトハウスにも似た歴史を感じるデザインだ。

州の真ん中にあるリトルロックまでは2時間ほどだが、州で最も大きなこの街でも人口は20万人程度で、すべての人がゆったりと暮らしていることがうかがい知れる。

ステートボーダー(州境)には必ず、州旗などをあしらったウエルカムボードが掲げられている。テキサスに入る場合は一般的な州旗のデザインだ。

リトルロックは全米を左右に走るI-40の通過地点でもあるが、ここは西側に向けI-30の起点でもあるのでここからI-30に入り、次の目的地テキサス州ダラスを目指す。

テキサスの大都会のひとつ、ダラスのダウンタウン。広い空の下に広がる、アメリカらしい光景。

ダラスはテキサスの中でも、オースティンやヒューストンと並ぶ主要大都市のひとつ。

またダラスの北に隣接するプレイノはトヨタ・ノースアメリカの本社や、多数の日系企業が集まる街で、ここに暮らす日本人も多い。

TOYOTA MOTOR NORTH AMERICAの本社ビル。カリフォルニア州トーランス市から2014年にテキサス州プレイノ市に移動。周囲には日本のNTTデータやアメリカの食品メ ーカー、ペプシ&フリトレーの本社なども。

もともとトヨタ・ノースアメリカは自分の地元ロサンゼルスにあったが、約10年前にビジネス拠点をテキサスに移した。

地元愛が非常に強いテキサス。ローンスターと呼ばれる星一つが描かれた州旗や、州のシェイプを型どったマークなどが、そこかしこに見られる。

ほかの米系企業も政治や経済的な事情でテキサスに移動している事例が多く、テキサスはこれからも米国経済の重要な拠点のひとつである事は間違いない。

州間高速道路は田舎に行くほど最高速度が上がるのが一般的。区間によってスピードも異なるが、I-40のマキシマムスピードは一般車が75マイル、トラックが70マイル。全米で最も速く設定されている最高速度区間はやはりテキサス州内の一部で、時速85マイル(約136km/h)となっている。

夜の帳が下りるとライトアップされ、近代的なビルディングが浮かび上がる。こうした派手な演出もアメリカならでは。

おすすめの映画『GREEN BOOK』

黒人に対する人種差別をテーマにした映画はたくさんあるが、なかでも 『GREEN BOOK』はおすすめの1本。

映画のタイトルでもあるグリーンブックとは1930年代から使われていた黒人の旅行者が利用できるホテルやレストランのガイドブックで、ロレイン・ホテルも掲載されていた。

映画『GREEN BOOK』はハートウォーミングなファミリー・ムービーなので、まだ観ていない方はぜひご鑑賞いただきたい。

CHECK! USで旅する(暮らす)なら支払いはクレジットカードが基本

アメリカはかなり以前から、クレジットカードを中心としたキャッシュレス支払いが日常に染み付いている。

今回の数週間に及ぶロードトリップでも、現金が必要だったのは、ホテルのメイドさんに置いておくルームクリーンのためのチップだけだった。

だからあらかじめ1ドル札と5ドル札のみ自宅から持ってくるが、足りなくなると食料などの買い出し時に現金を使い、お釣りをチップ用にキープする感じ。

またクレジットカードだが、アメリカでは実際に不正利用されたり、また自分のカードを遠方で使った場合に不正利用の疑いをかけられたりして使えないことがある。

そのためVISAとマスターを中心とした複数のカードに加え、自分の銀行に紐づいたデビッドカードを携行しておくのが旅行では必須。

またアップルペイなどはかなり広範囲で使えるので、スマートフォンにクレジットカードを紐づけておくと便利だ。

写真、文:Yusuke Makino, June(カーネルUSAブランチ) 
取材協力:ミシシッピ・リバー・カントリー、カリフォルニア観光局 
初出:カーネル2023年11月号vol.63

※記事中で紹介しているルートや場所は、事前に安全を確認し行動しています。慣れない場所でのトリップには、治安面を含めた安全をしっかりご確認のうえ、計画行動する事をおすすめします。