【概要】アメリカのヴィンテージRVやトレーラーのカスタマイズ作例紹介。

車中泊カーやRVの“快”造計画を追求していくなら、遊び大国アメリカの事情を参考にしない手はない。ここではヴィンテージRVをベースにした、アメリカンキャンパーのカスタマイズをのぞいてみよう!

世界で初めて自走できる原動機付きのクルマが発表されたのが1769年。その発明はフランスでのことで、蒸気機関を使った三輪車だった。

その後、ガソリンエンジンを搭載した現代のクルマの基礎となるレイアウトをもつ、いわゆる自動車が発売されたのが1891年。

これらはすべてヨーロッパでの出来事であったが、1900年代に入ると、一気にアメリカの自動車産業が発展する。

皆さんもその名を耳にしたことがあるだろうT型フォードは、多くの人が購入できることをコンセプトに開発された革新的な大衆モデルで、延べ1500万台以上が製造販売されたというのだから驚きだ。

そして自動車が世に出回ると、その使い道は人や荷物の運搬以外にも積極的に活用されるような展開が始まる。そう、RVへの進化が活発化し始めるのだ。

そもそも馬車の時代からトレーラーをけん引してレクリエーションに使用していたアメリカでは、自動車がRVとして使用されるのはごく自然な流れであった。

市販化が始まったころの自動車はキャビン周りに木製部品もたくさん使われていたので、より手軽に大胆なカスタムができたのかもしれない。

上記の流れをくみ、さらにモータリゼーションの発展とともに欧米、特にアメリカでのRV事情は急速に進化していく。

今回紹介する多くのヴィンテージ・トレーラーやRVは、1950年代から70年代を中心に販売されていたものがベースとなっている。

ここで注目したいのは、オーナーたちがヴィンテージRVだからといって、決して古いオリジナルの状態を維持することにのみこだわっているのではないということ。

自分たちの趣味嗜好に合わせてテーマを変えて再デコレーションしたり、現在手に入るアイテムを組み合わせ利便性を高めるなどのカスタマイズを楽しんでいるのだ。

もちろんベース車両がヴィンテージRVなので、そのムードを壊さないようにしつつも、さらに大掛かりなリノベーションで室内を改装し、自分たちだけのオリジナル仕様を楽しむなど、大胆な改造を施しているスーパーカスタマイズも少なくない。

また、アメリカ人のカスタムテイストでお手本にしたいのが、そのカラーリングセンス。

決して原色だけでまとめるのではなく、中間色や差し色を上手に使うことで、風景や実際に使用するシチュエーションにマッチする、実に巧妙なカラーリングに仕上げている。正直なところ、このセンスにはかなわないと思う。

ヴィンテージモデルをただ古いモノというだけでなく、自分の表現したいイメージに合わせて仕上げるアメリカン・カスタマイズの世界。

アメリカ人が楽しむこの世界には、お手本にしたい作例がたくさんあふれているので参考にしたいものだ。

アメリカンキャンパーのカスタマイズをチェック!

特徴的なルーフのポップアップ部分に、キャンバスカラーに合わせてデコレーションを追加。アイボリーカラーのボディとビビッドなオレンジのコンビネーションがセンスよし。

ややダークトーンな赤いドアと、ボディに描かれたグラフィックのバランスがグッド。ヴィンテージトレーラーをベースに最新のウインドウ・サッシをインストールしている。

トレーラー全体をキャンバスに見立て、大胆にペインティング。パーキング時にはアウトドアキッチンとなるので、そのときだけは外の壁面にアートを下げる。

トレーラーボディの半円形のシェイプを大戦中の爆撃機に見立て、ミリタリーなテイストでフィニッシュしている一台。

いまにも中からベティ・ブープが飛び出してきそうな50’sムード満点に仕上げられた、キッチン&ダイニングをもつVW Type2。

オーナーによるとインテリアはオリジナルをキープしつつ、オーニングなどを新調したそうだ。

もともとアルミパネルで仕上げられたRVのボディを腰下のみクロームイエローでペイント。ホイールはもちろん、外に置かれたステップなども色を合わせているのがハイセンス!

RVを引っ張るVWビートルとけん引されるトレーラーを、それぞれ2トーンでカラーマッチングさせたハイレベルな仕上げがすてき。

VWはアイボリーのキャンバストップにホワイトリボンタイヤと、おしゃれ街道まっしぐらだ。

RVのある風景を完全なるヴィンテージワールドとして仕上げた空間作りがさすが。カスタマイズのテーマがはっきりしていると、仕上がりがしっかりとまとまるお手本だ。

1948年にカリフォルニアで誕生した2名乗りの電動カスタムビークルが、写真右のAutoetteという乗りもの。

レジャー以外にもトラックタイプがあり、市場のバタバタ(ターレットトラック)のような用途でも使われていたらしい。

ティアドロップ型の小型トレーラーの後部を、自分の趣味に合わせてカスタムしている。このオーナーはヴィンテージにこだわり、小物カスタムも古いものでそろえているそうだ。

RVトレーラーの中に小型のオーブントップを仕込んで、本格キッチンに仕上げている。

ゆったりとしたスペースで仕上げられたブーステーブルで楽しむディナータイムには、きっとすてきな時間が流れるに違いない。

トレーラーの後部を大胆にディナーカウンターにした一例。備え付けられている家具類はフルサイズのもので、長距離旅客列車的な仕上げがカッコいい。

1950年代から70年代あたりの車両が多いことから、ジュークボックスコントローラーをデコレーションとして使っているクルマも少なくない。

年代的にエルビス・プレスリーファンが多く、好きが高じると、こんなカスタムデコレーションまで作っちゃう。

カスタムとは関係がないが、おもしろアイテムを紹介。サンオーブンは太陽の光を集めて箱の中をキッチンのオーブンと同じような温度にしてスロークックができるという調理器具。温度調整には慣れが必要だ。

文:Yusuke Makino(カーネルUSAブランチ) 
写真:Daisuke Nakamura 
初出:カーネル2023年11月号vol.63