【概要】SOTOのシェルターテント+陣幕のセット「ホルス」のレビュー。実際の設営体験をとおして感じた「ホルス」の魅力や特徴、機能、サイズ感、設営アレンジ、開発者の声など。

SOTOの新感覚シェルターテントをインプレ!

2022年11月、キャンプ好きを騒然とさせたのが“青い炎”を生み出すプロフェッショナル集団、SOTOよりついに“幕”がリリースされるというニュースだ。

幕の名は「HORUS(ホルス) SOLO T/C」(以下、「ホルス」)。

六角形フロアのワンポールテントと陣幕のセットで、フロアレスのシェルターテントだ。テントはファスナーを開くことで、翼を広げるように大きく跳ね上げられる。

ハヤブサの頭をした古代エジプトの守護神、ホルスという名を冠しているのはこの機能に由来しているのだろう。

大きく跳ね上げられるテントといえば、すでにogawa「タッソ」やDOD「ヤドカリテント」など人気テントが存在している。

「ホルス」は後発となるが、ただの後追いモデルではない。最大の違いは陣幕をつなげられること、そして跳ね上げたキャノピーの天井を開いて、ガスバーナーやランタンを使えることだ。

その使い勝手は? どのような使い方ができるのか? 

現在、2023年1月の発売に向けて最終調整に入っているそうで、微妙な仕様違いはあるけれど、サンプルで設営体験してきた。
※2023年春に発売延期(2022年12月28日追記)

ファミリーキャンプ用テントと同じサイズ感

重量は約10kg。

ワンポールテントと陣幕はいずれもT/C素材。テント用のメインポールとサブポール2本、鉄製ペグ、張り綱、幕をまとめるベルトが付属する。

T/C幕と鉄製ペグのためだろう、スタンダードなファミリーキャンプ用テントと重量や収納サイズはほぼ同じだ。

ソロ用テントしか手にしていない人にとってはかなり重く感じるが、ファミリーキャンプからソロへ移行した人なら「こんなもんかな」と妥協できそう。

設営手順は一般的なワンポールテントと同じで、全周をペグダウンしてポールで中心を持ち上げるだけ。

「ホルス」の場合は六角形なので後部の一辺をビシッと決めてから手前、サイドをペグで固定する。ペグをかけるベルトは長さ調節可能なので、石を避けるために多少位置がずれても、きれいに設営できるのがいい。

気をつけたいのは正六角形ではなく、前辺が長いこと。ペグ用ベルトを色変えをするそうなので間違えないようにしたい。

テントのみのフルクローズ時のサイズは約300×250×H160cm

ワンポールテントの完成。周囲にぐるりと裾にスカートが付いており、T/Cと相まってあたたかく過ごせる。

付属の陣幕と組み合わせる。風にのったホコリがテント内に入りにくくなるし、テントから出るたびに向かいの人と目があうなんてことがない。

混雑したフリーサイトでも落ち着いて過ごせるし、焚き火をするときもこのスタイルが心地いい。

陣幕のポールは、下側に受け口があるので、幕とポールがずれてしわしわになるのを防いでくれる。

開放的なキャノピー立ち上げ

キャノピー立ち上げ時のサイズは、約300×320×H160cm

テントの両側に備えられたファスナーを開いて、前をサブポールで立ち上げる。

「ホルス」はフロアレスのシェルターテントだが、間仕切りが付いているのでキャノピーを張り上げても寝室が丸見えになることがない。夏のソロキャンプならこれだけで過ごしてもよさそうだ。

間仕切りは中央にファスナーがあるので、両側に巻いてワンルームにしてもいい。後部出入口も巻けば風通し抜群。

陣幕を装着して2ルームに

「ホルス」の真骨頂である陣幕接続。

キャノピー部分が完全に閉じるので、2ルームシェルターテントになる。寒い時期、テント内でくつろげるのがいい。

陣幕とテントの接続はトグルで行う。

出入りをどうするのか気になるところだが、陣幕のポール脇にはファスナーがあり、これを開閉すれば簡単に出入りできるというわけ。

SOTOのガス器具なら中で使える!

そして跳ね上げたパネルを巻いてリビングの天井をなくせば、ガスバーナーやガスランタンの使用OK。

一酸化炭素と空気の比重はほぼ同じだが、天井をあけることでSOTO製のガス器具であれば使用できるのだという。

ただの幕ならSOTOが開発する必要はない。

「火器を使える幕」を目指して検証を重ねた結果、天井を開放できるT/C素材の「ホルス」であればSOTO製のガス器具を安全に使用できると結論づけた。

注意したいのは、使えるのはあくまでSOTO製ガス器具のみだということ。

他社製のガス器具や焚き火、炭火、大きく炎が上がりやすいガソリン製品の使用は認められていない。

すべての火器を使えないのは残念だが、それでも冷たい風に身をさらすことなく、安心して調理ができるのはうれしい。

なお、天井が大きく開く「ホルス」に注目しているのはキャンパーだけではない。

冬の夜、幕に囲まれてあたたかく星空を観察できるし、その場で飲み物の温め直しができるため、天文ファンも興味津々なのだという。

ほかにも天井を少しだけ開いて樹上の野鳥を観察するなど、いろいろな使い方ができそうだ。

少人数のグループ利用も楽しい

キャノピー部分にはチェア4脚とテーブル、ラックを置けた。

間仕切りを巻き上げてコットに座れば最大6人で過ごせるなど、冬のソログル(ソロたちが集うグループキャンプ)で「ホルス」を共用リビングにすれば風の影響を受けず快適だし、全閉できるので食料だけ片付けてそのまま眠れるのはありがたい。

物置CMじゃないけれど、キャノピー部分に5人が立っても大丈夫。

もっとも、全閉にするとグレーの壁と天井に囲まれて、少なからず圧迫感がある。キャノピー部分だけなら2〜3人、間仕切りを巻き上げる場合も4人利用が現実的か。

陣幕を跳ね上げてリビング拡張

さらに130cmほどリビングを拡張。

陣幕のファスナーから出入りができるということは、手持ちのポールが2本あれば陣幕を跳ね上げてリビングをさらに拡張できるということ。

陣幕の両側を巻き上げれば夏のソログルによさそうだ。

ファミリーキャンプ用2ルームテントの代表格、コールマン「タフスクリーン2ルームエアー/MDX+」のリビング面積は約340×290cm。

「ホルス」の場合、ポールからキャノピー前端までが170cmで陣幕を跳ね上げれば奥行きは約300cmになる。そして最大幅は300cmだけど陣幕のファスナーからファスナーまでの幅が200cm。

高さこそ低いがリビングの有効面積は200×170cm、最大200×300cm。さらに寝室側まで含めると奥行きは+150cmとなるわけで、ソロ〜デュオには十分すぎる広さを獲得できる。

ファニチャーなしなら4人でも寝られる!?

シェルター後部、間仕切りの向こう側にはローコット1台がぴったり収まる。ハイコットだとテントの傾斜に頭が当たるかも。

間仕切りを巻き上げればコット2台設置可能。ちょっと不安定だがコットをチェアがわりにして、ローテーブルを置いて過ごしてもいいだろう。

少々手狭でテーブルを置くのは厳しいが、キャノピー側にコットをもう1台置いて3人就寝もあり。この場合、出入りはシェルター後部からが自然だ。

コットを使わず縁が立ち上がってバスタブ型にできるシートを使えば、4人でも寝られるだろう。

なお、陣幕はスカートがないし、トグルを使ってシェルターと接続しているので隙間風を完全に防げるものではない。間仕切りを巻き上げて寝る場合は、寝袋カバーを併用するなど工夫が必要かも。