なんでそんなに人気なの?
持っていないキャンパーはいないのでは?と感じるほど、ヒット街道驀進中の小さな調理器具・メスティン。
炒めるのはどんな調理器具でもできるが、メスティンは煮る、茹でる、揚げるもOKで、グラタン皿としてダッチオーブンに入れてもいい。
コンパクトで密閉力が高く、あらゆる方向から熱を加えられる。フタがしっかり閉じるので、ひっくり返して、例えばチーズに焼き色をつけるなんてこともできる。
様々な料理に対応できるし、四角くてパッキングしやすいのでソロやデュオ向きの大きさではあるが、ファミリーなら2個、3個と増やしてもじゃまにならない。これも多くのキャンパーが注目した理由だ。
日本の弁当文化にもマッチ
料理がぎっちり詰まったメスティンはいかにもおいしそう! 小さい頃から弁当文化に慣れ親しんだ日本人にとって、ご飯やおかずが詰まったメスティンは幸せの証なのだ。
得意技その1は「煮る・茹でる」
メスティンは「ご飯をおいしく炊ける」と評判だが、炊飯は煮る・蒸す・焼くの複合加熱。多めの茹で汁が必要な麺料理、汁をたっぷり含ませた煮物はお手の物。
得意技その2は「蒸す・燻す」
メスティンに底網を敷けば、蒸し料理ができるしアルミ皿にのせたスモークウッドを入れておけば燻製も可。気をつけたいのは空焚き厳禁だということ。変形するのでスモークチップの使用はしないほうが無難だ。
そもそも「メスティン」って……?
メスティンはメス(MESS)=軍隊での食事、ティン(TIN)=ブリキの容器を意味しており、要するに軍隊で使われるブリキ製の鍋を指す。
もっともメスティンを代表するトランギア社製メスティンの現行品を見る限り、ブリキではなくアルミ製だし、メスティンには“四角い”という意味は入ってはいない。それでもメスティンというと思い起こすのがあの取っ手付きの四角いクッカーだ。
メスティンの魅力をおさらい
軽くて扱いやすいアルミ製
強火が苦手なアルミ製。扱いにくく感じるけれど、そもそも弱火~中火で食材のうまみを引き出すのが料理上手の第一歩。メスティンは理想の鍋ともいえる。それに薄手なので、弱火や中火にしても熱ムラを最小限に抑えられる。
とにかくご飯がおいしい!
中火で5分ほどかけて沸騰させ、弱火で水蒸気が出なくなるまで(約5分)加熱すればおいしいご飯のできあがり。長年使ってフタが浮きやすくなったら、重しをのせて調節。
驚きの密閉力
いろいろなメーカーでアルミ製メスティンを販売しているが、形は似ていてもかみ合わせに違いあり。トランギア製はしっかり閉じて、ひっくり返してもフタが落ちにくいほどぴったりしていておいしさを逃さない。
ハンドルが取れる
便利なハンドルだが、ハンドルのカバーはポリアミド製でストーブの熱には耐えられるが焚き火などの高温にさらすと溶けてしまう。ハンドルを取れば、グラタン皿としてダッチオーブンに突っ込みやすくなる。
なにかとフタが使える
フタにもフチがあるのでフライパンとしてちょっとした炒め物に使えるし、1合分の米を量るのにも重宝する。また、フチがない・フチが浅いフタとは違い、炊飯時に簡単に浮き上がることもない。
小物の整理整頓にも
メスティンは箱形のクッカーだから、バックパックやコンテナボックスに収めたときに無駄な空間が生じにくい。スウェーデン製のカップや食器、アルコールストーブを入れやすく、ソロ用一式をまとめるのにも便利。
覚えておきたいメスティン基本テク5
熱伝導率の高いアルミ製だから、高火力ではなく中火~弱火でじわじわ熱することでムラも焦げもなく仕上がる。素材と形に注目すれば、失敗なく簡単にメスティン料理ができるはずだ。
テク① 2階建てで保温
フタにつまみがないフラット形状なので、缶詰やシェラカップをのせられる。熱伝導率が高いので、保温はもちろん、目玉焼き程度ならつくれる。貴重な燃料を無駄なく使おう。
テク② ときどき混ぜる、動かす
底が長方形なので、四隅はバーナーの火との距離が遠くなる。薄手のアルミなのでムラになりにくいが、不安ならときどき混ぜたり、軽く揺すり、位置を動かすなどしてもいい。
テク③ 炎集中型はパッドを使う
バーナーによっては炎が集中するものがある。さすがに一点集中型では焦げることがあるので、バーナーパッドで熱を分散。弱火が苦手なバーナーの火をわずかに弱める働きもある。
テク④ 焚き火調理は慎重に
焚き火にかけてもいいが、アルミ製のメスティンは長い時間高熱にかけると変形したり穴があいたりする危険がある。強火の遠火にするなど、焚き火での調理には注意が必要だ。
テク⑤ アルコール、固形燃料で自動炊飯
エスビットの固形燃料スタンダードを使えば、ほったらかしていてもご飯を炊ける。アルコールストーブは12~15分燃焼する燃料の量を知っておけば、同様にほぼ自動炊飯できる。
メスティンを手に入れたらやっておくこと
購入後はバリ取りが必要
サイズ・素材違いのメスティンが販売されているが、アルミ製のメスティンはフタや鍋の切り口にバリが残っていることも。購入後は紙やすりでなめらかにしておこう。できれば軍手をして作業するとケガの心配がない。
シーズニングで焦げ防止
そのまま使ってもいいが、アルミ臭が気になることも。大鍋に米のとぎ汁を注ぎ、メスティンを煮て膜をつくることで匂いを防ぎ、焦げ付きにくくなる。大鍋がないならメスティンでとぎ汁を沸かすだけでもいい。
※こちらの記事はGARVY2021年10月号に掲載したものを再編集したものになります
写真:逢坂 聡
文:大森弘恵
出典:GARVY2021年10月号