【概要】スズキ・マイティボーイでハンモック泊を楽しむ車中泊の達人を紹介。旧車をレストアし、ハンモックキャリアを自作して、車中泊キャンプに出かけている。

今回の「車中泊の達人」は超個性派!

レストアでお色直し! 昭和、平成を経て令和に蘇ったこだわりの一台!

オーナー:麻婆さん

スズキのマイティボーイの“お尻”でハンモック泊を楽しむ麻婆さんは、個性的な旧車のレストアが得意なカラフルトランクキャンパー。

関東圏でキャンプコミュティを立ち上げる行動派でもある。なんと今回、カーネルでは5年ぶりの取材となった。

天幕や食料、キャンプギアなどは基本的にトランクひとつに収まるように心がけている。クラシックなカバンのチョイスやかわいらしいブタの鍋つかみなどに、旧車オーナーらしい人柄とこだわりがうかがえる。

マイティボーイは「スズキのマー坊とでも呼んでくれ」が当時のCM のキャッチコピー。若者の遊びの幅を広げることをコンセプトに、スズキから発売された個性的な車だった。その販売期間は、1983年~1988年と意外に短い。

「吊床のマー坊とでも呼んでくれ」

自作のハンモックキャリアで車中泊キャンプを楽しんでいる麻婆さん。

小さな旧車にハンモック。純粋に「おもしろい」。すぐにオーナーの「麻婆」さんに連絡をとって話を聞いてみた。

すると、実はその昔、軽バンで車中泊をしていて、カーネルに載ったことがあるそうな。それが、なぜいま、このスタイルに?

「最初は、軽バンをいろいろイジって楽しかったんですが、いざ快適な車中泊を手に入れたら満足しちゃいました」

3年前に手に入れたときはこの状態だった。荷台も錆がひどく、穴まであったという。車内もきれいとはいえない。ここから内外装ともに一新し、自らの手でひとつひとつ、現在の愛らしい姿へと変貌させた。

早々に車を買い替え、3年前に自分でレストアを開始。

「古くて小さい車が好きだから、スズキのマイティボーイを選びました。最初はトラック部分にキャンパーを自作して乗せようかとも思ったのですが、開放感がほしくて。だったら、いっそハンモックにしようかなと」

明るい色のシートカバーとフローリングシートを採用して、がらりと印象をチェンジ。ダッシュボードはもともとプラスチック製なので、缶のカラースプレーで十分塗装可能。

海外製のハンモックキャリアがあるのはわかったが、ヒッチに付けるタイプで大きい。日本製の小さな車では幅も高さも足りなかった。

すぐさまホームセンターに駆け込み、荷台から伸びるような形でハンモックキャリアを自作した。

「やりたいと思ったら、すぐやっちゃうんですよね」

ハンモックを支えるのに使用しているのは、太さ32mmの単管パイプ。

走行中はバラして荷台に収納できるようになっている。

実際に、このスタイルでキャンプに行き、ハンモックで寝起きを楽しんでいる。

スタンダードな車中泊とはひと味違うが、愛車で楽しく寝ようというこの前向きな姿勢には恐れ入る。

横から見た姿。パイプにプラスして荷締めベルトを使うことで、さらに頑丈になり、重みでゆがむことを予防できるようになった。

さらにタープを張って外側からの視界と日光を遮り、コンパクトなプライベート空間を確保している。

旧車とハンモック。これはさしずめ「車宙泊」。ロマンあふれる(⁉)スタイルだが、麻婆さんは往年を懐かしむだけのコレクターではない。

このスタイルが確立したら、また違う車をレストアし、驚く方法で寝ていそうな……。「僕もそんな気がします!」。こちらの質問に食い気味に答える麻婆さん。

サイドの車名はデザイナーの友人による手書き。ドアの内張りも、ダッシュボードと同じ雰囲気の合皮を使用して、ぐっと締めた。

近い将来、新たな車との付き合い方を見せてもらいに、この遊びが上手な「少年」を訪ねるのが楽しみになった。

文:うめの 
出典:カーネルvol.50 2021年夏号