クルマにまつわる最新テクノロジーは、生活に密着した機能に現れやすいという性質から常に注目されている。特にEVが世に登場してからは、その技術をどのように製品に取り込み、どのように活用することができるのか? がとても気になるところ。
そこで車中泊雑誌『カーネル』USAブランチでは、最新テクノロジーと実用的なアイデアを兼ね備えた車中泊に関連するRVモデル、しかもとびきりフューチャリスティックなデザインが施された「CANOO(カヌー)」をピックアップしてみた。
ちまたではTESLA CYBER TRUCKがリリースされ、カリフォルニアでは街中でも見かけるようになってきたが、ここで紹介するCANOOもこれから登場する要注目の新ブランドだ。
“こんなクルマがあればいいのに”を詰め込んだマルチパーパスビークル
EV(エレクトリック・ビークル)の社会における立ち位置が今後どのように変化していくのか。特に最近の報道を見ているとEVの行先不透明感はぬぐえない。
とはいっても、テクノロジーという見地からみれば、現代社会にとってまったく新しい“EV”という存在を築き上げたことは、技術革新の大きな証のひとつであることはまちがいない。
EVという形態の自動車が、我々人類、そしてクルマ好きにもたらしてくれたものはなんだろう。
これは筆者の持論だが、決してCO2の排出量を減らし、環境改善に成功した商品ではないと断言したい。ではその技術革新がもたらした、最も大きな可能性は何か?
それは、エンジンやトランスミッションのロケーションに制限を受けない、自由なメカニカル・レイアウトにあるといっていいだろう。
クルマの走行状態を安定させるためには、基本的に重心は低いほうがいい。そのためにテスラをはじめとする現在のEVの大半のモデルは、フロア下にバッテリーを敷き詰め、ホイールアクスルよりかなり低い位置に重量物を集めている。
これによりクルマのロールは圧倒的に少なくなり、結果としてクルマの安定性、特にコーナリング性能が向上する。
さらに電気モーターはガソリンエンジンと比較しても圧倒的に小型化できるし、前述したとおりレイアウトの自由度が高い。
こうした設計の自由度の高さこそ、EVが自動車にもたらす恩恵の最も優れたところだといえるだろう。
そしてそれらはハイスピードで走るスポーツカーだけでなく、室内レイアウトやラゲッジスペースの確保に勤しむ、RVやトラックをデザインするときにも大きなメリットとなるのだ。
さて、そんななかで今回紹介するのがCANOO(カヌー)。2017年に立ち上がった南カリフォルニアのメーカーは、その自由なプラットフォームを活かして、複数種のRVやピックアップ、デリバリートラックを作り出した。
テスラがEVという新しいカテゴリーのコンセプトにしているラグジュアリー感を、全面には出さず、もっと実用的な日常の足として、仲間との気軽で快適な移動手段として完成させたのだ。
加えて、本格的なキャンプを楽しむためのRVギアであり、さらに大量の荷物を運搬するトラックとしての機能=実質的な使い勝手のよさを、高いレベルで満足させてくれる“道具”として完成させている。
航続距離や充電、バッテリーの寿命など、EVとしてのデメリットももちろん考えなくてはならない。しかし、まずはEVの長所を活かした自由なレイアウトによるルーミーな空間を見てほしい。
さらに使う人が欲しくなる気の利いた装備の数々、そしてなにより豊かなデザイン力が生み出した、この未来感あふれるスタイリッシュなボディフォルムに注目したい。
カヌーには、さまざまな魅力と可能性が詰まっている。
タフなオーバーランド・ピックアップ「アメリカン・ブルドッグ」の魅力
駆動方式は、2WDと4WDからセレクト可能。トルクフルなモーターパワーを活かし、ラフロードでのパフォーマンスも高い。
ピックアップやLVなどの各モデルに採用される、モジュール式のプラットフォームは、EVといっても完璧な防水仕様となっている。そのためフィールドを選ばず、多少の水深なら走行可能。
オーバーフェンダーから少しはみ出したタイヤが、アメリカン・ブルドッグのタフなイメージを向上させる。ラフなデザインの荷台回りもクールだ。
ベンチ式のフロントシートを採用している。他モデルと異なり、インテリアにもダイナミックなデザインが施される。
スペアタイヤを荷台前方の左端に搭載している。これはドライバーのプロテクションをわずかでも向上させるという、細かい狙いがあるそうだ。
文:Yusuke Makino(カーネルUSAブランチ)
Canoo Technologies
(カーネル2024年5月号vol.66より)