車中泊を楽しむユーザーとともに歴史を刻んできたヴィンテージカーといえば、フォルクスワーゲンのヴァナゴンをイメージする人が多いだろう。
その魅力的な存在感は、今なお人々を惹きつける不思議な力を宿す。時には、オーナーのライフスタイルを大きく変えてしまうこともあるのだ。
オーナープロフィール 東屋雅美さん
RR駆動のクルマに乗り続けてきたクルマ好き。なのでFF駆動になった新しいヴァナゴンには興味がないとも。ヴァナゴンニッポンメンバーズクラブの立ち上げメンバーでもあり、いろいろなイベントを開催してきた。
ライフスタイルを変えたウェストファリア
抜けるような青空に映えるフォルクスワーゲントランスポーター。世界中の車中泊ユーザーが注目するクルマともいえるだろう。
そんなクルマに30年以上前から乗り続けているのが東屋雅美さん。数々の思い出とともに、ライフスタイルのベースをこのクルマと築き上げてきた。
ヴィンテージスタイルでおなじみの、フォルクスワーゲンバスの流れをくむモデルで、ヨーロッパではカラベル、北米ではバンとワゴンを合わせたヴァナゴンと呼ばれていた。
東屋さんのクルマは北米仕様のヴァナゴン。架装メーカーの名を冠したウェストファリアがキャンピングカーであることを意味する。
クルマ好きだった東屋さんが初めてヴァナゴンを意識したのは1990年のこと。ふと手にしたアウトドア雑誌でヴァナゴンと出合った。
「ショップの方が表現していた『ポルシェバン』という言葉に惹かれました。コンパクトなボディにRRの走り。そんなクルマに乗ってみたいと思ったのがきっかけでした」
すぐにクルマを探したが、新車は車両価格が高く、中古は出てこなかったという。
そこで、友人に頼んで、カリフォルニアからクルマを輸入することに。そして、ようやく手に入れたのがこのクルマだった。
それまで、キャンプなどに行くこともなかったが、ヴァナゴンを手に入れてからは、アウトドアを楽しむようになった。
その後、ヴァナゴンのオーナークラブを立ち上げ、ミーティングなどを企画し、仲間も増えていく。
こうして、東屋さんのライフスタイルは1台のクルマで大きく変化することになったのだった。
仕事にもレジャーにも、いつも一緒にいるクルマ
クラシカルなデザインのクーラーボックスが置かれていたり、クルマが生まれた’80年代を再現したような、のんびりとした雰囲気が漂う車内。
ラゲッジスペースに収められたキャンプ道具なども、クルマに合わせたカラーがセレクトされている。
そのこだわりのキャンプ道具たちは、クルマへ積み込んだままの状態。いつでも出かけられるようになっているということだ。
気軽に出かけられることで、アウトドアフィールドへ行く機会も増える。そして、徐々にアウトドアアクティビティが趣味になっていったという。
荷物がたくさん載るので、トランスポーターとして使ったり、仕事に使うことも多い。仕事現場では、休憩スペースとなることも。
ポップアップルーフを上げて、スタッフが着替えをしたり、他のクルマではできない使い方が重宝されている。
長年、寄り添ってきたこともあり、調子の悪いときもあった。子どもと一緒にキャンプへ行って、エンジン不具合で、目的地に着かなかったこともしばしば。
最終的には、エンジンをスバル製に換装している。いまでは一般的なカスタムだが、当時は国内初の試み。ハーネスを引き直し、手探りで実現したカスタムだった。
RR駆動のクルマが好きで、ワーゲンビートルなどに乗っていた東屋さん。クルマの楽しみは「走り」がメインだったが、それが少しずつ変化していくことになったようだ。
「ヴァナゴンに乗ったことで、アウトドアを始めるきっかけとなりました。また、クルマのおかげで、たくさんの仲間と知り合いになれたことも大きな収穫でした」という。