2023年9月15日、栃木・那須高原のキャンプ場「キャンプ・アンド・キャビンズ」の世界観を丸ごと再現したキャンプ場が山梨・山中湖に誕生した。その名は「キャンプ・アンド・キャビンズ山中湖」。
山中湖より西へクルマで約5分ほど進んだ雑木林につくられた「キャンプ・アンド・キャビンズ山中湖」は敷地面積約10万㎡。
「キャンプ・アンド・キャビンズ那須高原」の約2倍もの敷地面積で、全体的にゆったりしたつくりとなっている。
開発のきっかけは、ファミリーキャンプにハマった妹尾さんが各地のキャンプ場をめぐっていた際、キャンプ・アンド・キャビンズ那須高原で衝撃を受けたことから。
「家族連れなので施設が整ったキャンプ場を訪れていました。キャンプ場ではサイト内で過ごすのが当たり前だと思っていましたが、キャンプ・アンド・キャビンズはキャンパーみんなが集まって楽しんでいることに感激。
三菱地所は多くの人が集まる場所に敏感でして。なんとかこの雰囲気そのままのキャンプ場を作れないかと、キャンプ・アンド・キャビンズ那須高原を運営する池上さんに相談したんです」(妹尾さん)
コロナ禍のキャンプブームにより、小規模のグランピング施設やキャンプ場があちこちに誕生している。
なかには届け出がないまま運営しているグランピング施設もあるとかないとかで、富士山周辺でも頭を悩ませているようだ。
そういった事情もあり、キャンプ・アンド・キャビンズ山中湖のような大規模開発は、なかなか大変な面があったようだ。
たとえばキャンプサイト。
素人⽬には⽊を切って区画割りをすればそれですむように思えるが、そんな単純な話ではない。
「もともとは雑⽊林。そのままでは密ぎるので、キャンプ場としての利用は難しいものの、すべての木を切ってしまうと雰囲気がなくなってしまう。森林内のすべての木を1本1本調査し、どの⽊を残すか検討して間引きました」(妹尾さん)
もっとも、残した木がサイトとサイトの間にくるように考えたつもりが、森林の中で図面を見ながら手作業で進めたため、実際には少しずつズレて、サイトの中に木が残る場所が生まれたとも。
キャンプ・アンド・キャビンズ山中湖は、家族にうれしいサービスが盛りだくさん
キャンプ・アンド・キャビンズは、「キャンプ“も”できるキャンプ場」といわれるほど、イベントがたっぷり用意されている。
那須高原でも大人気のパワーストーンを発掘する「クリスタルハンター」。宿泊中に全員が体験できるよう洞窟もでっかくなっているという。
週末の昼時に開催されるのは、山中湖村の精肉店から取り寄せた肉を使った「ハンバーガー作り」。
パテ1個分の肉が入ったビニール袋を配られるので、よくこねて焼くだけ。小さな子と参加できる。
なお「ハンバーガー作り」は事前予約制なので、サイトが予約できたらできるだけ早く予約しておこう。
ハンバーガー作りやピザハウスなど食事も充実しており、手をかけずに腹ごしらえができるのはうれしい。
名物「100円モーニング」(週末)もあるので、積極的に利用して思いっきり遊ぼう。
暑い時期はなんといってもじゃぶじゃぶ池が楽しい。
自由に水遊びできるじゃぶじゃぶ池だが、5月ごろから9月末は、夕方になると子どもたちのテンションが爆上がりする「超スーパーボールすくい」を開催。
当たりと書かれたスーパーボール(5個のみ!)が手に入れば、特製缶バッチ(非売品)と交換できるので親の声援も高まるばかり。
じゃぶじゃぶ池を取り囲むようにテーブルとベンチが並んでおり、それらは自由に使える。
そばに湯沸かしポットがあるので、遊んでいる子どもたちを見守りながらお茶を楽しむのもよし。離乳食作りにも使えそう。
みんなが集まるじゃぶじゃぶ池のそばには、背の低いシンクを用意。子どもが無理なく手洗いできるようになっている。
炊事棟では温水を使えるほか、BBQグリルや鉄板を洗える背の低い水場を用意。電子レンジもある。
キャンプ初心者はテント設営だけでも大イベント。電子レンジやポットなど“逃げ道”があれば、もっと気楽にキャンプができるというわけ。
それにピザハウスでは窯焼きピザ、売店ではステーキ肉やモツ煮、リゾットなどメニュー別の食材キットが販売されている。
用意していたのに食べ盛りの子どもにはちょっと足りなかった……なんてときにも重宝するサービスだ。
ペット連れは、ウッドチップを敷き詰めた専用ドッグラン付きキャビンを選択するのもいいだろう。ペットの脚を傷めることなく思いっきり走らせられるのだから。
じゃぶじゃぶ池やキッチン、炊事棟はペット進入禁止だが、そうした場所にはリードをかけられるフックが装備されている。そんな配慮もキャンプ・アンド・キャビンズらしさ。
場内には風呂(無料)やコインシャワー、コインランドリーがスタンバイしており、長期滞在も快適だ。
風呂とシャワーには備え付けのシャンプー、タオルはないがドライヤー完備。さらにシャワー室の足拭き用バスマットは自分で交換できるので、気持ちよく使える。
宿泊施設はゆったり&手間いらず
「オートキャンプサイト」はスタンダードなサイトで90〜105㎡。
110〜130㎡の「チョイ広めオートキャンプサイト」なら、大型テントでも余裕で張れそうだし、「広めのオートキャンプサイト」(140〜170㎡)ならクルマ2台+2ルームテントを2張り張れるので、仲良し家族でお得に利用できる。
そのほか、温水シンクとトイレ付きの「プレミアムオートキャンプサイト」、柵で囲まれていてリードなしでペットと過ごせる「ドッグキャンプサイト」がある。
どのサイトにも電源とハンモックや物干しに使える「キャンポール」付きで、電源も20Aという余裕の容量。
もちろん、キャンプ・アンド・キャビンズらしさ全開の屋根付きテントサイトも用意されている。
「キャンプ・アンド・キャビンズはイベントが豊富なキャンプ場です。テントだけ建てて遊びに行けるよう、屋根付きスペースを設けたオートキャンプサイトを作りました」(池上さん)
那須高原でも人気のキャンプサイト「GARAGE」。シャッターは自動で開閉できるので「開けゴマ!」と唱える子どもたち多数。
GARAGEの中にはカウンターやデッキがあるし、シャッターを閉めても出入り用のドアが付いている。なんならこの中にコットを置いて、テントなしで眠るなんてことも可能だ。
おまけにガレージの隣にはトイレと温水キッチンも装備しているので、コテージ感覚で利用できる。
屋根付きスペースにバーカウンターや冷蔵庫が付いたオートキャンプサイト「語らい」は、野外料理が好きなファミリーに人気。
一方、キャビンはキャンプ・アンド・キャビンズ那須高原を象徴する屋根のデザインを継承しており、ファンにはなじみが深い。
キャンプ・アンド・キャビンズ那須高原の前身は、1997年にオープンしたアメリカ発キャンプ場フランチャイズ「KOA」の日本最初の施設。
現在は独自の運営となっているが、印象的な屋根のキャビンやキャンパーズキッチンはKOAのキットをそのまま使っているのだ。
キャンプ・アンド・キャビンズ那須高原の世界観をそのまま持ちこんだキャンプ・アンド・キャビンズ山中湖では、国産の木材を用いてキャンプ・アンド・キャビンズのイメージをオリジナルで再現したという。
こちらは那須高原にはない2階建て「コテージ」。2家族でのんびり過ごせるようになっているのがニクイ。
場内の通路は那須高原よりも広く、バスコンが通れるほど。ダンプステーションもあるのでキャンピングカー利用も無理がない。
オープン直後かつサイト数が多いため、キャンプ・アンド・キャビンズ那須高原より予約を取りやすいことも見逃せない点だ。
今後、積雪や気温などを考慮しながら設備をカスタムしていくそうで、那須高原とはまた違ったイベントやサービスが生まれるかも? そんな“進化”も期待できるキャンプ場の誕生だ。
キャンプ・アンド・キャビンズ山中湖
住所:山梨県南都留郡山中湖村山中287-1
写真、文:大森弘恵
執筆者プロフィール
大森弘恵……キャンプを中心としたアウトドアや旅の雑誌、ウェブメディアなどで活動するフリー編集者&ライター。キャンプの仕事に携わること約30年、ソロキャンプ歴は36年のおひつじ座 。