蚊やハエはもちろん、日常生活よりも自然にグッと近づく車中泊の旅では、イヤな虫との遭遇が高まる。うっかり近づいて痛い目に遭う前に、ヤツらの行動を知って対策を施しておきたい。
気温がだんだんと上がり、アウトドアでも過ごしやすい季節がやってきた。そうなってくると気になるのは「虫」との遭遇。
とくに夏の車中泊では、ちょっと気を抜くと不快な虫が車内に入ってしまう。完全に虫と遭遇しないようにするのは難しいが、虫対策では敵を知り、イヤな虫がいそうな場所に近づかないことが一番の予防だ。
何はなくとも避けたいのが手入れされず草が生い茂った草むらや藪だ。整備されたキャンプサイトに泊まっていても、焚き付けを探しに草むらに足を踏み入れることがあるわけで、こうした場所では蚊ばかりかマダニに嚙まれることすらある。ジメジメしている場所ではひっそりヤマビルが潜んでいることも。
草むらを歩いたあとはマダニやヒルが食いついていないか確認。子どもやペットもチェックし、ヒルの場合は塩をふり、マダニの場合は専用のピンセットで取り除こう。
また、きれいな水辺にはブユやアブ、ヌカカが、よどんだ水には蚊やユスリカが発生しやすい。ムカデなどは車外に置きっぱなしにした靴に潜んでいることがあるので、靴を履くときにも確認しよう。
こうした“いかにも”な場所ではもちろん、絶対に虫の被害を避けたいなら虫よけ剤を肌に塗り広げ、ゆったりしつつ、袖や裾が絞られた洋服でカバーする。蚊取り線香など空間ごとバリアすれば満点だ。
なお、炎天下の車内にエアゾール缶を置くのは、破裂のおそれがあり危険。車中泊の旅ではミストやジェルタイプの虫よけを選ぼう。
虫に要注意の6つのスポット
フィールドで虫が潜んでいる代表的なスポットと、そこに潜んでいる虫の種類を紹介。合わせて予防法や刺され/嚙まれてしまったときの対処法などもチェック!
水辺
→ブユ(ブヨ)、アブ、ヌカカ、ヤマビル
服や帽子で肌を隠し、虫よけ剤を肌に塗るのが基本の対策。それでも嚙まれたら毒を絞り出して洗い、必要なら抗ヒスタミン剤(かゆみ止め)を塗布。ブユに嚙まれたときは温めるといいというが、ほかの虫同様、氷などで冷やすほうがいい。
牧場
→アブ
ブユと同じく嚙む虫だが、ブユよりも体長が大きく、種類によっては水辺だけでなく牧場にもいるのがアブ。ハチやブユ同様黒い色に反応するので、できるだけ白っぽい服装と帽子を着用。万一嚙まれたら患部を洗って冷やして薬を塗布。
朽ち木、落ち葉
→ムカデ、スズメバチ
石垣、落ち葉や朽ち木の空洞に潜んでいるので近づかない。クルマの外に置いていた靴は、中をしっかり確認してから履こう。なお、ハチは黒いモノを攻撃する傾向があるので、白い服や帽子を着用。万一遭遇しても騒がず、そっと逃げよう。
草むら、藪
→マダニ、蚊、ヌカカ
ヌカカも蚊も朝夕に動きが活発になる。マダニも朝夕に草の先に上って動物を待つので、この時間帯は近づかない。ヌカカに嚙まれたら時間をかけて冷やすように患部を洗おう。マダニに嚙まれたら丸ごとダニを取って病院へ。
小さな水たまり、側溝
→蚊・ユスリカ
空き缶やタイヤの内側といった小さな水たまりでも蚊が発生する。明るい色の服で肌を隠し、こまめに汗をふくほか体温を抑えるように気をつける。ユスリカは嚙まないけれどうっとうしいので、虫よけをぶら下げておこう。
海辺
→ヌカカ
ヌカカは見た目がブユに似た小さくて刺す虫。ヌカカは渓流だけでなく草むらや海沿いにもいる。体長1.5mm程度でちょっとした隙間から入り込むので、活発な朝夕は肌を隠したうえで首筋にタオルを巻くのも効果的。
ふたつのバリアで虫対策
空間をバリア
蚊取り線香に代表される、薬剤を空間に広げるタイプの虫よけで、蚊やイヤな虫の侵入を妨ぐ。
車中泊ではよく開ける各ドア付近に蚊取り線香や虫よけを吊るし、車内にコンセント不要の蚊取りを置いて徹底的に防ぎたい。
甘い香りはハチを呼び寄せるのでジュースの飲み残しなどを放置しないことも大切だ。
身の回りをバリア
半袖短パンではなく洋服でカバー。さらに虫よけ剤を肌に塗り広げてバリアする。
なお、新しい虫よけ成分イカリジンは年齢による使用制限がないが、蚊、ブユ、アブ、マダニ以外には忌避効果がない。
ディートは年齢制限があるものの使用実績が長く、正しく使えばヤマビルやサシバエなど幅広い虫に効果が期待できる。上手に使い分けよう。
虫よけをスプレーしたら手で塗り広げる。これを怠ると虫は塗り忘れを目指す。顔まわりは手にスプレーして塗るといい。
ヤマビル対策はディート使用の虫よけ剤を洋服にもスプレーしておく。靴や靴下に塩水を振りかけておくのも効果的。
文:大森弘恵
初出:カーネル2022年7月号vol.55