スマートウォッチを手にする人が増えている。MM総研の発表(2022年9月)によると日本での販売台数は2021年度に343万台を突破。
2024年度には500万台規模に拡大すると予想されており、市場拡大とともに特色のあるスマートウォッチが続々登場している。
そもそもスマートウォッチは、スマートフォンと連携させる腕時計型のウェアラブル端末で、いちいちスマートフォンを取り出すことなくメールやSNSの確認や各種アプリを操作できるのが利点だ。
また、手首に装着することから心拍数や血中酸素濃度を測定できるものが多く、健康を可視化することで健康を意識しやすくなることも人気の理由だ。
Amazfit(アマズフィット)はコスパのよさとロングバッテリーに定評があるブランドで、なかでもアウトドアに特化した「T-Rex2」は耐熱性70℃、耐寒性-40℃、耐塩水噴霧性96時間、耐湿性240時間など15もの軍事規格準拠であり、最大24日間可動というタフさが人気のモデル。
ルートインポートとナビゲーションにも対応するようになり、スノーハイキングでより使いやすくなったと聞き、試してきた。
ルートを持ち運んで道迷いの不安を低減する
「T-Rex2」の見た目はご覧のとおり、タフな腕時計をイメージする精悍なデザイン。文字盤は背景を自分で撮った画像に変えたり、もっとシンプルなデザインに変えたりもできる。
ケースは47.1×47.1×H13.65mmでゴツく見えるが、重量はストラップ込み66.5gと軽量だ。
「T-Rex2」の目玉であるルートインポートとリアルタイムルートナビゲーション。
Googleマップでルートを作りGPXデータに変換するか、登山コミュニティサイトなどで登山ルートのGPXデータを入手し「マイルート」に取り込めるのが「ルートインポート」。
「リアルタイムルートナビゲーション」は、ハイキングなどの出発前に「マイルート」の使いたいルートを選択すれば、ディスプレイ上でどちらの方向に向かえばいいか案内してくれるというもの。
うっかりコースから大きく外れるとアラートで教えてくれるので、道迷いの不安を大きく低減できる頼りになる機能だ。
雪原を歩くスノーハイキングの場合、地形図とコンパスを頼りにするしかないわけだが、あらかじめルートのGPXデータが手に入り、ナビゲートしてくれるなら目印が少ない場所であっても大きな手がかりとなる。これは安心だ。
「T-Rex2」の場合、一番電池を消耗する高精度GPSモードでも最大26時間駆動するので日帰りのスノーハイキングには十分だ。
とはいえ、どんなにバッテリー自慢であっても油断は禁物。地形図とコンパスは忘れず携行しよう。
よく行くコースを友だちと共有するために「T-Rex2」で記録するという使い方もありだろう。
「T-Rex2」に搭載されている「運動」から「ハイキング」を選び「GO」ボタンを押すとルート記録がはじまる。
ルートの記録をGPXデータにして友だちに渡せばコースを共有できる。ハイキングのほかに釣りや自転車ツーリングにも使えそうだ。
もちろん自分のデータをためていけばオリジナルの活動記録ができるし、次回のアクティビティで大いに役立つ。
記録されたルートはスマートフォンに入れたZEPPアプリの地図でも確認できる。
以前は「Strava」など別のアプリと連携する必要があったが、ひとつのアプリで「T-Rex2」の設定も地図でのルート確認もできるようになったのは便利。
Androidスマートフォンであれば「ナビゲーションWear」に対応する。
もちろんスマートフォンの地図アプリを見ながら歩くほうがイメージしやすいが、たとえば海外など治安がよくわからない場所を歩く場合に重宝しそう。iPhoneには対応しないのが残念。
着信のブザー通知、リモート撮影が思いのほか使える
ルートの記録、ナビゲーションのほかにもコンパスや気圧高度計、天気予報などアウトドアアクティビティに必要な基本機能は搭載されている。
気圧高度計は「嵐アラート」を設定できる。急激な気圧変化を検出すると知らせてくれるという機能。
お守りがわりになる便利な機能だが、スキーやスノーボードのように何度もリフトやゴンドラを使って山頂を目指す場合、かなりの頻度で通知が届いた。
ハイキングや釣りでは便利な「嵐アラート」だが、ゲレンデでのスキーやスノーボードでは通知を切っておく方がわずらわしくない。
「T-Rex2」では連携させたスマートフォンのメールやSNS、着信をバイブレーションで知らせてくれるが、着信に限りバイブレーションのほかにブザーでの通知も選択できる。
スノーボードでも使ってみたが、遊びに集中しているとバイブレーションの通知は見逃しがち。ところが着信のブザー通知も併用することで見逃しが減少した。
待ち合わせなど簡単な連絡はSNSでやりとりすることが多いので、SNSの通知もブザーを使えればいいのだが。
「T-Rex2」をいじっていると、「その他」に「リモート撮影」という項目を見つけた。
その名のとおり、スマートフォンのカメラで撮影する際、リモコンになるというボタン。
集合写真を撮るとき、タイマーをセットして走って戻るなんてことをしなくてすむ。後付のリモコンをいちいち取り出すことなく「T-Rex2」でサッと準備できるのがうれしい。
健康管理に定評のあるAmazfitだから、「T-Rex2」でも睡眠の質を可視化してくれる。
テント泊や車中泊では、音や明るさ、マットレスの硬さなどいつもとは違った刺激があるためだろう、いつもと同じ睡眠時間であっても疲れが残りやすい。
毎日の睡眠との違いを知っておけば、アクティビティや運転時に無理せずこまめに休憩を取ろうと意識する。これも「T-Rex2」のメリットと言えるだろう。
そもそもスマートウォッチはスマートフォンのOSがアップデートされるといずれ対応できなくなる。
電池の劣化か、OS非対応になったら買い換えのサイン。そう考えると寿命は3〜4年といったところで、実勢価格3万円台の「T-Rex2」は価格的魅力が大きく初めてのスマートウォッチとして手にとるのにちょうどいい。
「T-Rex2」は交通系をはじめとする決済には対応していないし、Androidスマホであればあらかじめ登録した定型文を使ってLINEへの返信や着信へのSMS返信ができるものの、iPhoneとの連携では通知のみ。
この2点が残念な点ではあるが、水泳に耐えうる耐水性、電子機器が苦手な寒さ・蒸し暑さにも耐えうるタフ設計に、待望のルートインポート&ナビゲーションほかアウトドア活動をサポートするには十分な機能とロングバッテリーを備えている。
スノーハイキングやトレラン、釣り、カヌーといったアクティビティのお供に連れ出すと“価格なり”ではなく“価格以上”だと実感するはずだ。
価格:3万5800円
【問】Amazfitカスタマーサポート
☎03-5809-1570 info@amazfit.jp
執筆:大森弘恵
キャンプを中心としたアウトドアや旅の雑誌、ウェブメディアなどで活動するフリー編集者&ライター。キャンプの仕事に携わること約30年、ソロキャンプ歴は36年のおひつじ座 。
写真、文:大森弘恵