【概要】避難としての車中泊について、車中泊専門誌『カーネル』編集長のコラム。防災と車中泊がテーマのカーネル別冊シリーズや『車中泊スタートブック』発行の背景など。

熊本地震で注目を集めた避難としての車中泊

画像: 『カーネル』誌面に大きな影響を与えた熊本地震の被災地取材。

『カーネル』誌面に大きな影響を与えた熊本地震の被災地取材。

近年において、「車中泊」という言葉が最もメディアを賑わしたのは、2016年4月に起こった熊本地震ではないだろうか。

震度7の地震が2回、震度6強の地震が2回、震度6弱の地震が3回も発生した。余震も多く、眠れない夜を過ごす被災者たちを映し出した映像が、記憶に残っている読者も多いことだろう。

そんな熊本地震が大きく報道された理由のひとつに、車中泊避難がある。

画像: 熊本地震で被災し、実際に車中泊避難をされていた方のクルマ。

熊本地震で被災し、実際に車中泊避難をされていた方のクルマ。

建物の崩壊がひどく、余震も続くなか、自宅に帰ることもできない被災者たち。本来ならば避難所に入るべきところであったが、その避難所も崩壊しているところも多く、「車中泊を選択しなければいけない」状況となった。

そんななか、エコノミークラス症候群を発症する人が続出。女性ひとりが亡くなっている。

そこで大きく報じられたのは、「車中泊=エコノミークラス症候群=危険」という方程式だ。

あたかも「車中泊が悪」と強調するメディアも多く、いまでも当時の印象で、「車中泊はしてはいけない」と我々に話す人も多い。

しかし、である。車中泊専門誌の立場から言わせていただくと、それは「正しい車中泊の知識と準備がなかった」だけで、車中泊が悪いわけではない。

でなければ、もう15年も続けている車中泊専門誌『カーネル』の読者の多くが、エコノミークラス症候群を発症していなければおかしい。

ということで、熊本地震後に被災地を訪問。実際に車中泊避難を行っている皆さんに、正しい車中泊の寝方をお伝えししつつ、困っていることなどを聞いてまわった。

画像: 熊本地震の被災地。

熊本地震の被災地。

その取材とカーネルのノウハウを融合して製作したのが、『安全・快適 車中泊マニュアル』(2016年5月発売)だ。おかげさまで一部コンビニにも置いていただき、重版することもできた。

「車中泊避難ができなければ、避難所にも家にも怖くて入れなかったので、路頭に迷うところでした」という人や「ペットが一緒だったので車中泊を選んだ」という人もいた。

熊本地震において、正しい車中泊の寝方を知らずに、エコノミークラス症候群を発症してしまった人がいたのも確かだ。しかし、逆に車中泊避難ができたからこそ、助かった人もいる。

だからこそ、カーネル別冊の『車中泊スタートブック』(2023年1月発売)では車中泊の基本をしっかりと紹介している。

そもそも我々も、被災時の車中泊を全面的に推奨しているわけではない。というか、クルマによっては、車中泊できない車種もある。

それを知らずに車中泊をすれば、エコノミークラス症候群を発症する確率が高くなるのは当たり前の話だ。

だからこそ、車中泊の知識と準備が大切。車中泊避難が可能ならば、さまざまな理由から避難所や自宅に入れない人でも、数日はしのぐことができる。

つまり、避難生活の選択肢が増えること。これが、カーネル編集部が伝えたいことなのだ。

画像: トヨタが開催した車中泊避難の実践講座。カーネル編集長・大橋も講師として参加。

トヨタが開催した車中泊避難の実践講座。カーネル編集長・大橋も講師として参加。

もう一点。車中泊避難と聞くと、「クルマで避難してはいけない」と説く人も多い。これは「クルマで避難すること」と「クルマを避難所として活用すること」を混同しているため。

我々も「クルマで避難すること」を推奨しているわけではない。あしからず。

熊本地震は、カーネルにとって大きな転換期だったことはまちがいない。楽しいレジャーの車中泊だけでなく、緊急時の車中泊のノウハウを広めること。車中泊の誤解を解くことが、カーネルの使命だと思っている。

文:大橋保之(カーネル)

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