軽トラキャンピングカーで「四国八十八カ所のお遍路」の巡礼地を車中泊でめぐった旅の記録。四国に点在する八十八カ所の霊場巡拝のほか、道の駅スタンプラリー制覇も目指して挑戦。彼の地を車中泊でめぐろうと思っている人へ、少しでも参考になれば幸いだ。旅人/新井芳夫

最終回 34日目、ラストスパート! ついに結願の日を迎える!

2017年3月20日から5月8日までの50日間、全行程6817㎞。四国八十八カ所お遍路ひとり車中泊旅の連載は11回目でついに最終回。結願、そしてその後のお礼参りへ。

※掲載されている情報は2017年当時のものになります。また各札所では新型コロナウイルス感染拡大防止対策を実施中です。お参りの作法など通常と異なっている場合が多いのでご了承ください。

画像: 道の駅滝宮。

道の駅滝宮。

34日目、いよいよ結願の日を迎えます。ひとまずクルマお遍路旅の結願を祈って道の駅滝宮を出発。80番札所・国分寺から参拝です。仁王門の前に無料駐車場があり助かります。

立派な松の木が美しい仁王門から一礼して参拝。仁王門をくぐると左側にミニ四国八十八カ所のお遍路参りができる石仏が並んでいます。こちらへお参りすると、八十八カ所巡礼のご利益があるというもっともらしくも怪しい(?)言い伝えもあり、現代の観光化されたお遍路旅を和ませる逸話もあります。

画像: 80番札所 国分寺。

80番札所 国分寺。

創建当時の遺構をよく残した寺で、境内は国の特別史跡に指定されています。周辺には創建当時の本堂の礎石33個が点々と配置されていて、大規模な寺院建築を物語る史跡や当時をしのぶ案内板もあり、時間を取って参拝するのもお遍路旅の楽しみでしょう。

画像: 84番札所 屋島寺。

84番札所 屋島寺。

84番札所・屋島寺は屋代ドライブウェイを上りながら、4kmほど進んだ先の大きな駐車場に隣接した公園の一画に立地。展望台からは高松市街地や眼下に瀬戸内の島々を眺められます。公園には遊歩道が整備されていますので、時間に余裕がある方は公園の散策もおすすめです。

祝福してくれるように満開の桜がお出迎え

画像: 85番札所 八栗寺。

85番札所 八栗寺。

85番札所・八栗寺は山肌を登る昔懐かしいレトロな赤と青のケーブルカーが運行されており、標高375mの五剣山中腹に位置する八栗寺へと誘ってくれます。かつての「難所寺」の参拝も、楽にお参りができるようになりました。

ケーブルカーの料金は大人が往復1000円、小学生往復500円で15分間隔で運行されています。30分ほどの山道を登るルートもありますが、それは健脚な歩きお遍路さんにおすすめです。私はケーブルカーを利用しました。

晴れている日にはケーブルカーからの高松市街地や麓の町並みの眺望は大変素晴らしく、ゆっくり時間を取った計画をおすすめします。ケーブルカーを降り、境内に向かう道中もなかなか雰囲気があり、散歩感覚で楽しめますよ。

最初に目につく朱塗りの多宝塔、さらに進むと背に五剣山を背負った太師堂、聖天堂、本堂が立ち並び、満開の桜が参拝の人々を迎えてくれました。

訪れた日は土曜日のために観光客の参拝者も多く、お遍路装束の白衣をペットの小型犬に着せて、ペット同伴で参拝する若い家族連れも見かけました。ケーブルカーはペット同伴もOKで、現在の観光化されたお遍路事情が垣間見えました。

午後には、さぬき市の街並みのなかにたたずむ86番札所・志度寺までついに到着。

残すは87番の長尾寺、88番の大窪寺の2寺のみです。自宅を出てから34日目、走行距離はまもなく4500km。今日中には結願を迎えることができそうです! 安全運転を志して参拝しなくては!!

源内のお墓参りに源内うどんと、源内三昧!

画像: 86番札所 志度寺。

86番札所 志度寺。

志度寺の運慶作と伝えられている仁王像と巨大わらじの山門をくぐります。志度湾に面して建立される志度寺は625年開祖の四国霊場屈指の古刹です。また、志度生まれの偉人として有名な「平賀源内」のお墓があります。

讃岐高松藩の蔵番役の家に生を受けた源内、幼少期から異彩を放つ存在でした。天神様の掛け軸の前で徳利を傾けると天神様の顔が赤くなる「御神酒天神」を作った話が有名で、これが評判のもとになり13歳で医薬の学問や儒学を学びます。

その後、長崎留学で蘭学や鉱山技術を習得するなど天才的才能を発揮。マルチプレイヤーとしての数々の活躍が現代にも伝わる偉人です。私も納経の後「平賀源内」のお墓にお参りをしてきました。

さぬき市へ移動し、遅い昼食に本場の讃岐うどんを食べようと、地元の人に近くのおいしいお店を尋ね、おすすめの讃岐うどん「源内」を目指します。

「平賀源内」のお墓にお参りをして、讃岐うどん「源内」を目指すとは、ダジャレのような展開ですね! 次の長尾寺を目指す途中なので、ちょうどいい道筋です。昼食時間を少し過ぎていましたが、店内は多くの人がまだ食事中でした。さすが評判のお店です。

本場の讃岐うどんを堪能することができて幸せになりました。満腹で運転もおろそかになりそうでしたが、安全運転で次の87番札所・長尾寺を目指します。8kmほどの距離で10分くらいの近距離。

長尾寺は山門前を通過して境内横に駐車場があります。街中の札所のため急な階段もなく、楽な参拝ができました。

仁王門に向かうと、広い境内の左側に大きな本堂、右側に太師堂が並びます。仁王門には鐘楼を兼ねた珍しい造りになっています。

ついに最期の札所である88番・大窪寺へ到着!

画像: 87番札所 長尾寺。

87番札所 長尾寺。

門の両側には4mもの高さの大わらじが掛けられています。納経をすませ境内の散策をしながら、御朱印をもらいに納経所へ。土日祝日には長尾寺名物の甘納豆おはぎを買うことができるそうです。

限定品の甘納豆おはぎは午前10時からの販売ですが、売り切れ次第終了。地元の人や観光客、お遍路さんに大人気です。
 
そして16時近くに最後の88番札所・大窪寺についに到着。なんとか無事に事故もなく、結願を迎えることができました! 

画像: 88番札所 大窪寺。

88番札所 大窪寺。

大窪寺の山門をくぐり、本堂、太師堂に万感の思いを込めて納経を行います。境内には多くのお遍路さんたちのグループが、思い思いの結願を迎えて笑顔で喜び合う姿が見られました。

前月の20日に自宅を出発し、車中泊を続けて34日目。訪れた道の駅140駅、お遍路参拝88寺、走行距離4534km。

徳島の1番札所・霊山寺を出て、室戸岬をまわり高知県へ。天候の安定しない雨模様の毎日が続き、山深い遍路寺の参拝の日々……。そして愛媛、香川へとお遍路寺まわりが続きました。

道の駅スタンプラリーも残すところわずかとなり、ひと区切りの一日に。今日は大窪寺を後に、「道の駅しおのえ」(香川⑨)経由で「道の駅香南楽湯」(香川⑰)が目的地です。

34日目のお遍路データ
走行距離 104km(累計4534km)
札所巡り 7打(累計88打)
道の駅スタンプ 4駅(累計140駅)
札所めぐりのルート
道の駅滝宮発→1 80番札所国分寺→2 83番札所一宮寺→3  84番札所屋島寺→4 85番札所八栗寺→5香川⑱(道の駅源 平の里むれ)→6 86番札所志度寺→7 87番札所長尾寺→8 香川⑯(道の駅ながお)→9 88番札所大窪寺→10香川⑨(道 の駅しおのえ)→11香川⑰(道の駅香南楽湯)
※道の駅の丸囲みの数字はスタンプラリーの番号です

弘法大師へ結願のお参りとお札を納めて満願へ!!

画像: 道の駅香南楽湯(香川⑰) 仮眠環境 〇 トイレ環境は普通で深夜の騒音対策が少し必要だが、温泉施設があり、温泉好きにはありがたい。写真/Osami

道の駅香南楽湯(香川⑰) 仮眠環境 〇
トイレ環境は普通で深夜の騒音対策が少し必要だが、温泉施設があり、温泉好きにはありがたい。写真/Osami

5日目からは帰宅の旅路に入ります。昨夜の目的地「道の駅香南楽湯」(香川⑰)を出発し、旅のス
タート地点の1番札所・霊山寺を訪れ、無事にお遍路旅の結願を迎えることができたお礼参りの参拝
をし、ふたつ目の御朱印を頂きました。

その後にちょっと寄り道を。徳島高速で愛媛県の松山までUターンをして、そこからしまなみ街道を目指します。まだ、走ったことがなかったので訪れてみたかったのと、岡山県の倉敷にある「倉敷刀剣美術館」への見学も兼ねて寄り道してみました。

しまなみ海道は今治から広島県 の尾道までの島々を橋で結んだ道路ですが、歩行者と原付バイクが走れる一般道と自動車専用道が併走する、全国でも珍しい道路です。また、海をまたぐ橋ということもあり景色も格別です。
 
そこを楽しんだ後、今度は岡山 から小豆島へフェリーで渡り、道の駅スタンプラリーを続けまし
た。ここで道の駅のスタンプラリーも制覇です。

結願の後は高野山参りが習わし

画像1: 結願の後は高野山参りが習わし

さて、お遍路旅では八十八カ所の巡礼が終わり結願すると、高野山の奥の院へお礼参りに行く習わ
しがあります。これを「高野山参り」と言います。

四国お遍路旅は弘法大師の足跡をたどる旅でもあり、無事に八十八カ所を巡り終えた報告と感謝の気持ちを、お大師様が眠る高野山奥の院へ報告するためです。

高野山では今でも弘法大師様が瞑想を続けていると考えられています。つまり弘法大師は今もなお生き続けているということ。そのため、高野山奥の院へは毎日2回、弘法大師の食事が運びこまれています。

昔から弘法大師への熱い信仰を寄せるお遍路さんが多かったため、今でも「高野山参り」という形で残っているわけです。今回、私もお遍路旅の結願の礼に習い、奥の院にある弘法大師御廟をお参りすることしました。

四国八十八カ所のお礼参りの御朱印を頂くには、弘法大師御廟をお参りします。手水舎(てみずや)で身を清め、御廟橋の手前で帽子を脱ぎ、服装を正し合掌、一礼して渡ります。この先は弘法大師の霊界、聖域となっていて写真撮影は一切禁止。

御廟橋を渡ると弘法大師の拝殿となる燈籠堂が見えてきます。この燈籠堂の地下に、今も瞑想を続けるお大師様がおられると言われています。

燈籠堂はお大師様にお願い事をする拝殿で、お遍路旅の結願のご報告とともに、最後となるお札を納札箱に納めて満願となります。

参拝を終えて御廟橋へ戻り、納経所で満願納経の御朱印を頂きました。納経所では満願納経の御朱印が目当てのお遍路さんも多く、係の人が「四国霊場ご参拝満願おめでとうございます」と声をかけながら御朱印を押してくれます。満願を迎えたお遍路さんたちはみな晴れ晴れとした笑顔に包まれていました。

高野山奥の院へ満願参拝を終えた後、私の軽キャンパーのひとり旅はさらに続き、 自宅を出て50日目、5月8日に無事帰宅。

総走行距離は6817㎞、道の駅スタンプ198 駅を集めることができました。 

これで私のクルマお遍路旅は終わりです。次は読者のみなさんが楽しんでください!

新井芳夫

画像2: 結願の後は高野山参りが習わし

●埼玉県在住
●車中泊歴40年以上
●主な車中泊スポット:全国各地(道の駅が中心)

愛車のスバル・サンバート ラックで四国お遍路旅を楽しむ旅人。実は40年以上も前から国産ワンボックスカーにDIYを施して楽しんできた、車中泊のベテランでもある。

写真・文/新井芳夫
構成/野里卓也
出典/カーネルvol.48 2021冬号

※ご愛読ありがとうございました!

 

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