日本の冬景色を再発見する厳冬期2月ごろの車中泊旅ガイド。白川郷~高山~奥飛騨温泉郷のモデルルートや見どころ、注意点、車中泊情報など。

ルートの概要 ライトアップに固執せず、日本の原風景を楽しむ

画像: ルートの概要 ライトアップに固執せず、日本の原風景を楽しむ

四季折々の装いで「日本の原風景」を奏でる白川郷。特に合掌造りがその真価を発揮する厳冬期は際立って美しく、ライトアップは今や白川郷には欠かせない冬の風物詩になっている。
※2021年の白川郷ライトアップイベントは中止になりました

しかしあまりの人気ぶりに、近年はその本質すら見ることもままならなくなっているようだ。

画像: 合掌造りの中には民宿も ある。

合掌造りの中には民宿も ある。

だが、ライトアップの日さえ外せば、白川郷にはまだ「日本昔ばなし」に描かれた、どこかに懐かしさを覚える光景を見いだせる場所は残されている。

白川郷の次は、町の中に「日本の原風景」が残る高山をガイドしよう。高山は屋内にも見どころがそろい、多少天気が荒れても安心だ。

画像: 足湯で雪見ができる平湯温泉。

足湯で雪見ができる平湯温泉。

その高山で車中泊して、翌日は山岳地帯に足を延ばし、今度は自然が描く「冬ならではの日本の原風景」を訪ねる。奥飛驒温泉郷も白川郷と同様、ライトアップに固執しないほうが、その本質に迫れるかもしれない。

1泊2日の車中泊旅 白川郷~高山~奥飛騨温泉郷のモデルルート

【スタート】道の駅白川郷
 ↓ 約3㎞ 車で5分
城山天守閣展望台
 ↓ 約3㎞ 車で5分
白川郷せせらぎ駐車場
 ↓ 約50㎞ 車で50分
高山市営天満駐車場【車中泊】
 ↓ 約36㎞ 車で45分
平湯大滝
 ↓ 約1.5㎞ 車で3分
【ゴール】ひらゆの森

白川郷エリア

画像: 白川郷エリア

正式名称は「白川郷・五箇山の合掌造り」で、1995年12月に世界遺産に登録された。

評価されたのは、長年にわたって豪雪地帯の大雪に耐え続けた家屋と、集落を取り巻く自然の景観。季節を問わず、訪れた人の誰もが「日本の原風景」という表現にうなずく情景が、今も変わらずそこにはある。

道の駅白川郷併設の「合掌ミュージアム」

画像1: 道の駅白川郷併設の「合掌ミュージアム」
画像2: 道の駅白川郷併設の「合掌ミュージアム」

最初に立ち寄りたいのは、道の駅白川郷に併設された博物館「合掌ミュージアム」。入り口は売店の中にある。旧手塚家の合掌造り民家を屋内に移築して一部を解剖展示。合掌造りの仕組みが多角的に見られるようになっている。入場無料。

さらに合掌造りについて知りたいなら「神田家」へ

画像: さらに合掌造りについて知りたいなら「神田家」へ

道の駅白川郷から車で6分ほどの場所にある有料施設。合掌造りの中が見学できる。神田家の二階では、かつて養蚕が行われていたといい、古い農工具や生活道具が展示されている。

スノコ状の床は下にある囲炉裏の煙を二階に上げるための工夫だ。

城山天守閣展望台

画像: 城山天守閣展望台

周囲の山々に挟まれた小さな盆地に息づく、合掌造り家屋の集まる荻町集落。ロケーションとともに観ることで、世界文化遺産としての価値を再認識することができるおすすめの場所。ただしライトアップ日はマイカーでのアクセスが禁止。専用バスの事前予約が必要だ。

高山エリア

画像: 人力車が絵になる三町の重要伝統的建造物群保存地区。

人力車が絵になる三町の重要伝統的建造物群保存地区。

白川郷から高山の市街地まで車で約1時間。ライトアップに固執しないなら、午前中に白川郷を見て、昼頃に高山に到着するのが理想的だ。昼食には飛驒牛から高山ラーメンまでいろいろそろう、高山のほうがおすすめだ。

さて、江戸時代以来の城下町・商家町の姿を保存する高山は、その景観から「飛驒の小京都」と呼ばれ、これまでに二度『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で3つ星を獲得してきた。とりわけ人気なのは、三町の重要伝統的建造物群保存地区だが、この季節はインドアスポットに注目したい。

冬の高山のおすすめコンテンツは「匠」

高山に関する資料やガイドブックを見ると、「町屋建築」「民芸品」あるいは「グルメ」のように、「縦割り」で紹介しているものが大半を占める。

だが、実際の観光は同じ類のものばかりを見て歩くわけではない。つまり、それらを串刺しにする「横軸」をテーマにしなければ、観光に厚みは出てこない。下二之町大新町

その意味からすると、高山には名工建築を筆頭にした「匠」という素晴らしい「横軸」がある。匠をテーマにすれば、高山ラーメンも観光の対象に含まれる。

名工建築

画像1: 冬の高山のおすすめコンテンツは「匠」

下二之町大新町の重要伝統的建造物群保存地区に残る町屋建築、吉野家住宅。

画像2: 冬の高山のおすすめコンテンツは「匠」

高山屋台会館に保管され、年に2回開催される高山祭に繰り出されるきらびやかな屋台。

画像3: 冬の高山のおすすめコンテンツは「匠」

桜山日光館に展示された日光東照宮の精密な模型。

高山の「そば」

画像4: 冬の高山のおすすめコンテンツは「匠」

高山では「そば」は中華そばを意味し、年越しにもラーメンを食べるという。特徴は醤油ベースの和風スープと細いちぢれ麺の組み合わせ。麺は100gくらいで量的には少なく感じる。

画像5: 冬の高山のおすすめコンテンツは「匠」

650円と観光地にしてはリーズナブルな、1951年(昭和6年)創業の老舗、桔梗屋の中華そば。

高山の車中泊事情

画像: 道の駅ななもり清見。

道の駅ななもり清見。

厳冬期の降雪地帯では、天候を再優先して行動する必要がある。もし吹雪いてきたら、山間部にある奥飛驒温泉郷への移動は控えるべきだし、好天でも気温が下がって凍結しやすい夜間や早朝の移動はリスクが大きい。

スケジュールからみると、この日は高山周辺で車中泊するのが無難だ。近辺には三町から10㎞ほど戻った高山西インターのそばに「道の駅ななもり清見」がある。

画像: 平湯バスターミナル。

平湯バスターミナル。

逆にこの日のうちに奥飛驒温泉郷まで行くなら、「あかんだな駐車場」が閉鎖する冬期は「平湯バスターミナル」の無料駐車場で車中泊が可能だ。ただし1時間近くかかるので4時には高山を出発しよう。

画像: 市営天満駐車場。

市営天満駐車場。

市営天満駐車場
高山の古い町並み周辺にある市営駐車場で、車中泊に適しているのは、市営天満駐車場だ。トイレ付きの平面駐車場で、ゲートの屋根が出っ張っておらず、キャブコンでも利用できる。料金は8時から20時まで30分150円、それ以外は1時間50円。近くのローソンと天満湯まで歩いていける。

奥飛驒温泉郷エリア

画像: 天気がよければ、平湯温泉からも北アルプスがよく見える。安房トンネルを抜ければ、松本市内まで約50㎞・1時間10分ほど。関東方面なら松本市内を少し観光して、長野自動車道から中央自動車道に出て帰路につくことも可能だ。

天気がよければ、平湯温泉からも北アルプスがよく見える。安房トンネルを抜ければ、松本市内まで約50㎞・1時間10分ほど。関東方面なら松本市内を少し観光して、長野自動車道から中央自動車道に出て帰路につくことも可能だ。

高山から、国道158号で約40㎞、約45分。カーブが連続する上り坂から北アルプスの峻険な岩肌が顔を覗かせれば、長野県との県境がある安房峠はもうすぐそこだ。

平湯温泉、福地温泉、新平湯温泉、栃尾温泉、新穂高温泉の5つの温泉地からなる奥飛驒温泉郷は、その安房峠の手前に位置する。

画像: ひらゆの森 名物の露天風呂に加え、内湯と広い休憩室に食事処などの充実した設備を有する、平湯温泉の日帰り温泉施設。

ひらゆの森 名物の露天風呂に加え、内湯と広い休憩室に食事処などの充実した設備を有する、平湯温泉の日帰り温泉施設。

別府、由布院に次ぐ豊富な湯量と、日本随一ともいわれる露天風呂の数、そして素朴さのなかに温もりが感じられる温泉街。そこには、遠路はるばる「湯めぐり」に訪れるだけの価値が十分にある。四季を通してリピーターが多いことにも頷ける。

厳冬の温泉郷に広がる白銀と幻想の催し「奥飛驒冬物語」

例年1月中旬になると、奥飛驒温泉郷は白銀に包まれ別世界に変わる。幻想的なライトアップイベントが始まるのはこの頃で、各温泉地が雪見の長風呂を楽しみに訪れる温泉客をもてなそうと始めたらしい。

いつしかそれは「奥飛驒冬物語」と呼ばれ、今は岐阜県を代表する冬の催しとして定着している。2月には「中尾かまくらまつり」と「平湯大滝結氷まつり」が幕を開け、奥飛驒の冬はピークを迎える。

画像: 厳冬の温泉郷に広がる白銀と幻想の催し「奥飛驒冬物語」

新平湯温泉 タルマかねこおりライトアップ
新平湯温泉では、名所となったタルマの滝・親水公園一帯にて「タルマかねこおりライトアップ」を開催している。氷爆化した「たるまの滝」のライトアップに加え、特別イベント期間中には氷のアイスバーや、砂防ダムトンネルのイルミネーションなどが行われる。

氷爆化する「平湯大滝」

画像1: 氷爆化する「平湯大滝」

落差64m、幅6mの平湯大滝は、飛驒三大名瀑のひとつで、日本の滝百選にも選定されている。例年2月中旬に「平湯大滝結氷まつり」が開催され、夜にはライトアップも実施されるが、足場の悪い冬は駐車場から滝見台まで歩くと20分近くかかる。

画像2: 氷爆化する「平湯大滝」

路面が凍結しているので、滑って転ぶ心配のないシャトルバスの利用がおすすめだ。バスなら滝まで安全に移動できる。

写真・文:稲垣朝則
出典:全国車中泊コースガイド秋-冬(2020年9月発行)

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