第7回 伊予の国・愛媛へ! 37番札所・岩本寺~43番札所・仏木寺
2017年3月20日から5月8日までの50日間、全行程6817㎞。四国八十八カ所お遍路ひとり車中泊旅の連載7回目。旅は高知県を抜けて3番目のエリア、伊予の国・愛媛県へ!
23日目、四国3番目のエリア、愛媛へ参るぞなもし
今日は高知県から愛媛県へ。ゆすはらで迎えた朝。静かな森にある道の駅で、コーヒーを飲みながら今日のルートを確認。昨日、営業時間内に到着できずに押せなかった、道の駅ゆすはらのスタンプを押した後、小雨のなかを「道の駅日吉夢産地」を目指します。
国道320号沿いの「道の駅日吉夢産地」には朝9時前には到着。ここは日替わりランチがおいしいというので、この日の昼飯を探しに敷地内を散策。ソフトクリームと野菜いっぱいの日替わりランチをテイクアウトして、道の駅をあとにしました。
次は320号沿いの「道の駅広見森の三角ぼうし」へ向かいます。目的地へ着くと大迫力の大きな赤鬼がお出迎え! この大きな赤鬼を見る目的で、三角ぼうしは家族連れが数多く週末に訪れるといわれています。また、店内には朝採れ野菜がたくさん並んでおり、それらも来場者のお目当てのようです。
施設内を散策してスタンプを押したあとは、4㎞先の道の駅「虹の森公園まつの」へ。
ここはいろいろな複合施設があり、四万十川の魚を展示する水族館「おさかな館」や、リサイクルガラスを原料にしたガラスの絵付け体験ができる「ガラス工房」も人気。
さらに施設の近くには「ぽっぽ温泉」がJR松丸駅の2階にあります。この施設はなんともユニーク。おさかな館の魚を飼育するために井戸を掘っていると、温泉が出てしまったという逸話(?)が!
泉質は低張性アルカリ性冷鉱泉で、20℃の冷泉を加温しています。肌がツルツルになる美肌の湯として、地元の人たちはもちろん、観光客にも大人気の温泉施設です。
岩本寺では天井画のすばらしさに圧倒!
今度は四万十川沿いの国道381号に移動して「道の駅四万十とうわ」に向かいます。あいにく雨模様の天気が続き、道路沿いの桜が雨で散りかけていました。晴れた日には、暖かな春の桜並木が迎えてくれて、すばらしい風景なのでしょうが、残念な一日です……。
「道の駅まつの」から「道の駅四万十とうわ」までは25㎞ほど。約30分でとうわへ到着。昼時なので施設内に駐車して、日吉の道の駅で買ったお弁当を食べることにします。1時間ほど昼食タイムを取ったあと、スタンプを押して次の道の駅「四万十大正」を経由し、15時過ぎに37番札所の岩本寺を参拝します。
今日は、朝から道の駅スタンプラリーの一日ですが、ルートの都合上、岩本寺だけを参拝をします。本堂、大師堂と参拝。納経所で御朱印もいただき、この日最初の拝観も無事終わりました。
同寺に参拝の機会があった際、ぜひ見学していただきたいポイントは、本堂の天井画です。格天井(ごうてんじょう)には全国から集めた575枚の天井画があります。地元の県展出品者からアマチュアまで、400名が描いたものです。
また岩本寺には宿坊もあり、予約しておけば宿泊することもできます。今回の旅では、宿坊への宿泊は1度もなかったのですが、次回はぜひ泊まってみたいと思います。
今日の宿泊予定地は「道の駅なぶら土佐佐賀」。「道の駅あぐり窪川」を経由して、17時過ぎに目的地に到着。施設の終了時間が近くなっていたので、急いで店内を見てまわったところ、食事処に高知の名物、藁焼きカツオのタタキ定食がありました。
高知に来ているので、カツオのタタキはぜひ食べねば! お店の終了時間が近づいていたので、急ぎビールとカツオのタタキ定食を注文。ビールを飲みながらのカツオのタタキ定食は大変美味でした!
<23日目のお遍路データ>
走行距離 131km(累計3272km)
札所めぐり 1打(累計37打)
道の駅スタンプ 7駅(累計103駅)
札所めぐりのルート
ゆすはら発→ 1 道の駅日吉夢産地(愛媛③)→2 道 の駅広見森の三角ぼいし(愛媛⑫)→3 道の駅虹の 森公園まつの(愛媛⑪)→4 道の駅四万十とおわ(高 知㉑)→5 道の駅四万十大正(高知④)→6 37 番 札所岩本寺→道の駅あぐり窪川(高知⑭)→7 道の 駅なぶら土佐佐賀(高知㉒)
※文中の丸囲みの数字はスタンプラリーの番号です
24日目、四国の最南端付近にてトラブル発生!
目覚めたのは早朝5時。今日は天気が回復したようです! 6日ぶりの陽射しを浴びて早起きしたので、30分ほど道の駅の周りを散歩。気持ちのいい朝です。クルマに戻り、昨日の移動ルートの記録と、今日の予定を確認しながら、朝のコーヒーを一杯、楽しみます。
この日の最初の立ち寄り地「道の駅ビオスおおがた」は、国道56号を25㎞くらい進み、左側に海を見ながら、堤防沿いの道が右カーブしている所にあります。
まだ朝の早い時間帯のため、スタンプだけ押して先に進むことにします。この日のお遍路は、土佐の遍路道「修行の道場」と呼ばれる38番札所・金剛福寺。37番札所岩本寺から90㎞を超える距離があり、歩きお遍路だと3日間くらい掛けて目指す寺です。四国霊場の寺間ではもっとも長い距離で、足摺岬に位置するお寺となっています。
金剛福寺から徒歩1分くらいにある、四国最南端の足摺岬の展望台に立ち寄りました。眼前には水平線を見渡せる太平洋が広がっています。黒潮の荒波が押し寄せる高さ80mの岩場には、白亜の灯台が建ち、地球の丸さを感じられる絶景です。
金剛福寺をあとにして「道の駅めじかの里土佐清水」へ。この日のふたつ目の参拝予定の39番札所延光寺まで、国道321号沿いに「道の駅めじかの里土佐清水」、「道の駅ふれあいパーク・大月」、「道の駅すくも」と、沿線にある道の駅でスタンプを押しながら移動する行程です。
宿毛市に入り、延光寺に向かうまでの走行距離は70㎞を超え、土佐の国の最後の“修行の道場”となります。昼食は「大月」の道の駅で。地元の海の幸がいっぱいで、どれも驚くほど安い! おいしそうな魚を見比べて選ぶのに困るほどでした。
<24日のお遍路データ>
本日の走行 171km(累計3443km)
札所巡り 2打(累計39打)
道の駅 5駅(累計108駅)
札所めぐりのルート
なぶら土佐佐賀発→1 道の駅ビオスおおがた(高 知⑳)→2 38番札所金剛福寺→3 道の駅め じかの里土佐清水(高知⑯)→4 道の駅大月(高 知③)→5 道の駅すくも(高知②)→6 39 番札所延光寺→7 道の駅みしょうMIC(愛媛⑨)
※文中の丸囲みの数字はスタンプラリーの番号です
「母さん、僕の○○○○○ どうしたんでしょうね?」
結局、昼食はレストランで地元の海鮮丼に舌鼓! 食後に夕食用のカキ鍋の食材として野菜、カキを購入。39番札所延光寺に向かいます。
ところが……夕食時にトラブル発生! 昼に買ってきた夕食用のカキ鍋の準備のため、収納庫から土鍋を取り出して準備していると、いつも使っている赤いフライパンが見当たりません! どこを探してもありません。
約3年使い続けている大変便利なフライパンで、朝の食事から夕食まで万能に使える調理器具です。今回の旅でも使っていたので、どこかに出して、片付け忘れたのか……思い出せません。私の赤いフライパンどうしたんでしょうね~(どこかで聞いた様なフレーズですね)。
今晩の目的地、「道の駅みしょうMIC」は国道56号沿いにある道の駅。特産の柑橘類と同じ黄色い建物が目印です。実際、店頭にはミカンなどの柑橘類が数多く並んでいました。
18時過ぎにMICに到着。急ぎ愛車で食事と就寝の準備をします。まだ明るい時間帯でしたが、カキ鍋を準備。そして、食べながらビールを飲みだすころには、外は暗くなり、静かな風景となりました。
<24日のお遍路データ>
本日の走行 171km(累計3443km)
札所巡り 2打(累計39打)
道の駅 5駅(累計108駅)
札所めぐりのルート
なぶら土佐佐賀発→1 道の駅ビオスおおがた(高 知⑳)→2 38番札所金剛福寺→3 道の駅め じかの里土佐清水(高知⑯)→4 道の駅大月(高 知③)→5 道の駅すくも(高知②)→6 39 番札所延光寺→7 道の駅みしょうMIC(愛媛⑨)
※文中の丸囲みの数字はスタンプラリーの番号です
25日目は一番札所からもっとも遠い霊場へ
25日目は、愛媛県に入って初めてのお遍路寺、40番札所・観自在寺からスタートです。昨日に続きこの日も晴天! 朝から元気が出る一日になりそう。
40番札所の観自在寺は、「道の駅みしょうMIC」から1㎞の近距離にあります。朝の8時過ぎには観自在寺の山門をくぐり、お遍路旅の25日目がスタートです。
御本尊は薬師如来で、807年に弘法大師により開基されたと伝えられています。山門をくぐると、正面に本堂、右正面に大師堂が並び、早朝から団体のお遍路さんの読経が響きます。私も読経に加わり、この日1寺目の御朱印をいただきました。
このお寺は、四国一番札所霊山寺からも最も遠い場所にあるため「四国霊場の裏関所」といわれているお寺です。また、大師堂の回廊には四国に点在する各霊場の砂が敷き詰められ、一周すると四国八十八カ所のお砂踏みができると伝えられています。
観自在寺をあとにし、国道56号で宇和島市に近い位置にある「道の駅うわじまきさいや広場」を目指して移動。道の駅スタンプラリーと、お遍路参拝を並行する予定。次の札所41番札所・龍光寺までは、50㎞ほど離れており、「道の駅うわじま」と「道の駅みま」のふたつの駅があるので、立ち寄ってスタンプを押していきます。
「道の駅うわじま」は、大きな建物で食事処のお店も多く、野菜や海産物も豊富。ドライブ時の買い物には大変便利な道の駅です。また足湯の施設も併設されており、お遍路に憩いの場を提供してくれます。
いっぽう、特産の真珠の展示館は、本物の真珠製品が所狭しと並んでいます。女性には楽しいお店。のぞいていると、つい時間が経ってしまいます。
41番、42番札所間は3~4㎞の距離なので参拝がスムーズに進みます。42番仏木寺には珍しい茅葺屋根の鐘楼があり、300年以上前の元禄時代のものと伝えられています。
また、境内には家畜堂という小さなお堂があります。昔から牛馬安全の守り仏として信仰されていますが、最近ではペットの霊を供養する写真などが奉納されています。
今回の遍路旅でも、時々ペットの仔犬に、白衣の遍路装束を着せて参拝している、若い家族連れを見掛けることがありました。現代のペットブームの風潮が垣間見えるひとコマです。
<25日のお遍路データ>
本日の走行 124km(累計3597km)
札所巡り 4打(累計43打)
道の駅 5駅(累計113駅)
札所めぐりのルート
みしょうMIC発→1 40番札所観自在寺→道の駅うわじまきさ いや広場(愛媛㉓)→2 道の駅みま(愛媛㉑)→3 41 番札所龍光寺→4 42番札所仏木寺→5 道の駅どんぶり館 (愛媛㉗)→6 43番札所明石寺→7 道の駅きなはい屋し ろかわ(愛媛⑧)→8 道の駅清流の里ひじかわ(愛媛⑱)
※文中の丸囲みの数字はスタンプラリーの番号です
【おまけ】うるう年の2020年は逆打ちの年!
今回はお遍路の「逆打ち」について紹介します。お遍路旅は一番霊山寺を出発して時計回りに1番、2番と順番に参拝していく「順打ち」に対し、88番大窪寺から87、86……と反時計回りに参拝していくことを「逆打ち」と呼びます。
そして、2020年は4年に一度の「逆打ち」の年に当たります。この「逆打ち」の由来になった伝説があります。
昔、伊予の国(愛媛県)を治めていた河野一族に、衛門三郎という豪農がいました。托鉢に訪れた僧侶が差し出した鉢を、ほうきでたたき落とし、鉢を割ってしまうという悪行を行なったとのこと。そのため、のちに8人の子どもが死んでしまうという不幸が続いたそうです。
打ちひしがれる三郎の枕元に現れた僧侶により、托鉢に訪れた僧侶が弘法大師であると気がつき、自らの悪行の振舞いが招いたことだと悟って深く後悔し、弘法大師を追って四国巡礼の旅に出たそうです。
しかし、何年も巡礼を重ねても弘法大師に巡り合うことは叶わなかったため、三郎は逆の順番で回ることに。
その逆回りの巡礼の途中、焼山寺(12番札所)の近くで病に倒れてしまいます。死に際の三郎でしたが、ついに23回目の巡礼でようやく弘法大師に再会。己の悪行を悔い改め、詫びる三郎。弘法大師は、三郎の「来生は人の役に立つ人になります」という望みを聞き、路傍の石を拾い「衛門三郎再来」と書き、その手に握らせたといいます。
のちに河野家に生まれた子どもの左手には、大師が書かれた石が握りしめられていた……との言い伝えが広まりました。この伝説が「逆打ち」の由来。
そのような出来事から、三郎が弘法大使に再会したうるう年に逆打ちをすると弘法大師に出会えるといわれ、順打ちの3倍もご利益があるといわれています。
旅人プロフィール 新井芳夫
●埼玉県在住
●車中泊歴40年以上
●主な車中泊スポット:全国各地(道の駅が中心)
愛車のスバル・サンバート ラックで四国お遍路旅を楽しむ旅人。実は40年以上も前から国産ワンボックスカーにDIYを施して楽しんできた、車中泊のベテランでもある。
写真・文/新井芳夫
構成/野里卓也
出典/カーネルvol.45 春号