京浜急行とCarstayが協力して、旅の新サービスを開始
京浜急行とCarstayが協力して、電車とキャンピングカーを使った新事業を行っている。2020年10月に本格的にスタートし、今後の展開も期待できるようだ。
鉄道とシェアサービスを提供している異業種の2社ではあるが、あらゆる移動体を1つのサービスとして提供するMaaS(マース)の概念に基づいて、2社が協業を決めたという。
この事業で目指しているのが、三浦半島を「バンライフの聖地化」とすること。バンライフを軸に、人が移動し、活動できる仕組みを、お互いの強みを活かして構築していく。
三浦半島の鉄道をベースにした幅広い基盤
京浜急行といえば、都市圏の人にとって重要な交通サービスを提供している会社。羽田空港への乗り入れなどを始め、三浦半島と都心をつなぐ路線としても、生活に欠かせない存在。
特に三浦半島では、電車が通じていない場所も多く、京浜急行がバスを運行することで、市民の生活圏が広がっているという背景も。このような、地域に根ざした事業を長年続けてきた歴史ある企業なのだ。
さらに同社は三浦半島にさまざまな施設も有していて、鉄道と合わせた事業展開を行ってきた。立地に恵まれた観光施設などもあり、幅広いジャンルでの事業基盤を持ち合わせているのが特徴ともいえる。
シェアリングサービスのCarstay
一方、Carstayは、クルマで宿泊できるスペースをシェアリングするサービス「カーステイ」と車中泊車両のカーシェアサービス「バンシェア」を展開。この2の事業で「バンライフ」プラットフォームとしてのサービスを提供している。
そもそもCarstayでは「誰もが好きな時に、好きな場所で、好きな人と過ごせる世界をつくる」というミッションを掲げ、移動を基盤としたMaaSを事業領域としている。そのなかで、新しい旅と暮らしのスタイルとしての「バンライフ」を事業としているのだ。
最近では、新型コロナウイルス感染症の影響で、Carstayのサービス利用が増加しているという。8〜9月の車中泊施設利用予約は、対前年比で2〜3倍に、カーシェアの「バンシェア」はサービスを開始した7月に比べると、9月が2.5倍の利用数に達した。
観光資源が豊富な三浦半島
京浜急行とCarstayが今回事業展開する三浦半島は、多くの自然が残り、観光スポットもたくさんある。三崎マグロや三浦野菜などの食文化も豊富にあり、観光地としての資質を存分に有している地域といえるだろう。
都心から近く、東京からは約1時間で行ける場所で、休日ともなれば、たくさんの観光客でにぎわう。しかし、この都心からの近さが、かえってウィークポイントとなり、観光客の三浦半島での滞留時間が短いという欠点もあった。
日帰りの観光客が多く、宿泊をともなったプランを選ぶ人が少ないのだ。さらに、東と西を横断する交通網が脆弱で、軍港で栄えた東側と、自然豊かな西側を往来することが難しかった。
キャンピングカーをシェアして三浦半島に泊まる
そんな状況を改善してくれるのが、今回の2社が協業することになったサービスだ。
サービス内容は、カーステイのバンシェアを利用して、ユーザーがキャンピングカーを借りて、さらに京急保有施設で車中泊するための予約をカーステイで行うというもの。
宿泊場所として設定されたのは、RVステーション京急油壺観潮荘(神奈川県三浦市三崎町1152)、RVパーク京急観音崎(神奈川県横須賀市走水2)、そして11月開設予定の城ヶ島シーサイドRVステーション(神奈川県三浦市三崎町城ヶ島)の3カ所。
温浴施設や水族館など、魅力的な施設を隣接しており、宿泊料金に入場料や入浴料などのサービスが付帯されている場所もある。
現在、バンシェアでは三浦半島周辺で借りられるクルマが14台(2020年10月現在)登録されているという。最新の本格的なキャンピングカーから、クラシカルなワーゲンバスのキャンピングカーまでラインアップされている。
駅でクルマを借りて、三浦半島を楽しむ
実際、このサービスを利用して、どのように三浦半島を楽しむことができるのだろうか。一例を紹介しよう。
①旅の日程を決めて、まずはインターネット(https://carstay.jp/)で宿泊施設とクルマの空きを確認して予約を。すべてオンラインで完結するので、どこからでも予約ができるのが便利だ。
②クルマの受け渡しは、車両ごとに違うので、予約時にしっかりとチェック。例えば、三浦半島東側の主要な駅で待ち合わせして、クルマを受け取るというパターンもある。
③観光地を巡り、横須賀バーガー、海軍カレーなどを食べながら南下してくるのもいいだろう。1泊すれば、知らなかった場所を見つけられるかもしれない。
④宿泊地に到着したらチェックイン。トイレなどの施設を利用しながら、クルマのなかでゆっくりと時間を過ごす。
⑤食事は事前予約しておけば、施設で食べることも可能だ。そして、お風呂に入って、車内でまったりと。そのまま寝てしまってもOK。
⑥早く起きたら、三浦半島の自然を満喫するために、施設近くの朝散歩がおすすめ。都心から1時間とは思えない自然を感じられることだろう。
⑦2日目は朝早く漁港を周って、西側へ移動。美しい海岸線をドライブしながら、お魚や三浦野菜などを堪能。最後に、太平洋では珍しい、海側のサンセットを見て帰る。
⑧クルマの返却は、予約時に確認した場所で行い。充実した三浦半島の旅を終える。
京急電鉄にとってのメリットはあるのか
人を運ぶサービスを展開している京急電鉄にとって、今回の協業は、移動する手段をカーシェアに取られてしまうのではないか、という心配もある。そこで、担当者に聞いてみた。
「京急電鉄としては、三浦半島にたくさんのお客さんが来ていただけることを目的にしているので問題ありません。今回、Carstayのプラットフォームを利用することで、より多くのユーザーとつながり、新しい需要が生まれることに期待しています」という。
今後は、いろいろな企業とも協力しながら、車中泊のスペースを拡大していく予定だという。さらに、施設近くで体験型アクティビティができるように、サービスの中にオプション設定を設けたいとも。ますます、三浦半島をおもいっきり楽しめるようになりそうだ。
写真・文:渡辺圭史