富士山眺望のベストシーズンは、空気が凛と澄みわたる初冬から早春にかけてだが、富士五湖のある山梨県側は標高が高く、常に積雪と凍結の不安がつきまとう。そこで、今回は趣向を変えて、温暖な静岡県側から、世界文化遺産としての富士山を再発見する旅に出かけよう。

知っているようで、実は知らない? 世界文化遺産としての「富士山」

2013年に富士山は世界文化遺産に認定されているのだが、当初は政府も「世界自然遺産」への登録を目指していた。だが、ゴミの不法投棄や乱開発による環境破壊により、本来の自然が保たれていないなどの理由からそれを断念。代わりに信仰や芸術など「人とのかかわり」をテーマにすべく方針転換を行った。

なるほど、確かに葛飾北斎や歌川広重は、暮らしのなかの富士山を絵に描き、人々の心を捉えてきた。現代人がその足跡をたどり、同じ光景を探すというのも面白い。

2月23日は「富士山の日」。 関連有料施設が 無料になる!
静岡と山梨の両県は毎年2月23日を「富士山の日」とし、関連施設でイベントを開催している。また2020年からは、「天皇誕生日」として国民の休日になる。

静岡県富士山 世界遺産センター

画像: 静岡県富士山 世界遺産センター

この施設は、「世界文化遺産・富士山」を再発見する最初の旅先におすすめだ。館内は「登拝する山」をテーマに、映像を見ながら全長193mの「らせんスロープ」を登り、富士登山を疑似体験することから始まる。

下りはフロアごとの「テーマ」展示で、富士山の自然と歴史、そして文化・信仰を多角的に紹介している。また3階の別棟では、屋内からも野外テラスからも、直接、富士山を眺めることができる。

静岡県富士山 世界遺産センター

富士山頂浅間神社奥宮

画像: 富士山頂浅間神社奥宮

富士山頂は国有地ではなく、江戸時代に徳川家康が寄進した「富士山本宮浅間大社」の境内。いまも奥宮が置かれ、登山者の安全を祈祷している。

富士宮エリア

【名所】富士山本宮浅間大社

画像: 天照大御神の孫・ニニギノミコトの妻、木花之佐久夜毘売命(このはなさくやひめのみこと)を祀る。

天照大御神の孫・ニニギノミコトの妻、木花之佐久夜毘売命(このはなさくやひめのみこと)を祀る。

噴火を繰り返していた富士山を鎮めるために建立されたという歴史は、806年に坂上田村麻呂が山宮浅間神社の神様を現在の場所に移し、壮麗な社殿を建てたことが始まりとされている。

平安時代から江戸時代にかけては、時の権力者たちから信仰を集めるようになるが、なかでも徳川家康は熱心で、関ヶ原の合戦の戦勝を記念して、1606年に現在の楼門と、「浅間造」と呼ばれる独特の神社建築様式をもつ本殿を寄進している。

【グルメ】富士宮やきそば

画像: 【グルメ】富士宮やきそば

富士宮市が誇るソウルフード。モチモチの麵を肉カス、削り粉とともに食べる。写真は神田川観光駐車場の近くにある「さの食堂」のやきそば。

【駐車場】神田川観光駐車場

画像: 【駐車場】神田川観光駐車場

富士山本宮浅間大社まで徒歩5分、世界遺産センターにも2分で行ける公営の有料観光駐車場で、1日最大料金は1,000円。トイレがあるので車中泊も可能。

由比エリア

【名所】薩埵峠

画像: 「東海道五十三次」に描かれた風景が唯一残る、現在の薩埵峠。

「東海道五十三次」に描かれた風景が唯一残る、現在の薩埵峠。

江戸時代から知られる富士展望の名所で、川広重の風景画に当時の様子が残されている。約400年前の薩埵峠は断崖絶壁で、旅人がいまにも転落しそうに描かれており、ここがいかに難所だったかがよくわかる。

画像: 駐車場のキャパは8台程度。トイレあり。

駐車場のキャパは8台程度。トイレあり。

ちなみに海岸線を安全に通行できるようになったのは、1854年の大地震で海岸が隆起してからだという。現在はその海岸線を東海道本線、国道1号、東名高速道路が、まるでプラモデルのように走っているが、これを再び広重が描くとしたら、どのような絵になるのか見てみたいもの。

画像: 展望台。駐車場からハイキングコースを歩いて約5分。

展望台。駐車場からハイキングコースを歩いて約5分。

【観光】東海道広重美術館

画像: 【観光】東海道広重美術館

薩埵峠からクルマで約30分、「本陣公園」の中にある。映像による歌川広重の紹介をはじめ、木版画の作品ができ上がるまでの手順などを詳しく展示。

東海道広重美術館

画像: ブルーのルートからアクセス!

ブルーのルートからアクセス!

清水エリア

【名所】三保松原

画像: 【名所】三保松原

駿河湾と松原の向こうに、雄大な富士山を望む三保松原の景観を、近年では大分県の耶馬渓、北海道の大沼公園とともに、日本新三景と呼ぶようだ。世界遺産登録時には、イコモス(国際記念物遺跡会議)に構成資産の対象から除外するよう勧告されたが、最終会議で覆る異例の出来事となり、話題を集めた。

【三保松原の車中泊事情】P2に24時間使えるキレイな公衆トイレが完成

画像1: 【三保松原の車中泊事情】P2に24時間使えるキレイな公衆トイレが完成

三保松原は、マップのP1とP2にトイレと無料駐車場が用意されており、いずれも車中泊は可能だ。利便性が高いのはP2で、以前からあった駐車場の奥に、真新しい水洗トイレと駐車場が増設された。P2からは日帰り温泉が利用できる三保園ホテルに歩いて行ける。

画像2: 【三保松原の車中泊事情】P2に24時間使えるキレイな公衆トイレが完成

三保の松原が「絵」になるのは、マップの「羽衣の松」より左側。海をアングルに取り込むには、富士山から離れたほうがいい。

【名所】日本平

画像: 二代目歌川豊国は、ここから見た構図を名勝八景「三保落雁」に描いている。

二代目歌川豊国は、ここから見た構図を名勝八景「三保落雁」に描いている。

日本平は、駿河湾沿岸近くにある有度山の山頂とその一帯の呼称で、古くから景勝地として高い評価を受けてきた。ただしそれは、この眺望があっての話。三保松原もここからなら見下ろせる。またロープウェイに乗れば、徳川家康が眠る久能山東照宮もすぐそこだ。

【観光】久能山東照宮

画像1: 【観光】久能山東照宮

青春時代と晩年を駿府で過ごした徳川家康は、死去する前に息子の秀忠に残した遺命によって、この地に埋葬されている。久能山東照宮は日光東照宮より19年も早く建立され、社殿の「権現造」は後の東照宮の原型となった。

画像2: 【観光】久能山東照宮

沼津、御殿場、伊豆半島エリア

画像: 陸路で清水から伊豆半島に行く途中で、休憩におすすめなのは「みなとオアシス沼津」だ。

陸路で清水から伊豆半島に行く途中で、休憩におすすめなのは「みなとオアシス沼津」だ。

世界文化遺産・富士山を再発見する旅のメインスポットは、ここまで紹介してきた静岡市内の清水周辺から富士宮市にかけてだ。ただ日程に余裕があるなら、この時期は富士宮から朝霧高原に登るよりも、沼津から御殿場、もしくは伊豆半島に渡るほうが無難だ。特に2月下旬の伊豆半島は、河津桜が開花し、ひと足先に春を迎える。

伊豆半島まで約70分! 駿河湾フェリー

画像1: 伊豆半島まで約70分! 駿河湾フェリー

「駿河湾フェリー」は、静岡市の清水港と伊豆市の土肥港を70分で結ぶカーフェリーの航路名だが、下のマップを見れば、その値打ちは一目瞭然。伊豆半島は道路整備が進んだとはいえ、西岸を走る国道414号は相変わらず渋滞が多い。

画像2: 伊豆半島まで約70分! 駿河湾フェリー

2019年11月現在の料金は以下のとおり旅客運賃:大人2,300円。自動車航走運賃(運転者含む):4m以上~5m未満5,990円(期間B・土日)。

駿河湾フェリー

山中湖エリア

画像: 県道730号で御殿場から山中湖に抜ける途中にある三国峠。凍結しやすいので、行くときは晴れた日の日中に通ろう。

県道730号で御殿場から山中湖に抜ける途中にある三国峠。凍結しやすいので、行くときは晴れた日の日中に通ろう。

山梨県側のドライブには 細心の注意が必要

2014年2月に関東地方を襲った南岸低気圧により、山中湖周辺に150㎝近い雪が積もり、国道138号が数日間にわたって通行不能となったのは記憶に新しい。富士五湖の中でも特に山中湖周辺は冷え込みが厳しく、冬季は積雪と凍結に対する十分な備えと注意が必要だ。もちろんスタッドレスタイヤは欠かせない。ノーマルタイヤは危険なだけでなく、通行規制も受けやすい。

画像: 山梨県側のドライブには 細心の注意が必要

たとえ雪が降らなくても、晴れれば夜間の放射冷却で気温が下がり、少しでも濡れていれば道路はほぼ確実に凍結する。

【観光】ダイヤモンド富士ウィークス

画像1: 【観光】ダイヤモンド富士ウィークス

「ダイヤモンド富士」とは、富士山頂に太陽が重なる瞬間の光景。行動しやすい夕刻にドラマティックな光景が見られる山中湖には、厳冬期でも多くの見学客がやってくる。

山中湖村観光産業課/ダイヤモンド富士

画像2: 【観光】ダイヤモンド富士ウィークス
画像3: 【観光】ダイヤモンド富士ウィークス

地元の山中湖村では、天候が安定する2月の週末に、大空にシルエットを映す冨士山を、花火とアイスキャンドルで彩る粋な催しを2007年から行っており、冬の新たな風物詩として人気を博している。

文・写真/稲垣朝則

出典:カーネルvol.42

This article is a sponsored article by
''.