車中泊カーのベストセラーはEVになっても十分寝られる!?
「カーボンニュートラル」の名のもと、世界的にEV化が進んでいるのはご存じのとおり。クルマ業界全体のその流れの「良し悪し」は、それぞれ言いたいことがあるだろう。
しかし、こと車中泊に関していえば、アイドリングせずに車内で電気が扱えるEVは、多くの可能性を秘めていることも確かだ。
そんななか注目を集めているのが、このホンダ「N-VAN e:」だ。今秋、発売が予定されているニューEVで、その名のとおりN-VANがベース。
車中泊カーとして人気を集める軽バンが、EVとして登場するとあって、そのポンテンシャルが気になる人も多いことだろう。
特に車中泊で使用するならば、車内スペースは最重要ポイントのひとつ。従来モデルと大きな変更点はあるのか?
そこで、同モデルがイベントで展示されているとの情報をキャッチ。さっそくサイズチェックをしてきたのが今回の数値。
結論からいうと、大きな違いはない。N-VAN特有の、助手席収納時のフラットなベッドスペースは健在。ソロなら十二分にくつろげる2600mmオーバーの奥行きも同様。助手席側のピラーレスも踏襲し、開放感はそのままだ。
唯一、大容量のバッテリーを床下に積むため、エンジンモデルとは最低地上高が異なる。が、それも気になるほどではない。
さらに、「1回の満充電でどれだけ走行できるか?」も重要だ。カタログ値では245㎞となっており、これは東京から静岡県浜松市あたりまでに相当する距離。
ただし、エンジンのN-VANであれば、燃料満タンでその2倍は走行可能。航続距離は従来モデルに軍配が上がる。
しかし、EVのストロングポイントである電気の供給は、やはり大きなアドバンテージ。大容量バッテリーの総電力量は29.6kWh、最大出力1500Wなので、ホットプレートや電気ケトルなどの家電を、車内で使用することも可能だ。
ただし、車内でAC電源を使用する場合、オプションが必要となる。メインバッテリーからの電気を、直接車内のACコンセントで使うことはできない。
そのため、フロントグリルのソケットに給電ケーブルをつなぎ、ボディの外側からケーブルで車内に電気を取り入れる必要がある(ややこしい!?)。
果たしてカーネル読者は、このニューEVをどう評価するか? 期待を込めて、秋を待ちたい。
THE SIZE CHECK!
ホンダ・N-VAN e:
プロフィール
2024年春の発売から延期となり、2024年秋の発売が発表されたN-VANベースのEVモデル。すでに先行予約が始まっており、一般販売は2グレードで価格は269万9400~291万9400円。
上の写真は2023年秋に開催されたジャパンモビリティショーで展示されたN-VAN e:。このプロトタイプから大きな変更はないという。
N-VANと比べると最低地上高が変更
最低地上高165mmはN-VANよりも高い数値となっている。地面から荷室フロアまでは540mm。また、N-VANの助手席側ドアにあった、外したヘッドレストを置くスペースもなくなった。
フラットなベッドスペースは健在
助手席収納時の奥行きは約2640mm(実測)。フロアの先端から前方に少しスペースがあり、足先は入れられる。
運転席側後部の最大の奥行きは約1510mm(実測)。カタログ値では1335mmなので、2名就寝の場合、運転席側は小柄な体型の人のほうがベター。
N-VANとの違いは……
最も大きな違いはインパネまわりだろう。大きなレイアウトはそれほど変わりないが、シフトレバーがなくエレクトリックギアセレクターに。メーターパネルもEVならではのものに変更されている。
さらにフロントグリルにあるふたつの充電ソケットは、それぞれ普通充電と急速充電用。クルマからの「給電」にも普通充電のソケットを使用するが、オプションの専用アクセサリーが必要となる。
もうひとつのN-VANのEVモデル
ジャパンモビリティショーのホンダブースに展示されていた、もう一台のN-VANベースのEVをご存じだろうか?
8個の交換式バッテリーを採用し、走行したら随時バッテリーごとステーションで交換するシステムだ。こちらはすでにヤマト運輸の協力のもと実証実験がスタートしている。
助手席の機構は変わらないようだが、車内サイズはまだ未計測。気になるところだ。
〈スペック〉e: FUN 2WD FF(EV)
全長×全幅×全高:3395×1475×1960mm
荷室長×荷室幅×荷室高:(左)1495(右)1335×1230×1370mm
ホイールベース:2520mm
乗車定員:2【4】名
車両重量:1140kg
モーター形式:MCF7
モーター定格出力:39kW
モーター最高出力:47kW(64PS)
モーター最大トルク:162N・m(16.5kgf・m)
WLTCモード走行距離:245km
最小回転半径:4.6m
価格:291万9400円
文:大橋保之(カーネル編集部)
初出:カーネル2024年9月号vol.68