【概要】車中泊専門誌『カーネル』編集長・大橋によるレポート。「令和6年能登半島地震」における車中泊避難について、エコノミークラス症候群の注意点、日本RV協会が行った災害対策支援など。

『カーネル』2024年3月号vol.65が発売されたのは2月9日。衝撃の2024年元旦から、すでに1カ月以上が経過。被害状況を伝える各メディアからは、ようやく復興への道筋が紹介され始めている。

「令和6年能登半島地震」と名付けられた大地震が能登半島を襲ったのは、2024年1月1日16時10分。マグニチュード7.6、最大震度は石川県志賀町で観測された震度7。2024年1月21日現在で、石川県内の死亡者は232人、安否不明者22人、重軽傷者は1170人。

このとき、まだ1万5000人以上の被災者が避難生活を送っており、なかには車中泊避難も数多く確認されている。

今回の大地震が、以前の熊本地震などと大きく異なる点は、被災した季節と地域だろう。「冬」の「北陸地方」は、積雪も多く、気温も低い。自宅には帰れず避難生活を送る場合、ただでさえ不便や不安のなかで、日々過ごすことになる。そこに、「寒さ」と「雪」が追い打ちをかけ、さらに過酷な状況となっている。

2024年1月8日に撮影された石川県輪島市の車中泊避難の様子。積雪もあり、困難な状況が写真からも見てとれる。日ごろから車中泊避難を視野に入れておくことが、こういった緊急時に役立つスキルとなる。

そんななかで、車中泊避難を選択する人も少なくなかったようだ。エンジンをかけて暖を取れるので、寒さをしのぐためにクルマで寝る。もちろん、潤沢に燃料が届かない状況が続いたため、エンジンオンは数時間ごと。

さらに、積雪がマフラーを塞ぎ、排気ガスが逆流して一酸化酸素中毒になる危険もあった。そのため、積雪の状態をこまめに確認しなければいけないので、あまり長く眠れない人たちもいたようだ。 

しかし気になったのは、その状態を報道するメディアだ。熊本地震同様に「車中泊避難だから大変。そして危険」という決めつけも多かったように思う。特に被災直後は、車中泊避難の「よしあし」も紹介せず、ただその大変な状況をレポートする番組や記事ばかりが目立っていた。

だからこそ改めて書こう。被災時、クルマの中で避難生活を送る車中泊避難は、有効な「手段」であること。もちろん、注意すべき点はいくつかある。知識もないまま車中泊避難を続けると、体調不良だけでなく命にかかわることも少なくない。

しかし、車中泊避難の知識やスキル、アイテムがあれば、クルマは個別の避難所として活用できる。今回も被災直後、自宅に帰ることもできず、避難所にも入れず、2次避難もできない人たちもいた。

そのなかには、クルマがあったからこそ助かった人もいる。「ただ大変、危険」という前に、まずはその有効性をしっかりと紹介してほしい。

そして、その先にある「車中泊避難の注意点」までが、報道するための情報としては1セットではないかと思う。やはり最も注意すべきは、エコノミークラス症候群だろう。

●長時間同じ体勢で寝ない。脚を下にせず、できるだけ水平に。
●こまめに水分補給をする。
●こまめに運動をする。
●圧着ソックスやマッサージなどでふくらはぎの血液を流す。

さらには、先に紹介した一酸化炭素中毒にならないために、マフラーまわりの除雪も重要だ。

これらは弊社WEBメディア『SOTOBIRA(ソトビラ)」、カーネル別冊『車中泊スタートブック』でも詳しく紹介している。要確認を。

日本RV協会が行った災害対策支援の動き

第1弾として珠洲市に派遣されたキャンピングカー。

日ごろより災害支援を重要施策として掲げている日本RV協会。今回の能登半島地震でも、被災地や行政からの要請を受けて、キャンピングカーを被災地に派遣している。日本RV協会の会員企業から、第1弾として1月11日に石川県珠洲市へ19台、第2弾は同県輪島市へ20台、合計39台のキャンピングカーが届けられている。

第1弾として珠洲市に集まった日本RV協会の皆さん。

これらは「RVパーク村」として、被災地の復興の中心となる自治体職員や、全国各地からの応援職員の皆さんの宿泊場所として活用される。今後、さらに拡大・充実する可能性もある「RVパーク村」。キャンピングカーの活躍にも注目したい。

輪島市に到着した第2弾の皆さん。まだ幹線道路の復旧が万全でない時期に、少しでも災害支援となるように、被災地へ向かった。さらに、日本RV協会が無料配布している『くるまの防災ハンドブック』では、車中泊避難の注意点やポイントなども紹介している。ぜひ一度、手に取ってみてほしい。

写真:毎日新聞社、アフロ 
写真協力:日本RV協会 
文:大橋保之(カーネル編集部) 
初出:カーネル2024年3月号vol.65