川治温泉
渓谷にたたずむ、小さく静かな温泉街
鬼怒川温泉よりさらに山間を進むと、鬼怒川と男鹿川の合流する渓谷にぽつんとした温泉街が突如現れる。
この川治温泉は、かつては会津西街道を利用する旅人の宿場として、また「傷は川治、火傷は滝(鬼怒川温泉の古称)」という言葉が残っており、湯治の場としても古くから親しまれてきた。
温泉街にある「坂文精肉店」のコロッケが種類も豊富で、安くてうまいと評判。ご当地キャラクター「かわじい」の好物がコロッケという設定の由来にもなっている。
開放感しかない混浴露天風呂。道先案内人は「かわじい」
男鹿川沿いの「薬師の湯」の混浴露天風呂は、脱衣所も含め外から丸見えにも関わらず利用客の多い人気スポット。
かつては生活の中心として、入浴だけでなく洗濯や調理の場としても利用されていた。ご当地キャラ「かわじい」は3体あり、ほかの2体は温泉街の方向を指差している。
静かな趣の公共浴場「薬師の湯」
「薬師の湯」には丸見えの露天風呂とは別に内湯もあり、男女別でもちろん外からも見えない。こぢんまりした湯船につかると、渓流のせせらぎが聞こえてくる。
ぬるめで刺激の少ないアルカリ性単純温泉なので、時を忘れて長湯ができる。隣接のキャンプ場の受け付けにもなっている。
昭和レトロ感満載の喫茶店「論談館」
川治温泉街にはコンビニはなく、食事のできる店も少ない。ほとんどがホテルや旅館の中で完結してしまうからだ。
そんななかで昭和レトロ感あふれる喫茶店「論談館(ろだんかん)」は立ち寄った旅人にはありがたい存在。
あくまでレトロ「感」だけで、店内は古びた感じもなくデザインもおしゃれ。だがメニューには昔懐かしいナポリタンやメロンソーダなどが並び、ノスタルジーにあふれたひとときを味わえる。
川治温泉で車中泊するなら
薬師の湯に隣接した「川治温泉薬師の湯キャンプ場」は、オートサイト8区画(うち6区画は電源あり)、フリーサイトは8区画あり、全体的に広々とした敷地。
BBQ棟や炊事棟もあり、ピザ窯もあるなど設備も整っている。上空には野岩鉄道の鉄橋があり、夜には暗闇を走る列車がまるで銀河鉄道を彷彿とさせる幻想的な景色が楽しめる。
写真、文:rui
初出:カーネル2024年1月号vol.64