【概要】車中泊専門誌『カーネル』のUSAブランチによるアメリカ大陸横断1万2000kmロードトリップレポート第11弾。テネシー州、ミシシッピー州、アーカンソー州の州境の街メンフィスなど、ミュージックの聖地をめぐる。

テネシーとミシシッピーでミュージックの聖地を満喫

アトランタでリフレッシュした我々が次に目指したのは、テネシー州ナッシュビル。

カントリー・ミュージックやブルースなど、アメリカの文化を支え続けるミュージックシーンの本場として栄える街だ。

テネシー100周年博覧会時に建てられた、ギリシャとそっくりなパルテノン神殿の実物大レプリカ。

この後に訪れる同州メンフィスやミシシッピー州のクラークスデイルと合わせて、アメリカンミュージックの歴史上、重要な拠点。

さらにこの街から誕生していく、スーパーメジャーなミュージシャンも多く、アメリカでプロデビューを目指す若者が集まる街でもある。

見渡すかぎり道路の両脇に、延々と続くライブバー。さまざまなジャンルのミュージックが、大音量で街中に鳴り響く。ここにいるほとんどの観光客るほとんどの観光客はお酒を飲んでいる状態だが、毎晩多数の地元ポリスオフィサーとポリスカーが事前に配置されているので治安は守られている。

写真を見ていただければわかるとおり、約300m続くブロードウェイという大通りの両脇には、無数のライブバーが並ぶ。

日が暮れるとまばゆいネオンがきらめきはじめ、何十カ所もあるバーから大音量のライブ演奏が聞こえてくる。

カウボーイ文化が色濃いアメリカ東南部では、ブーツ屋さんに出合うこともしばしば。立派なプライスタグが付けられている。

音楽のジャンルは、カントリーやブルースはもちろん、ロックやポップスなど多岐に渡るが、それでもやはりカントリー・ミュージックの人気が高い。

お気に入りの音楽が聞こえてくる店を選んで、年齢確認のためのIDチェックを済ませてバーに入る。

店によって多少のルールは異なるが、カウンターで好きなドリンクをオーダーし、好きな場所で音楽を楽しめばいい。

店内の中央はダンスホールになっていることもある。そうしたスタイルの店は、老若男女問わず好きなミュージックに合わせてダンスを楽しんでいる人が多く、いかにもアメリカンな光景が広がる。

アメリカで大ブレイク中のナッシュビルスタイル・ホットチキン。その代表的な店HattiB’sは、夜遅くまで長蛇の列だ。

店で売られているアルコール類は良心的なプライスで、テーブルチャージなどがない店に入れば、安価で楽しめる。どんどん他の店にハシゴしてみるのもいいだろう。

ナッシュビルスタイル・ホットチキンは一度食べたらやみつきになるおいしさで、辛さのレベルを選べる。まずは一番辛くない「マイルド」からスタートすべし!

ただしアメリカは公道でアルコールを飲むことは違法なので、ドリンクは持って出ず、次の店で新しい一杯をオーダーしよう。

バンドマンやサポーターが、プレイヤーのためのチップをリクエストするので、少額でもいいから応えてあげるのがエチケットだ。

街のシンボルのひとつでもあるNISSAN STADIUM。NFLフットボールチームNashville Titansや地元大学フットボールチームの本拠地になっている。数々のメジャーコンサートなども行われる。

CHECK! アメリカでドライブするならAAAへの加入は必須

「AAA」は日本でいうところのJAFで、“トリプルA”と発音する。

基本はクルマが壊れたときのロードサービスを提供してくれるシステムで、会員になると格安で修理に来てくれたり、クルマを牽引してくれる。

ただし「プラス」というグレードのメンバーにならないと牽引してもらえる距離が短く、現実的には使いづらいという点がある。

しかもこの「プラス」メンバーは入会後2年目からの資格となり、初年度はスタンダードな契約のみしかない。

AAAはJAFと提携しているので、JAFメンバーであれば、アメリカでドライブするときには会員証を携行しておきたい。

B.B.キングやエルビス・プレスリーなど多数のビッグネームが誕生したメンフィス

メンフィスの街中にはMATAトロリーと呼ばれる路面電車が走っていて、いまも街の人の足となっている。

ナッシュビルを堪能した翌日も大好きな音楽を求めて西に移動。

テネシー州、ミシシッピー州、アーカンソー州の州境の街メンフィスにも、大規模なミュージックタウンがある。

メンフィスのビールストリートにもライブバーが軒を連ねる。ナッシュビルより規模は劣るが、ブルースやジャズを楽しみたいならこちら。

ビールストリートに集まる、ブルースクラブを中心とした数々のライブハウス。ここでも、ナッシュビル同様にハイグレードなライブミュージックを楽しむことができる。

B.B.キングがオーナーを務めたクラブもあるので、ブルース好きの人にとっても聖地といえる場所だ。

エルビス・プレスリーが初めてレコーディングを行ったのが、このサンスタジオ。現在も夜間はレコーディングスタジオとして運営されているが、日中はミュージアムとして開放されるので、ツアーに参加すれば内部を見ることができる。

また近郊には、エルビス・プレスリーが初めてレコーディングをしたスタジオや彼のミュージアム、さらに彼の自邸が公開されているグレースランドなどもあり、常に全米からファンが集まってくる街だ。

さらにブルース好きのコアなファンにおすすめしたいのが、メンフィスから約1時間半南下した場所にあるミシシッピー州クラークスデイル。

その昔、綿花畑で働く黒人の労働層が仕事後に集まり、飲んだり食べたり、音楽を楽しんだのがジュークジョイントと呼ばれる場所。これは現存する最古のジュークジョイント“ Po Monkey Lounge”。

ここは19世紀末に黒人のワーク・ソングとして自然発生的に生まれ、それが発展したデルタブルースのルーツともいえる場所。

こうしたマニアックなアメリカン・カルチャーに生で触れることができるのも、この広大なアメリカ大陸でしか味わえないロードトリップの魅力だ。

クリーム時代のエリック・クラプトンの演奏で、世界的に知られることになったCROSSROAD。ハイウェイ61と49の交差点にはギターをモチーフにしたモニュメントが掲げられている。

CHECK! セントラルBBQのベイビーバックリブ

メンフィスを訪れることがあったら、絶対に試してほしいのが、セントラルBBQのベイビーバックリブ。

ボーンから崩れ落ちるほど、とろっとろの状態に調理されたお肉は、超絶おいしい至高の一品。

自分のアメリカ生活体験上、まちがいなくナンバー1の味で、前回のロードトリップの目的は、この店のBBQを食べることだったほど。

写真、文:Yusuke Makino, June(カーネルUSAブランチ) 
取材協力:ミシシッピ・リバー・カントリー 
http://mrcusa.jp 
初出:カーネル2023年9月号vol.62 

※記事中で紹介しているルートや場所は、事前に安全を確認し行動しています。慣れない場所でのトリップには、治安面を含めた安全をしっかりご確認のうえ、計画行動する事をおすすめします。