【概要】長距離運転でダメージを受けた体に行うストレッチを紹介。コンディショニング・トレーニング施設・ プライマリ メディカル サポートが監修。

長距離の運転後、クルマを降りると体のあちこちがガチガチ……。そんな経験をしたことがないだろうか。

そんなガチガチボディは万病のモト。そこで今回は、長距離ドライブから体が受けるダメージに注目。

クルマから降りた直後や自宅で行えば、筋肉や関節の硬さがとれる効果抜群のストレッチを取り上げる。

教えてくれたのは……プライマリ メディカル サポート

体に不調を抱える人に施術を行っているコンディショニング・トレーニング施設。今回、アドバイスをくれたのは、同施設の岡崎倫江先生と金子雅明先生だ。彼らは、医学博士であり、筋肉と骨格の専門家、理学療法士(国家資格)でもある、“体の動きの”プロフェッショナルだ。
https://primarymedicalsupport.com/

なぜ、長距離ドライブは体によくないのか

人間は体のどこかの筋肉や関節が硬くて動きにくくなると、ほかの動かせる部分を使って、その動きにくくなっている部分をカバーしようとする。

すると、今度は問題がなかった筋肉まで硬くなって動きが悪くなってしまい、ガチガチの体になってしまう。

それに加え、硬さに差が出ることで、左右や前後のバランスが崩れた体になってしまう……。

その結果、肩こりや腰痛、首の痛みや五十肩などはもちろんのこと、息苦しさを感じたり、内臓の働きが悪くなったりと、とにかく不調のデパートのような体になってしまうのだ。

ここで知っておいてほしいのは、“立っているより座っているほうが、体は大きなダメージを受ける”ということ。

座っているときは、立っているときよりも1.4倍もの重圧が腰まわりにかかっているというデータもあるほどだ。

何もせずにただ座っているだけでも体には大きな負担がかかるというのに、それにクルマを操作するという動作が加われば、どれほど体に大きな負担がかかるかは想像に難くないはずだ。

全身のあちこちが痛みだらけでは、クルマの運転どころか、日常生活にも支障が出てしまう。

だからこそ、運転中の姿勢には気を使い、運転後も体のメンテナンスを怠ってはいけないのだ。

実践① 長距離ドライブ中に行うストレッチ

運転が長時間にわたるようなときはノンストップで走るのではなく、休憩をとり、そのときにストレッチを行うのがガチガチボディの防止には必須だ。

ここでは2種類の、休憩中にできる効果抜群のストレッチを紹介する。しっかり伸ばしておくだけで、首や肩だけではなく上半身全体の筋肉がほぐれ、血行がよくなり、肩こりや首すじの痛みなどを緩和できる。

ストレッチ1 脇腹を伸ばして、やわらかさを取り戻す

左(手のひらを上にして1回、手のひらを下に向けて1回)、右(手のひらを上にして1回、手のひらを下に向けて1回)×2セット

背すじを伸ばしてクルマの床などに座り、両手を真上に。片手で、もう一方の手首をつかむ。つかまれているほうの手のひらは真上に向ける。

自然な呼吸のまま、つかんでいる腕のほうにもう一方の手を引っ張って体を真横にゆっくり傾けていき、痛みが出ない程度に伸ばしきったら10秒キープ。

体を元に戻し、今度は手のひらを下に向けて同様に体を真横にゆっくり傾けて10秒キープ。これを左右行う。

ストレッチ2 胸を開いて呼吸をラクにする

背すじを伸ばして立ち、手を後ろに組む。そのまま上を向き、後ろに組んだ手で体を後ろに引っ張る。

その状態のまま首をゆっくり5秒くらいかけて片方に傾け、首すじが伸びきって気持ちいい位置で止め、元の状態に戻す。これを左右行う。

「ふんぞり返り姿勢」が体に大ダメージを与える

座った姿勢のなかでもとくに体に悪いのは前かがみの姿勢、いわゆる「猫背」の姿勢といわれている。しかし、じつは、後ろに傾いた運転姿勢も体全体への負担が大きい。

実際、高速道路などを走っていると、左のイラストのようなふんぞり返ったようなドライビングポジションになっていることが多いのではないだろうか。

脚を前に投げ出して、シートは倒し気味。背中はシートに預けて頭もヘッドレストにもたれながら、少し下を見るような視線で、腕はほとんどまっすぐにした状態になってハンドルをつかむ感じに……。

これは体全体の筋肉が硬くなる姿勢の典型なのだ。長距離ドライブのときにこのような姿勢になっていないか、思い起こしてみてほしい。

運転中に硬くなる筋肉の代表格は、腹斜筋(ふくしゃきん)と呼ばれる脇腹の部分。ここはコルセットのような役目をして体を安定させる大事な筋肉だ。

ほかに、肩まわり、胸まわり、背中、腰まわりも硬くなりやすい。

これらは体を支える柱となる筋肉なので、柔軟性が失われると、体にはさまざまな弊害が発生する。 

筋肉は自力で縮むことはできるが、伸びることができないしくみなので、放置すると硬くなるいっぽう。

そのため、ストレッチをして外的な力を加えて筋肉を伸ばしてあげる以外に、筋肉の柔軟性を維持する手立てはないのだ。

肩こり、腰痛を悪化させる運転姿勢

後ろに傾いた姿勢は肩や首まわり、脇腹に大きな負担をかける。とくに、腕を伸ばしてハンドルをつかむと、肩への負担が大きくなり、肩こりが悪化する。

また上半身の重みは股関節・腰まわりにズシンと乗ることになるため、腰痛を引き起こすこともある。

実践② 自宅で行う長距離ドライブ後のストレッチ

ここからは運転後に自宅でとはいわず、毎日でも行ってほしいストレッチを紹介。

寝そべって行うことで背中や脇腹、腰まわり、お尻、脚全体の筋肉を効率的に伸ばし、血流も改善できる。

長距離ドライブ後のストレッチ1 全身の筋肉を伸ばし、血流を促進する

仰向けになって背伸びして、脱力する

バスタオルを四つ折りにして背中に敷いて仰向けになり、両手を組んで腕を頭上に伸ばす。バスタオルの位置は肩甲骨の下あたりが目安。

頭上で組んだ両手をさらに伸ばして5秒キープし、その後、ゆっくり脱力する。これを繰り返す。

息を止めずに自然に呼吸をしながら行おう。脇腹や胸まわり、背中の筋肉も全体的に伸びていることを意識しながら行うと効果的だ。

長距離ドライブ後のストレッチ2 脇腹、股関節まわりの硬さをとる

両ヒザを左右に振り股関節まわりをほぐす

バスタオルを四つ折りにして背中に敷いて仰向けになり、両手を組んで腕を頭上に伸ばす。

そのまま左右のヒザをそろえて立て、ゆっくり片側に倒して止めては戻す。これを左右交互に繰り返す。

息を止めずに自然に呼吸をしながら行おう。お腹を常に天井を向けるようにして、腰から下だけをゆっくりひねることでストレッチ効果を高めることができる。

監修:プライマリ メディカル サポート 
写真:宮田幸司、Pixabay 
文:汽水丹治 
初出:カーネル2023年9月号vol.62