【概要】ワイルドシングスの焚き火台「FIRE BOX(ファイヤーボックス)」をアウトドアライターがレビュー。機能、特徴、注目のポイント、組み立ての手順など。

焚き火シーズンを前に、ワイルドシングスが新作焚き火台を発表した。その名は「FIRE BOX(ファイヤーボックス)」。

奇をてらわない名付けだが、製作はワンアクション組み立てで度肝を抜かされた「SOLOIST HOMURA(ソリスト ホムラ)」を生んだニューテックジャパンによるもの。

「FIRE BOX」もほかの焚き火台にはないギミックが搭載されているはず! さっそく試作モデルを借りてキャンプ場に向かった。

収納サイズは505(金具含む)/48×27.7×H24.3cm、約6kg。

「FIRE BOX」を取り出すと、そのまんまボックス。でかい。

ワイルドシングスと鎌倉天幕のダブルネーム。

素材はSUS 430ヘアライン材で、ステンレスに髪の毛ほどの細い線が入った加工を施している。テカりを抑え、落ち着いた雰囲気を醸した素材だ。

そのためだろう、クルマに載せたままやガレージに置いたままでもサマになる。倉庫にしまい込まなくてもいいのがなにげに便利。

「FIRE BOX」の中に入っているのは五徳とロストルだけ。ぽっかり空いた箱形なので、薪や木炭、トング、グローブなどを入れたまま持ち運べるというわけ。

長辺側が48cmなのでたいていの薪が入る。余った薪を持ち帰り、自宅で保管するのに便利なナイスアイデア。

フタがないので重ねることはできないが、そのぶん、薪を乾かしやすいし、腕自慢なら板を加工してフタを作れる。完成度が高そうなルックスで、それでいて遊びがあるのがおもしろい。

実は製作を担当しているニューテックジャパンによると、フタの販売を検討中とのこと。これはうれしいニュースだ。

組み立てのポイントは外開きの側板

「FIRE BOX」は組み立て不要の焚き火台ではない。そのまま焚き火をすると、熱が地面にダイレクトに伝わってしまうので、ロストルを持ち上げるのだ。そのギミックとシルエットにニヤリとしてしまう。

組み立て手順は下記のとおり。

①本体の両側面にバックルが付いているので、まずこれを開放する。

②側面を片側ずつ、立てたまま外側に開いたらハンドルを引き上げる。側面の板が地面に勢いよく倒れる場合があるので、焚き火シートなどを敷いておく方がいい。

③ハンドルと火床の高さをキープしたまま側面を縮め、バックルでロックする。収納時は4面すべて垂直で側面の下側が三角形に開いているが、組み立て時は側面の三角形が閉じて底が山型になり、全体が逆ハの字になっている。

サイズは59(ハンドルを倒した時)/48/50(金具含む)×32/17(底)×H34(五徳上段まで)/40cm。

完成。

特段、細かなパーツをねじ込んだり差し込んだりすることなく組み立てられる。

撤収はこの逆戻しなので、手が触れるのはハンドルとパッチン錠、そして側面のフチのみ。手やグローブが汚れにくいのもいい感じだ。

気になったのは組み立て途中でハンドルが外側に倒れることと、パッチン錠のツメ側(写真左側)がくるくる角度が変わること。

側面パネルをくっつけ、いざパッチン錠を引っかけようとしてもツメ側が下に向くとうまく引っかけられない。

錠が固定されているといいように思うのだが、開発者によると「焚き火をしているうちに金属のゆがみが出ても、調整が利くようにあえてくるくる回るようにしている」とのこと。

ゆがんで箱として機能できなくなるようではどうしようもない。長く使うための仕様だと思えば飲み込める。

結局、大きな火床は使いやすい!

火床には大きめの穴が並ぶロストルが敷かれており、その周囲にも空間があるため空気が通ってよく燃えそうだ。

また、火床はゆったりしていて、太い薪も長い薪も受け止めてくれる。

焚き火台によってはすり鉢状や筒状で薪の置き方を変えられないものがあり、「よく燃えるけどもう少し落ち着かせたい」と感じることも。

「FIRE BOX」はゆったり火床のため、薪を枕に斜め方向に薪を重ねることもでき、ある程度、組み立て方に自由度があるのがいい。

大型の箱形焚き火台に見えるが「FIREBOX」は火床が上がるので少量の薪で調理ができる。

五徳は高さを変えられ、上段にセットしておくと薪の組み方で火力を調節しやすい。

一方、下段は7cm下になりφ8cmほどの薪を1列並べるとかなり近い。木炭や少量の熾火での調理向きか。

焚き火台を組み立てると、側面の板が逆ハの字型となって底が山型になる。

地面に置いたときのガタつきを防ぐと同時に、空気を取り入れやすい構造でもある。湿気を含んだ薪だったが、途中で立ち消えることもなくよく燃えた。

写真では薪をいっぱい入れているように思えるが、実際は火床が高いので、薪は細めの薪を並べて太い薪を1本を斜めに置いているのみ。

薪をむだに使わず、効率よく炎を楽しめるというわけ。

五徳の耐荷重は公表されていないが、スキレットやダッチオーブンに対応するほど安定感がある。

その半面、φ12cm以下のクッカーは載せられない。そのままではシェラカップを載せられないのは残念だが、火床が広いので、別の五徳を用意するよりも薪の脇に置いて温めるほうが現実的といえそう。

「FIRE BOX」は決してコンパクトにたためるわけではないが、箱として持ち運べる。

箱だけど、側板が開いて火床が持ち上がり、環境にやさしくがたつきの少ない焚き火台になる。炎も眺めやすい。

市場はすでに多くの焚き火台があふれている。

ともすれば見知った焚き火台を思い浮かべる製品になってしまうものだが、「FIRE BOX」は先達にはないギミックが詰まった意欲作。

どこまで先行ライバルたちに迫るか、楽しみだ。

【問】ニューテックジャパン 

写真、文:大森弘恵 

▼著者プロフィール▼

大森弘恵……キャンプを中心としたアウトドアや旅の雑誌、ウェブメディアなどで活動するフリー編集者&ライター。キャンプの仕事に携わること約30年、ソロキャンプ歴は36年のおひつじ座 。