【概要】千葉県房総半島の車中泊旅ガイド。②では外房・内陸部の魅力やおすすめ&車中泊スポット、房総3大ラーメンなどを、年間300日以上ホンダ・N-VANで日本全国を車中泊で旅しているruiさんが紹介。

外房・内陸部 さらなる深みを求めて

■車中泊で千葉・房総半島を旅する①内房編 絶景&パワースポットで海の魅力を再発見

外房の海岸線沿いは波が高く、釣ヶ崎海岸は東京オリンピックのサーフィン会場になったほど、サーフィンのメッカ。九十九里の海岸線沿いには海水浴場が多く、海を眺めながら休憩できる駐車場も多い。

鴨川シーワールドや勝浦海中公園など、海にまつわるスポットも豊富で、なかでも「日本三大朝市」のひとつ勝浦朝市では、その日とれた新鮮な魚介類を売る屋台が軒を並べる(ちなみに、残りふたつは佐賀県の呼子朝市、石川県の輪島朝市)。

近年は、高齢化のせいで平日は閑散としているから、行くなら土日や祝日がおすすめ、と若き移住者が教えてくれた。

海の豊かさが目立つ房総だが、真の魅力は内陸部に隠れている。特に「房総の奥座敷」と呼ばれる養老渓谷付近は、都心からクルマで1時間ほどながら、秘境と呼ぶにふさわしい自然の神秘にあふれている。四季折々の美しさが、訪れるたびに違った表情を見せてくれる。

また、古くからの歴史が息づく城郭や神社仏閣も多い。曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』にまつわる史跡も各所にあるので、聖地めぐりをしていくうちに、江戸時代のファンタジー小説がまるで史実のように感じられるかも!?

近年のアウトドアブームにより、キャンプ場やグランピング施設が急増。前からあった温泉や農園などと連携した地域活性化が進んでいるおかげで、車中泊スポットも増えてきている。

地の利と奥深さを兼ね備えた房総半島。車中泊旅の初心者から日本一周経験者まで、幅広く、何度訪れても楽しい。まさにボーナスステージのような地域だ。

都会の喧騒に疲れたときにすぐ行ける「非日常」を、きっと訪れるたびに発見することができるだろう。

スポット

房総半島の山間部は素掘りトンネルの宝庫

左より、第二永井隧道、清水代隧道、向山・共栄トンネル、燈籠坂大師の切り通しトンネル。いずれも大型車はもちろん、小型車でも通行は困難なので近くに停車し、徒歩で行くのがおすすめ。

ポッポの丘 じつは電車で寝ることも「車中泊」。タイムスリップの丘

ポッポの丘/千葉県いすみ市作田1298

房総の内陸部、いすみ市にある鉄道車両保存施設。広大な敷地に懐かしい鉄道車両がずらりと並ぶ。多くの車両は中がギャラリーになっているので入ることができる。

不定期だがブルートレインの寝台車も開放されており、昔懐かしい当時の旅情を感じることができるので、鉄道ファンだけでなく大人から子どもまで楽しめる。

『南総里見八犬伝』の、始まりと終わりの地

伏姫籠穴/千葉県南房総市合戸

『南総里見八犬伝』の「南総」とは南房総のこと。各地に里見八犬伝にまつわる史跡が数多くあり、そのうちのひとつである伏姫籠穴は、物語の最初と最後に登場する。

静寂に包まれた森の中に八犬士にちなんだ広場や八つの球が供えられた洞穴があり、八犬伝がファンタジーであることを忘れさせる。

大多喜城 房総の小江戸、歴史の面影が残る城下町

大多喜城/千葉県夷隅郡大多喜町大多喜481

徳川四天王のひとり・本多忠勝が築いた大多喜城。その城下町・大多喜はいまなお江戸時代の商家や蔵などが軒を連ね、風情ある街並みが保存されている。

また、天然ガス発祥の地ともいわれており、駅前に設置されたガス燈がノスタルジックな雰囲気をさらに演出している。

旧家を利用した食事処も多く、土日なら人力車での街めぐりもでき、街全体で江戸情緒を満喫できる。見どころの多い大多喜の街を散策したあとは、大多喜城から街並みを一望するのもいいだろう。

町営の駐車場は車高によって値段が変わるので、大型車は事前に料金を確認しておいたほうがいい。

ローカル線にしかない旅情もある

小湊線飯給駅/千葉県市原市飯給943-3

房総半島の中央部を横断する小湊鉄道といすみ鉄道の駅は独特の工夫を凝らした駅舎が多く、ローカル線の小さな駅をめぐるのが好きな人にはたまらないスポットの宝庫だ。

そのうちのひとつ、小湊線飯給(いたぶ)駅の「世界一広いトイレ」は、一見トイレだとはわからないくらいの広い敷地にポツンと個室がある。なお、ここは女性トイレ。

外房の車中泊はココで!

九十九里の片貝海水浴場から歩いて10分の立地にあるVanlife BASE は、設備の充実したおしゃれなサーファーズハウスが併設されているので、初心者はもちろん、車中泊ノマドワーカーにも人気のスポット。

オーナーも敷地内のバンに住んでいる筋金入りのバンライファー。おもしろい旅の話が聞ける(!?)外房旅の拠点にぴったりのスポットだ。

Vanlife BASE
千葉県山武郡九十九里町小関2347-31

グルメ

君は「房総3大ラーメン」を食べたことがあるか⁉

漁師や海女が冷えた体を温めるためにできた勝浦タンタン麺や、漁からの帰りを待つ妻たちが始めた竹岡式など、独特の発祥をもつ房総のラーメン文化。長い歴史に裏付けられた絶品のラーメンをコンプリートしてみよう。

アリランラーメン

「こんな山奥に本当にラーメン屋があるのか?」と不安になることで有名なお店。甘辛い醤油ベースに、ニンニク、ニラ、ごろっと入ったタマネギが特徴。栄養たっぷりのまるで薬膳のようなスープは、名前のイメージに反して辛さは控えめ。

らーめん八平/千葉県長生郡長南町山内(山内ダム入り口)

勝浦タンタン麺

一般的な担々麺はひき肉やゴマがベースだが、勝浦タンタン麺はラー油とタマネギがスープのメイン。「ラーメン松野屋」の勝浦タンタン麺は、単に辛いだけでなく、深いうま味が辛さの奥に控えている。油そばや普通のラーメンも絶品。

ラーメン松野屋/千葉県勝浦市松野

竹岡式ラーメン

竹岡式らーめん発祥の「梅乃屋」はチャーシューの煮汁をお湯で割った醤油ベースのスープが特徴的。薬味のタマネギのみじん切りを注文する人も多い。チャーシューが絶品だが、混雑時にはチャーシューメンがなくなる日もあるので注意。

梅乃屋/千葉県富津市竹岡410

執筆:rui

ホンダ・N-VANをDIYして、年間300日以上車中泊しながら日本全国を旅する人。もともとサウンドデザイナーだったが、旅の風景を写真や映像で撮るようになり、現在はライターとしても活動中。

文、写真:rui 
初出:カーネル2023年5月号vol.60