【概要】人気車中泊YouTuber・埼玉の仙人さんインタビュー。名前の由来やYouTubeを始めたきっかけなどこれまでの軌跡や今後やりたいこと、現在の車中泊ブームについてなど。

約16万9000人ものチャンネル登録数を誇る人気車中泊YouTuberが、ついに車中泊専門誌『カーネル』初登場!

自身のYouTube以外にあまり登場することのなかったインフルエンサーに、これまで話すことのなかった「埼玉の仙人」としての軌跡や未来について、現在の正直な気持ちを語ってもらった。まさに必読のインタビューをご堪能あれ!

取材日は3月初旬。埼玉県秩父地方の夜は、まだ肌寒い。それでも緑色のジャージを崩さない。

埼玉の仙人 プロフィール

YouTubeチャンネル「埼玉の仙人」として活躍している人気インフルエンサーのひとり。車中泊系YouTuberの草分け的存在。車中泊やクルマ旅を中心としながら、アウトドア、登山、自転車、ガジェットのレビューなどさまざまなジャンルの動画を配信中。かつては、けん玉ギネス世界記録2種類を保有。年齢は自称「1038歳」。

自分が楽しいことをしたいから、“箱”を作ってみた

カーネル編集部(以下、編) そもそも「埼玉の仙人」を名乗るきっかけを教えてください。

埼玉の仙人 もともとはYouTubeを始めた初期のころ、福岡に住んでいる仲間がいました。その人からすると「埼玉は東京のすぐ近くだから都会だと思っていた」のに、僕の動画に出てくるのは山の中ばっかりなんで、「埼玉だけど、なんか仙人みたいな生活してるね」っていわれて。

そこから「埼玉の仙人」と名乗るようになったんですよ。YouTubeを始めて、いま9年ちょっとなので、もう8年前ぐらいにはいわれていました。

 そのYouTubeをやろうと思ったきっかけは?

埼玉の仙人 きっかけは、東日本大震災です。あの時は会社に勤めていたんですけど、震災後に「この先、また何があるかわからないな」と思ってしまって。

そこから数年は普通に働いていましたが、心の中では、違う仕事がしてみたいという思いがあって。ちょうどYouTuberが出始めたころだったと思います。

「じゃあちょっと仕事辞めて、次の仕事を探すまでの間、やってみようかな」という感じだったんですよ。最初は仕事のつもりじゃなく、おもしろそうだな、と軽い気持ちで、やってみたのが始まりです。

親戚から譲り受けたホンダ・アクティトラックはMTかつ4WD仕様。「箱」を作る前は、荷台で「寝袋泊」をしたこともあった。次はカプセルホテルのベッドユニットを購入して積載しようと計画中。

 YouTubeをスタートした際、最初から題材は車中泊だったのですか?

埼玉の仙人 最初はガジェット系を紹介していました。そこからカップラーメンを食べてみたりとか、激辛食品を食べてみたり、さらにはダイエットをしたり……。自分でいうのもなんですが、迷走していましたね。

埼玉の仙人 YouTubeを始めて4年くらいのころに、親戚から「もう使っていない軽トラがあるから譲るよ」という話がきました。

「じゃあ軽トラの荷台に箱でも作って、旅をしたらおもしろいんじゃないか!?」と思ったところ、なんと父親も一緒に作ってくれたんですよ。

ふたりとも日曜大工は全然しないんですけど、材料を買ってきて箱作って……。なんとなく形ができちゃったんで「じゃあ旅に出ようか!」みたいな。

ツーバイフォー材と合板で組まれたシンプルな「箱」。防水処理はしっかり施されているが断熱材は入っていない。

 それは、YouTubeチャンネルの登録数が、どれくらいの時期ですか?

埼玉の仙人 軽トラを作っているときは、たぶん5万人になる前だったと思います。それぐらいから、動画を多くの人に見てもらえるようになって、急にチャンネル登録してくれる人が増えてきました。

 手応えは、それぐらいから感じていましたか?

埼玉の仙人 そうですね。それまで本当に全然再生されなかったのが、急に再生されるようになって。「こっちの方向なのかな!?」というのはありました。

いま思えば、軽トラを作っているときが一番楽しかったかもしれないですね。もちろん、動画をより多く再生してもらいたいっていうのはありましたけど、それよりも自分の知らない世界を一歩一歩つくっていくのが楽しかったですね。

ベッド下は「収穫箱」を使うのが仙人流。自転車は自作のレールとAmazonで購入したマウントで固定する。

 現在はあまり楽しくない?

埼玉の仙人 いまはもう完成しているので、次は「さあ、どこに旅へ行こう?」と考える。それももちろん楽しいです。でも、「もっとおもしろいことをしなきゃいけないんじゃないか!?」といったプレッシャーも感じます。

 YouTubeを始めたころ、現在の「埼玉の仙人」をイメージされていましたか?

埼玉の仙人 いやまったく。本当にまったくです。「ダラダラと続けて、このままうまくいったらいいな」というのはありましたけれども。ちょっと追い風を感じつつ。いまは、本当にありがたいことに、想像できないくらい、出来過ぎな感じはあります。

 では、今後のことは考えていますか?

埼玉の仙人 向上心がないんです。目標が全然なくて。「無理してガンガン再生数取ってやるぜ」とか「無理やりひねり出して動画作らなきゃ」というよりは、自分が楽しんでいる状態を維持したい。そのうえで動画を撮って、みなさんとシェアしたい。

最近のブームで、逆に楽しみ方を気づかされている、という感じです

 いま「車中泊ブーム」といわれています。そのブームが、仙人さんを追っかけてきていますが、いまのブームを見て、どう思われます?

埼玉の仙人 僕なんかより、すごい人がいっぱい出てきて、逆に教えてもらうというか。参考になることも多いです。だから、むしろもっと増えてほしいと思います。

外壁用の換気口とともに、対角線上には吸気口も設置。天井のUSBハブはケーブルホルダーとして使用。

埼玉の仙人 車中泊って、ひとりとか家族とか、せいぜい2~3人ぐらいの規模でやるものだと思っていました。僕もひとり旅ですし。でもいまはイベントも多く開催され、「横同士」でつながっていますよね。そんなふうになるなんて、まったく想像していなかった。

実際に参加してみて「こういう楽しみ方もあるんだな」と。僕は「旅」が第一の目的で、それに付随して、手段として車中泊を行っていましたから。

 いまの「車中泊ブーム」はそうじゃない?

埼玉の仙人 車中泊そのものを楽しむことが、エンターテインメントになっていますよね。最初はびっくりしました。

だから、僕みたいな「手段」として車中泊を行っている者が、イベントとかに参加してもいいのかな? というのはありました。僕にとって車中泊は、あくまで寝る場所で、雨風をしのぐためだったんですよ。

「箱」の柱であるツーバイフォー材は、シンプソン金具で効率的に接合。室内のいたるところに、ライトとカメラマウントが取り付けられ、撮影用も兼ねている照明は、自在に移動できる。

 ゆっくりと車内でくつろぐ、という感じではない?

埼玉の仙人 旅をしていると、どうしても時間に追われてしまうことも少なくありません。1カ所にとどまる時間を短くして、ごはんを食べたら早く寝て、次の日に備える……。

車中泊を楽しむより、本当に「体を休めるための場所」というイメージだったんです。けれど、イベントに参加してみんなと話していると「こういう楽しみ方もあるな」と、逆に気づかされました。

海外でも日本でも、知らない場所に行くというのが夢ですね

 車中泊での旅を始める前と後で、自分が変わったことはありますか?

埼玉の仙人 もともとインドアというか出不精でした。けれど旅先で、能動的に動ける自分に気がついて。これは正直、自分でも思っていなかったことでした。

「もうここには、次にいつ来られるかわからない。もしかしたら来られないかもしれない」と思っているので、「だったら楽しんでやろう」と。

ひとりでこんなに旅を楽しめるようになったのは、車中泊を始めてからかもしれないですね。最近は、もう恥ずかしさとかはなくなって、結構「埼玉の仙人」でいることが自然になってきているかもしれません。そこが、自分自身で変わったと感じるところです。

 いまの仙人さんにとって、車中泊とは?

終始笑顔でインタビューに答えてくれた仙人。地元への来訪に喜んでくれているのが、表情からもよくわかる。

埼玉の仙人 楽しんでいる気持ちは、引き続きあります。変なことをいっているかもしれないですが、やっぱり夏は暑いし、冬は寒いし、室内は狭いし……。結構ハードなんですよね。そのハードなことをやっているのが楽しい!

そういう過酷なことをやって「俺、やったぜ」みたいな。自分の中で、自分自身に対して「バッジ」を獲得している感じですかね。唯一、眠っているときが、一番リラックスしているときなんですよね。

 将来のスタイルで、やってみたいことはありますか?

埼玉の仙人 チャンスがあれば、キャブコンとかも乗ってみたいですね。2~3日、いつもと違うことを試してみたい。浮気心じゃないですけど。それで「快適すぎる」と思ったら、不便な「箱」に帰ってくるかもしれませんね。

夢としては、海外を旅してみたいというのはあります。野望とかではなく、純粋にやりたいこととして、日本でも海外でも「知らない場所」に行ってみたい。

 最後に。愛車の見てほしいポイントを教えてください。

埼玉の仙人 ないですね(笑)。

写真:逢坂 聡 
文:rui 
聞き手:大橋保之(カーネル編集部)
取材協力:RVパークみどりの村、【彩の国】玉んちゅキャンパー 
初出:カーネル2023年5月号vol.60