【概要】雪道で立ち往生しないための予防策や注意点、初期対応などを、災害支援団体「日本笑顔プロジェクト」に取材。雪の立ち往生に対応するアイテムや日本笑顔プロジェクトの活動についても。

「10年に一度の大寒波」や「観測史上最大の積雪」などといった表現が頻繁に多くのメディアから聞こえてくるようになった。

予想外の大雪で、対応できないクルマが道を塞いでしまい、大規模な立ち往生をまき起こしている。そんな大惨事を起こさないためには何を注意すればいいのだろうか?

さらに、巻き込まれたらどうしたらいいか? やはり大切なのは事前準備だった!

昨年、新潟県柏崎市の国道8号線で起こった立ち往生の様子。最大で約800台ものクルマが並び、身動きが取れない状態が約38時間続いたという。

「災害」というと、地震や台風などの大雨を思い浮かべる人が多い。しかし近年では、冬の大寒波や大雪の情報も、定期的に天気予報から流れてくるようになった。

これらはただの「悪天候」という枠から突き抜けて、もはや「災害」といえる。そして、「10年に一度の大寒波」とか「観測史上最大の積雪」といった言葉が頻繁に聞こえてくるようになった。

これらはラニーニャ現象などの影響とも言われており、もはや異常気象が日常化してきている。

そんななか、特に問題になっているのが、大雪による立ち往生だ。2020年12月には関越道で約2100台が立ち往生に巻き込まれている。

さらに、昨年末に新潟県柏崎市の国道8号で起こった立ち往生では、最大で約800台のクルマが、約38時間も大雪で動けなくなった。

では、そもそもなぜ大雪による立ち往生が起こるのか? われわれのような素人の考えでは、これだけメディアで「大寒波到来」「大雪」を報じているならば、打つ手はあるのでは? と思ってしまう。

そこで今回、そんな疑問に答えてくれたのは、ネクスコなどと協定を結び、立ち往生が発生した際は、いち早く救援に向かう「日本笑顔プロジェクト」の災害対応を担当している坂本さんだ。

そもそも「日本笑顔プロジェクト」とは?

「2011年の東日本大震災をきっかけに発足した災害支援団体です。2019年の台風19号により、本部のある長野県小布施町や近隣市町村が、千曲川の決壊で水害にあいました。

この際、公助による復旧活動の限界などの多くの教訓を得ました。そうした経験から生まれたのが日本笑顔プロジェクトです」。

機動力に優れる4輪バギーが救援物資を運びながら、状況把握に努める。被災者にとっては心強い存在だったに違いない。

災害時に民間レベルで小型重機や四輪バギーなどを使い、災害復旧活動ができるように、各種資格取得講習やトレーニングなどができる施設(ライフアミューズメントパーク・ノーボnuovo)を、2020年10月から運営している。

「開始からわずか20カ月で、重機オペレーター育成が1000人を超えました。実際に、全国各地の被災地に500名以上の重機オペレーターを派遣しています」。

ではそんな日本笑顔プロジェクトの災害時の動きとは?

「災害が発生すると、災害協定先や行政・ボランティアセンター、災害支援のNPOから現地調査や要請が入ります。

その後、先発隊が現地調査を行い、支援活動の体制や規模を決定。日本笑顔プロジェクトで日頃から重機やバギーのトレーニングを積んでいる会員さんに、派遣要請を行い、現地へと向かってもらいます」。

では、坂本さんが、日本笑顔プロジェクトに参加することになったきっかけは?

「実は、以前に消防士をめざしていたのですが、叶いませんでした。しかし、どうしても人のためになる仕事がしたいと思い、2019年の台風19号の際にボランティア活動に参加しました。そのつながりで日本笑顔プロジェクトに2022年2月に転職をしました」。

28歳という若さながら、その肩には重責を担う。

ちなみに現在さまざまな団体と結んでいる災害協定は、どういったものなのだろうか?

「現在では、行政や企業・団体など50を超える組織と、協定や連携を結んでいます。道路上で災害が発生した場合は、一般道を管理する国土交通省から、高速道路ではネクスコから要請が入ります。

立ち往生時、実際にクルマに配られた支援物資。

冬の期間は、大雪警報などが出ると事前に待機要請が入り、回送車に四輪バギーを乗せて現地に向かいます。

万が一立ち往生が発生した場合は、四輪バギーに支援物資(非常食や水)や燃料を積み込み、滞留車のドライバーさんの安否確認とともに物資を届けます」。

昨年末、新潟県で起こった立ち往生の原因はなんだったのか?

「予報よりも増えた降雪量で、新潟管内全域の高速道路が全面通行止めになり、車両はすべて一般道に流れ込みました。結果として、流れ込んだ先の一般道も除雪がまにあわず、立ち往生が発生しました」。

この際の日本笑顔プロジェクトとしての対応を具体的に知りたい。

「国土交通省からの緊急支援要請を受け現地へ。国土交通省職員とともに、滞留車のドライバーや同乗者の安否を確認。

そして支援物資の配布、滞留車の台数把握を行いました。燃料の残量確認も行い、燃料の少ない車両には、携行缶で補給するため何度も往復をしました」。

立ち往生時、近くのコンビニの食品売り場。棚に商品がない。

ちなみに支援物資は何を配ったのだろうか?

「おもに水、ゼリーなどの非常食、そして燃料です。今回は、2年前の大雪時よりも支援活動中にあまり降雪が多くありませんでした。そのため、滞留車のマフラー付近の雪かきは不要でした」。

では、そもそも大雪で立ち往生が起こらないようにするために、各ドライバーが注意すべきことは?

「基本ではありますが、事前に行く先の天気予報の確認です。そして大雪になると予想される場合は外出を控えてもらいたいと思います。

さらに、関東圏の人のなかには、ノーマルタイヤのクルマも多いといわれています。スタッドレスタイヤの装着や、万が一に備えてチェーンも積んでおいてもらえたら」。

とはいえ、自分だけ注意しても防ぎきれないのが立ち往生だ。

巻き込まれた場合の初期対応は?

「まずはラジオなどでの情報収集ですね。スマホでももちろん可能ですが、スマホのバッテリー残量が少なくなるので、できるだけ控えたほうがいいと思います。

今回の支援中にも、何度かスマホの残量がないのでモバイルバッテリーがないかと聞かれました」。

準備しておくべきアイテムやそのほかの注意点は?

クルマには雪かき用のアイテムの準備を。

「非常食、携帯トイレ、折りたたみ式スコップ、容量の大きなモバイルバッテリーかポータブル電源など。そのほか、車内でスマホを充電できるように12Vのシガーソケットに繋げるケーブルも。さらには、暖をとれるブランケットなどですね」。

さらなる注意点もある。それは、普段から燃料タンクが半分になる前に給油し、燃料を満タンにして出掛けることを日常化すること。

これは、長時間の立ち往生に巻き込まれた場合、どうしてもエンジンオンにして、エアコンやヒーターを使用する状況が想定されるからだ。

もちろん車中泊の基本はアイドリングストップだが、それで低体温症になっては意味がない。一酸化炭素中毒にならないようにマフラーまわりの積雪に注意しながら、エンジンをかけなければいけないこともある。そんな状況下で燃料がなければ、暖をとることもままならない。

「燃料は半分になったら給油」をクセづけることが重要。

さらに、ガス欠になって動けなくなり、今度は自分が立ち往生の原因になってしまうことも。

「燃料は重要です。また、どうしても降雪が予想される天候で滞留に巻き込まれた際に、マフラーまわりの雪かきをしなければいけません。そのための雪かきアイテムもあると便利です」。

今後、何度もやってくるであろう「観測史上最大級の大雪」に対応するために、まずは予防策を知り、さらに緊急車中泊セットも準備してほしいところだ。