【概要】車のタイプ別に車中泊に使う場合のメリット、デメリットを紹介し、車中泊向きかどうかを検証。軽スーパーハイトワゴン、軽ハイトワゴン、軽ワンボックス編。

車中泊といえば、シートがフルフラットになればOKと思っているユーザーもいると思うが、実際にはそう簡単ではない。

シート形状はもともと、座ったときに最大の快適性、安全性が発揮できるよう設計されており、寝るという性能はさほど考えられていない。

そのため、全席を平らに近づけたとしても凹凸、傾斜が残り、人によってはそれが安眠を邪魔する要因となってしまうのである。

こういったファクターが、グレードごとの仕様、カテゴリーの差異などによってあるため、それをよく理解しないで新車を購入してしまうと、あとで「こんなハズでは……」ということになってしまう。

この企画は、カテゴリーごとにそのタイプのクルマのメリットやデメリットをつまびらかにすると同時に、車中泊に向いているかどうかを検証していく第2弾。

軽スーパーハイトワゴン、軽ハイトワゴン、軽ワンボックスを検証する。

車内の仕様によって寝心地はガラリと変わる。大きなクルマ≠車中泊向きということはわかっていただけると思う。

なお掲載している車種は各カテゴリーの代表モデルであり、全ラインアップではないことを、あらかじめお断りしておきたい。

軽スーパーハイトワゴン

軽自動車と思えない余裕のある車内空間

軽自動車のメインストリームとなっているカテゴリーで、昨今はアウトドアを意識したギア系がトレンド。4ナンバーモデルも登場し、ますます活況を呈していきそうだ。

ピックアップモデル

・スズキ スペーシア ベース

4ナンバーのスーパーハイトワゴンというニュータイプ。マルチボードの採用が特徴だ。

・スズキ スペーシア ギア

アウトドアライフを意識したデザインで、シリーズでも人気のモデル。スポーティなターボ車の設定がある。

・スズキ スペーシア

スペーシアシリーズのベーシックモデル。マイルドハイブリッド採用で、動力性能と燃費を両立している。

・ダイハツ タント ファンクロス

スペーシア ギアの好調に刺激されて登場したタントのギア系モデル。多彩なカラーが魅力。

軽スーパーハイトワゴンの「〇」

軽サイズ最大の居住空間
軽自動車サイズの居住空間としては、最も広いスペースを確保しているのが特徴。車種にもよるが、後部座席がスライド可能な場合、その居住性はもはや軽とは思えないほど快適だ。シートアレンジも豊富で、ライフスタイルに対応できる。都市生活では特に、この一台がベストチョイスと思わせてくれる。

軽スーパーハイトワゴンの「△」

大人が寝るにはやや狭い
シートアレンジが豊富で、車内長が2m近く確保されているにもかかわらず、車中泊での有効寸法は意外と小さい。5ナンバートールワゴン同様に、フルフラットシートにしてエアマットを併用しないと、安眠できる就寝スペースにはならない。NA車だと長距離ドライブがきつく、横風に弱いのも△。

軽ハイトワゴン

操縦安定性に優れ車内空間もジャスト

ワゴンRが開拓したカテゴリーで、いまや軽自動車のベーシックともいえる。昨今は、おしゃれなデザインの車種も登場し、選択肢も多様になっている。車中泊をするなら、助手席が前倒しできるかがポイント。

ピックアップモデル

・スズキ ワゴンR

このカテゴリーの元祖的モデル。パーソナルカーとしては申し分ない。

・ダイハツ ムーヴ キャンバス

レトロなデザインで、女性にも人気のモデル。ワゴンRよりも全長がありそうだが、実は同じ。

軽ハイトワゴンの「〇」

空気抵抗の少ない安定した走り
スーパーハイトワゴンに比べると車高が抑えられているため、高速走行時などに横風でフラつくことが少ない。車内の広さも絶妙で、1名でも広すぎないのがいいとのことで、このカテゴリーが昨今は再評価されている。スーパーハイトワゴンと比較すると、価格がリーズナブルなのも魅力だ。

軽ハイトワゴンの「△」

室内高が低いのに立駐に入らず
リアシート後方が狭いため、リクライニング角度が浅く、結果的にフラットシートの形状が中途半端になってしまう。チルトダウンをして荷室を拡大しても、マットなしでは寝られない。また車高が低いといっても平均1600㎜で、機械式駐車場によっては入れられないものも存在する。

軽ワンボックスカー

車中泊車として最強! 最近は安全性も向上

もはや多くを語る必要がないほど、車中泊に向いた軽ワンボックス。キャンピングカーのベース車両になることも多く、荷室床面長は1900㎜超え。高身長でもラクラク寝られる。

ピックアップモデル

・ダイハツ・ハイゼットカーゴ

17年ぶりにフルモデルチェンジを果たし、すべての面で進化。ターボ車の設定があるので、長距離移動もラク。

・スズキ エブリイバン

登場年は古いが、安全装備を見直して、ライバルと同等のものになった。デザインゆえか人気はいまだ衰えない。

軽ワンボックスカーの「〇」

助手席側は最高の就寝スペース
キャブオーバーという形状を活かした、広いスペースユーティリティが特徴。後席をダイブダウンさせれば、完全にフラットで床面長約2mのスペースが生まれる。ここにエアマットを敷けば、すぐに快適な就寝スペースにすることができる。ハイルーフモデルを選べば、さらに広い空間を享受できる。

軽ワンボックスカーの「△」

3年目から1年ごとの車検に
グレードによっては、後席の快適性はほぼゼロ。ちなみにエブリイはターボの設定がないため、長距離移動が多いユーザーには、やはり動力性能的に不満が出てしまうかもしれない。
(※お詫びと訂正
上記文中に「また、このカテゴリーは4ナンバー登録のため、2回目以降の車検は1年おきとなってしまうのも面倒だ」と記載しておりましたが、正しくは「2回目以降の車検は2年ごと」となりますので、当該部分を削除させていただきました。ご迷惑をおかけした皆様にお詫び申し上げます。)

※写真の内装は変更されている場合があります

文:山崎友貴 
初出:カーネル2023年1月号vol.58