【概要】コンパクトカー「スマート・フォーツークーペ」で車中泊を楽しむ達人を紹介。車中泊を可能にしたアイテムやベッド展開の方法、リアスタイルなど。

この大きさでどうやったら快眠できる!?

小型モビリティは小回りが利くので、街中でもその機動性を発揮してくれるが、車中泊に利用するには少し小さすぎるだろう。

しかし、そんなコンパクトなクルマを使って、車中泊を楽しむ趣味人がいるというのだ。

キャンプ場に現れたのは、驚くほどコンパクトなクルマ、スマートだった。その小ささゆえに、大自然のなかでは、少々、不釣り合いにも感じるほど。

リアゲートの中にはボックスが並び、きれいに整理整頓されている。そして、ルーフトップにはファルトボート。

このクルマのオーナーが車中泊の達人、堀口さんだ。

「都内の仕事の移動に使うので、コンパクトなクルマを探して、このスマートに乗るようになりました。時々、ドライブや趣味にも使っていて、最初はテントを積んで、キャンプなどもしていました」 

2004年式スマート・フォーツークーペのオーナー・堀口 昇さん。アメリカをキャンピングカーで横断するなど、アクティブに動き回っていた堀口さん。ヨットやカヌーを趣味にして、長年、アウトドアレジャーを楽しんでいる。このクルマで各地を訪れ、コンパクトな車中泊を実践中。

しかし、テントの設営や出し入れが面倒になり、新たなスタイルが誕生するきっかけとなったそうだ。

「車内の長さを測ってみると、2m近くあったので、もしかしたら寝られるのではないかと思い、車中泊に挑戦することにしました。テントがなくなれば荷物も減りますから」

一見、人が寝られそうもない室内だったが、リアゲート部分を開けておけば、スペースが確保できた。そして、助手席を倒して、有孔ボードを使う方法を思いついたのだ。

「車中泊するには平らな場所を作ることが大切です。この板1枚があるだけで、テントとは比べ物にならないくらい快適なフラットスペースを確保できるので、ぐっすりと寝られるようにもなりました」という。

フロント側に頭を向けて、リア側が足元になる。リアに向けて空間が狭くなっているので、必然的に、そのようなレイアウトになったという。

しかし、リアゲートは開けたままなのか? その謎は次に出てくるアイテムが解決してくれた。

スマートで車中泊するためのベッドメイキング

スマート・フォーツークーペの全長は約2.5m。このサイズでどうやって就寝スペースを生み出すのだろうか。

ベッドは助手席を倒して準備をする。まずは、背もたれが湾曲しているので、スポンジのスペーサーを使って高さを調整。

ベッドの面には有孔ボードを使っている。ボードは2分割されていて、普段は荷室とシートの間に入れてある。

ネジを取り付けた汎用のパイプを有孔ボードの穴を使って固定。パイプをフロント側の脚として水平を確保する。

後方側にもう一枚のボードを置き、一部を重ねて、有孔ボードの穴同士をネジで固定すればベッドレイアウトの基本は完成だ。

ベッドの仕上げとして、リア側にクリアケースを2つ並べて、その上に有孔ボードを置き、キャンプ用のマットレスを敷く。リアゲートを開けたままなら、大人1名が横になれる就寝スペースを確保した。後は季節に合わせて寝具を準備すればいい。

そして車内に全長180cmの就寝スペース生み出した! そのタネ明かしは下記を参照!

全長180cmの就寝スペースを生み出す秘密兵器!

車内のベッドスペースを確保して、次に取り出したのが、リアにセットするテントだった。

このアイテムが優れもの。スマートのリアゲートにピッタリのサイズで、跳ね上げたリアウインドウの形に合わせて、生地に膨らみを持たせるなど、細かい作り込みが目を引く。

「趣味でヨットをやっていて、マリン系の知人も多く、このテントは知り合いのセイルメーカーにお願いしました。コストは少しかかりましたが、しっかりとした生地を使っているし、サイズもピッタリ。スマート純正品のような仕上がりになり、大満足しています」

リアゲートテントのセッティング

上下に開くリアゲート部分にテントを設置する。ガラス部分にテントをかぶせて、ボディにテンションコードを固定。

ガラス部分はダンパーで跳ね上がるようになっているが、内側につっかえ棒を入れて天井が落ちてこないようにしている。テント上面はキャリア、下部はタイヤハウスからコードを伸ばす。

素材は耐光性のあるナイロン製のサンブレラを採用している。

テントはヨットの帆を作るメーカーにオーダーメイド。偶然にもスタッフがスマートに乗っていたので実現した。

強い腰のあるサンブレラ生地が美しいシルエットを作り出している。多少の雨であればしのいでくれる。リアの赤いラインはファスナーになっていて、荷物の出し入れにも使える。

シーンごとに変化するリアスタイル

このテントのおかげで、車中泊が気軽にできるようになった。テントをセッティングするので、宿泊場所はキャンプ場が多い。

食事もクルマを活用していて、リアゲートがキッチンになったり、時にはディナーテーブルとしても利用されている。

そのリアゲートにあるのが、オリジナルで作ったキッチン家具だ。

リアゲートのラゲッジスペースは奥行きが限られているので、効率よく荷物を積み込んでいる。右側に見えるのがシンクを備えたキッチン家具。左側には収納ケースを重ねた。ケースのナンバーで荷物の系統を仕分けている。

「まず最初にこのキッチンを作りました。何もないと荷室のイメージが強かったのですが、有孔ボードを立てて、シンクをおけば、特別な空間が完成しました。このエリアは私にとってもお気に入りの場所で、キャンプでも大活躍しています」

数々の旅を繰り返してきた堀口さん。旅で大切にしていることは、ゆったりとした時間を過ごすこと。小さいクルマだからといって妥協することなく、お気に入りのアイテムを選ぶのが堀口さんの車中泊スタイルだ。

夏には北海道へ旅に行く予定で、まだまだスマートとの車中泊ライフは続くという。

こだわりのキッチン家具

シンクに手動ポンプ式蛇口を装着。ペットボトルから水を吸い込み、排水はもう一本のペットボトルに流れ込む。扉を開けるとキッチンペーパーホルダーが出てきて、引き出しの中にはカトラリーと陶器のカップが並べられていた。あえてキャンプ用のアイテムを使わないのもこだわりだ。

手軽にできる車中泊クッキング

できるだけのんびりとした時間を過ごしたいので、時短レシピが多くなる。それでも見栄えや味にはこだわりたいので、市販のデリにひと手間加えるのが、いつものパターン。この日もグリルチキンにチーズをのせて完成。

野外ダイニングで仲間と語らう

堀口さんのスマートライフが充実しているのは所属しているオーナーズクラブ「スマートカラーギャングス」の存在が大きい。仲間と一緒にツーリングに出かけたり、クルマについてわからないことがあれば、クラブ員が助けてくれることもある。撮影の日も仲間が駆けつけ、湖畔でのランチタイムを楽しんだ。

コンパクトでもアクティブに楽しむ

ルーフの上に載っているのはフジタカヌーのファルトボート。若い頃、仲間と買ったカヌーを今でも大切に使っている。湖を散策しながら北海道を回ったこともあるという。

陸に上がり、カヌー横目に湖面を眺めれば、最高のリラックス時間になる。

写真・文:渡辺圭史 
出典:カーネル2022年7月号vol.55